九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

患者一人ひとりに耳を傾け「笑顔の診療」を

医療法人 音成脳神経内科・内科クリニック 音成 龍司 院長(ねしげ・りゅうじ)1980年山口大学医学部卒業。佐賀医科大学(現:佐賀大学医学部)内科、米クリーブランドクリニック(神経内科)留学、柳川リハビリテーション病院副院長などを経て、1999年から現職。久留米大学医学部臨床教授兼任。  認知症ケアに大切なのが「笑顔だ」と語る、音成脳神経内科・内科クリニックの音成龍司院長。患者一人ひとりに耳を傾ける診療を大切に、さらには、子どもたちを対象にしたイベントの実行委員長を担うなど、精力的に活動している。 ―診療の方針は。  てんかんやパーキンソン病、そして認知症を中心に、県外からも患者さんが来られます。診療は、患者さんの話をしっかり聞くことで診断のほとんどが決まります。その診断を確かなものにするために、診察や検査をするのが脳神経内科医だと思っています。  これまでの経験から、確信したのが「笑顔」の大切さです。「笑顔のパーキンソンラジオ体操」のDVDや「笑顔の認知症」といった本も出しています。  診療においても、まず医療従事者が笑顔であれば、患者さんも笑顔になってくれます。医学的な知識や技量も大切ですが、笑顔もとても大切です。  「病は気から」ではないのですが、笑うことで活性化するNK細胞には免疫力を高めるというデータがあります。NK細胞はがん細胞やインフルエンザに冒された細胞などの弱体化に効果があると言われ、うつ病の改善でも注目されています。うつ病の患者さんは認知症になりやすいこともあり、笑顔は本当に重要です。  笑顔は、ご家族など患者のケアをする方にも有効です。1日の終わりに「今日は楽しかったね」と笑顔で語りかけることで、患者さんは安心して床につき、ご家族もやさしい気持ちで1日を終われます。疲れているからこそ、ご家族にも「笑顔を大切にね」と声を掛けるようにしています。 ―街全体を巻き込んだイベントに関わっています。  2013年から「子どものための体験・まなび型イベント Dr.BUNBUN(ドクター・ブンブン)」というイベントに、実行委員長として関わっています。  このイベントは、医療関係者だけでなく警察官や消防士、職人など、さまざまな業種のドクター(マスター)の「おしごと」や「まなび」を子どもたちに体験してもらうものです。2019年で第7回目を迎え、毎回、お子さんや保護者を含めて5000人ほどの参加があります。  「子ども医学部」という公開講座が毎年人気で、当日券もありますが、事前予約になっています。  2019年度は11月10日に開催され、1時間目は「子どもと認知症のおじさんの物語」というタイトルで私が講義を担当しました。2時間目は、久留米大学医学部や聖マリア病院、JCHO久留米総合病院、新古賀病院など、さまざまな診療科の医師たちがボランティアで、授業を担当しました。  産婦人科医が妊婦さんの本物のエコー画像を子どもたちに見せたり、医師の指導で腹腔鏡手術の練習をしたり、すべて本物にこだわっています。  もともと私はパーキンソン病や認知症など大人の疾患に関わってきました。しかし、その大人を支えるのは子どもたち。そんな子どもたちが仕事体験や学びを通じて、社会に貢献する大人になってもらいたいと思います。 ―今後は。  私の診療スタイルである「笑顔の診療」を広く伝えていきたいと思います。「ドクター・ブンブン」のみならず、公民館やデイケアなどの講演においても、笑顔の大切さ、必要性を広めていきます。  最近、フランス発祥の「ユマニチュード」というケア・メソッドが注目されています。スキンシップや目線を合わせるといった「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4要素が認知症ケアに有効とされているのですが、私はここに「笑顔」をプラスしたいと思っています。  同じことをするのであれば、嫌な顔でやるより、笑顔でやるほうがいい。笑顔は誰にでもできる治療法なのです。 医療法人 音成脳神経内科・内科クリニック福岡県久留米市中央町38―17☎0942―36―6855(代表)

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急激な過疎化地域の 急性期・高度医療

高知県立幡多けんみん病院矢部 敏和 病院長(やべ・としかず)1987年愛媛大学医学部卒業。高知医科大学医学部老年病科(現:高知大学医学部老年病・循環器内科学)、英ロンドン大学セントジョージ病院留学、高知県立幡多けんみん病院副院長などを経て、2019年から現職。 故郷のために尽くす  「定年まであと8年、幡多に尽くそうと思っています。いい病院にしていきたい。幡多医療圏で急性期・高度医療を担う病院はここしかありません。使命感をもって取り組みます」  高知県四万十市出身。愛媛大学医学部から、地元である高知医科大学医学部老年病科(現:高知大学医学部老年病・循環器内科学)に入局した。  まだ高齢化が注目されていない1987年ごろ、早くから高齢化が進むと予想されていた高知県にとって必要であると感じた。  英国への留学や高知大学で講師なども経験しながら、幡多けんみん病院での勤務は、2001年から4年、そして2013年から現在までと計10年にもなる。循環器科部長、診療部長、副院長などを経て、2019年4月、病院長となった。 患者第一を実践する  矢部氏が入局した高知大学医学部老年病・循環器内科学は、地域在住老年者の活動能力維持を目的とする縦断的フィールド医学的研究「香北町研究」をはじめ、日本の医療・介護制度に影響を与えた研究が数多い。その根底にあるのは、創設当時からの「ペイシェント・ファースト(患者第一)」だという。  「私たちが行ってきたペイシェント・ファーストは、いかに自分の時間を患者さんに使えるか。手術や治療はもちろん、安全な治療のための準備や丁寧な説明、治療後の経過説明、退院後の相談など、手を抜くことはできません。働き方改革も考慮しながら、できる限り、患者さんに寄り添いたいと思います」 経営難の過疎地域「地域を一つの病院に」  幡多医療圏は3市2町1村、人口約8万人の小医療圏だ。中山間地域を含む広い域内に病院や診療所が点在している。開業医とは、勉強会などを通じて顔が見える関係づくりを進めており、交流を深めながら地域医療を支えてきた。  しかし、近年過疎化が著しく、毎年1500人規模での人口減少が続いている。高齢化率が上がり、医療ニーズも変化している。  幡多けんみん病院も経営が難しくなっている。人口減に加えて高齢者が多く、合併症を含めた治療が必要となるため、短期の入院で治療が完結できなくなっているのだ。  「それでもわれわれは救急・周産期・小児・高度医療を維持していかなくてはなりません」。解決策は「地域を一つの病院に」というコンセプトだ。急性期に特化して、回復期や療養は他の病院に任せていく。2020年4月には病床数を減らすことも決定しており、経営の健全化を図っていく。  ここで問題になるのが、人件費だ。「当院は医師が足りず、その分を時間外労働で補うので残業代がかかります。常勤医を増やせば人件費は減らせるが、そもそも県内には医師が少なく、雇うことができない厳しい状況です」  ただ、光明は見えている。「高知大学医学部が取り組んできた地域枠や奨学金制度がやっと実を結び、卒業生が出始めました。今後に期待しています」  幡多地域にはこれまで子育て世代の中堅医師が定着していなかったという。「ここは人がやさしく住みやすい。医療を実践しやすい土地であることを広めたい」と、地道な啓発活動で解決を目指している。  「はた家はみんなでひとつの大家族やけん」と矢部氏。ハードとソフトの両面で地域医療を支えていく。 高知県立幡多けんみん病院高知県宿毛市山奈町芳奈3 ―1 ☎0880―66―2222(代表)http://www.pref.kochi.lg.jp/hata/

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難治性小児白血病の最新治療「CAR―T細胞療法」を開始

京都大学大学院医学研究科 発達小児科学滝田 順子 教授(たきた・じゅんこ)1991年日本医科大学医学部卒業。国立がんセンター研究所、東京都立駒込病院、東京大学大学院医学系研究科小児科准教授などを経て、2018年から現職。  全国から難病や希少疾患の子どもたちを受け入れ続ける。2019年10月には難治性小児白血病に対する最新治療 「CAR―T細胞療法」を開始。回復を待ち望む家族に、新たな光が見えてきた。 ―「CAR―T細胞療法」について、現状と展望を。   免疫細胞療法の一つである遺伝子改変T細胞療法「CAR―T細胞療法」は患者さんの免疫細胞(T細胞)を遺伝子操作によって人工的に強化してがん細胞への攻撃力を高める、革新的な治療法。これの小児に対する治験を唯一行ったのが、京都大学病院です。  この治療に用いる「キムリア(一般名:チサゲンレクルユーセル)」が今年3月に日本で初めて承認され、5月に保険収載。京大病院は10月に治療施設の認定を受けました。  10%程度だった難治性白血病の寛解率が6割以上に向上するという、これまでとは根本的に概念が異なる大変な治療です。効く分、リスクも大きい。治療を受けたほぼ全員がICUで副作用のマネジメントを受けることになります。  副作用は大きく二つ。命の危機につながりかねないサイトカイン放出症候群と、けいれんや意識障害など神経系の障害です。これらをどう回避するか、今後の課題でしょう。  寛解はしても一部で再発する例があることも、もう一つの問題ですね。  これらの懸念を克服できる方法が開発されれば少し使いやすくなるかもしれませんが、現状では経験がカギとなる難易度の高い治療です。今後、他の大学病院などでも治療認定されると思いますが、小児に関しては私たちが中心になっていく心構えです。 ―小児がんは将来、どこまで克服できるのでしょうか。  小児がんの治癒率は全体で7割超。残り3割は、現存の治療を強化するだけではとても克服できません。「CAR―T細胞療法」のような新療法を用いることで最終的には全員救いたいですし、それは決して無理な話ではないと信じています。  一番のサクセスストーリーは小児急性リンパ性白血病でしょう。50年前の長期生存率は10%ほどでしたが、今では9割近くが治るまでになったのです。  少子化を食い止めるという意味でも小児がんの研究は重要です。希少な病気ではありますが小児の死亡原因の上位で、病死の中では1位。病気で亡くなる子の多くはがんに苦しんでいるのです。研究を発展させて、がんを克服できる治療を開発する。そして100%治すのだという気概で取り組むことが大事だと思っています。  「小児がん拠点病院」のほか2019年には「総合周産期母子医療センター」の指定も受けました。重症新生児に対する高度医療をさらに充実させていきます。  来年10月には「小児センター」を開設します。現在1フロアの小児科病棟を2フロアに拡充。基本的に難病や希少疾患、濃厚なケアが必要な方を中心に診ることに変わりはありませんが、小児がんや免疫が弱いお子さん以外に循環器系やアレルギー、感染症の子を受け入れられるようになります。  長期患者のフォローに当たるチャイルドライフスペシャリストや保育士を増やして、療育環境をさらに高めていきたいですね。  当科では造血細胞移植に限らず、肝臓移植や肺移植などの臓器移植も行っています。そんな重症の患者さんを丹念にケアできることも特長の一つですね。  何より、肝心なのは人材育成です。研究体制が充実していることは強みですし、病棟で解決したい課題があればすぐに研究室で解決できるノウハウもある。病態を解明し、それに立脚した本質的な治療法を開発できる。さらに世界の舞台で小児医療をリードできる。そんな逸材が育ってくれたら本望です。 京都大学大学院医学研究科発達小児科学京都市左京区聖護院川原町54☎075―751―3111(代表) https://www.kuhp.kyoto-u.ac.jp/~pediatrics/

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無差別平等の理念を掲げ新病院建設が進行中

公益社団法人 石川勤労者医療協会 城北病院 金沢市京町20―3 ☎076―251―6111(代表) http://jouhoku-hosp.com/  近隣住民のために診療を中断することなく、2015年から一部改修部分を含めた新病院建設を進めている城北病院。緩和ケアや大規模災害時の対応などを踏まえ、20〜30年先までを見据えた病棟の再編を行っている。2020年のグランドオープンに向けて、現在の状況と今後の運営について、大野健次院長に聞いた。 ◎病院の将来を見据え建て替えを決意 新設された緩和ケア病棟の一般病室  金沢駅のほど近く。ここに、「城北さん」と親しみを込めて呼ばれる病院がある。現在は、2020年6月の完成を目標に建て替え中だ。 「 〝住民立〟という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。この病院は、かつて付近の住民の皆さんがお金を出し合って建設したものです。その成り立ちから、私たちはこの地を離れないと決めています」 実は今、金沢市内の病院の郊外移転が相次いでいる。 「私たちはこの場所で、通常の診療を続けながら建て替え工事を同時進行することにしたのです」 病院は戦後すぐ、「すべての人に安くて親切な診療所を」という願いにより建てられ、その当初から、今も変わらぬ理念「無差別平等の医療」を掲げている。 例えば、経済的な理由により、医療費の支払いが困難という人には無料低額診療で応じる。差額室料をとらない。そして、救急車は断らない。「受け入れが難しいとされるケースも断らず、市内全体の約1割強もの救急搬送を受け入れています」 しかし時代は変わっていき、必要となる医療も変化する。これからもさまざまなケースに対応できる病院であり続けるためにも、城北病院は建て替え工事を決意した。 ◎緩和ケア病棟の新設 大規模災害にも対応  新病院は、1床当たりの面積を今よりも広く確保するため、延べ床面積は拡張されるものの、病床数は314床から300床と減少させた。 注目されるのが、新設された「緩和ケア病棟」だ。 「これまでも、末期のがん患者さんの要望には、できる限り応えてきました。その中で現場のスタッフから『緩和ケアをもっと充実させたい』という声が多く上がってきたことが、今回の緩和ケア病棟の新設につながっています」 緩和ケア病棟は、新しくなる本館西病棟最上階の5階に20床。全室トイレ付きの個室、屋上庭園、談話室や家族控え室などを備える。 西病棟の1階は、より高度な治療管理が行えるHCUとし、救急病棟を現在の5床から10床へ増床した。2階は地域包括ケア40床、3階は内科・小児科、4階は外科・消化器科・循環器科となっている。「広くなって快適」といった声が、患者からも寄せられている。 また、2008年の浅野川氾濫水害を教訓に、大規模災害時でも医療が継続できる構造にも配慮した。電気系統はすべて屋上階に設置、停電やライフラインの遮断に備え、一定期間分の医薬品、食料などの備蓄も整えている。 ◎地域住民も新病棟づくりに参加 大野健次院長  城北病院には、病院を支える住民組織、石川県健康友の会連合会金沢北ブロック、通称「友の会」がある。「城北病院友の会」として発足してから35年を迎え、現在の会員数は1万3000人を超える。  健康づくりのイベント企画、今回の病院建て替え費用への長年にわたる積み立てなど、病院の運営にも大きな役割を担ってきた。まさに〝城北病院応援団〟とも言える心強い存在だ。新病院への住民参加も意欲的で、「ステンドグラス部」「陶芸部」など部活動形式による通常の活動に加えて、現在は新病院の中庭に設置される陶板壁画「ホスピタルアート」制作も進行中だ。 「新病棟になっても変わらずに無差別平等の医療を掲げ、この病院だからこそできることを地域住民とともに、より一層追求していきます」

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長期整備計画完了 ハイブリッド手術室稼働へ

一般財団法人 津山慈風会 津山中央病院グループ 津山中央病院 岡山県津山市川崎1756 ☎0868―21―8111(代表)http://www.tch.or.jp/  救命救急センターとしての役割だけでなく、地域周産期母子医療センター、へき地医療拠点病院、地域がん診療連携拠点病院などいくつもの重責を担っている津山中央病院。1999年の移転以降、順次機能を強化。一連の整備計画が完了した今、次の展望は。 県北唯一の3次救急、高度急性期を担う総合病院として ハイブリッド手術室  2004年の健診センター開設を皮切りに、医療研修センター、健康増進施設、がん陽子線治療センター、エネルギー棟を次々と建設。2016年には新病棟建設に着手し、昨春から順次使用を開始。2019年8月には新病棟である「 N棟」が完成した。 「N棟には広い手術室を4室新設しました。そのうち、手術支援ロボット『ダビンチ』を備えた部屋が1室。従来の手術室と合わせると全部で11室になりました。2019年3月には泌尿器科による手術が始まっています」 さらに目玉となるのがハイブリッド手術室。TAVIと呼ばれる経カテーテル的大動脈弁置換術の院内施術を目指して新設された。岡山県内では、現在数カ所で治療を受けられる最新の治療法だ。 「2020年春の導入を目指しています。10メートル四方の広い部屋で、血管造影しながら施術するTAVIが可能な環境が整いました。ステント内挿術や整形外科疾患の手術にも応用できると考えています。これで高齢の患者さんに、わざわざ県南まで行ってもらう必要がなくなります。ハイブリッド手術室の稼働は、心臓血管外科や脳神経外科の悲願でもあります」 さらに、無菌室も増室した。主に整形外科で利用予定だという。 「人工関節手術の患者さん用の部屋です。人工関節治療に積極的に取り組んでいる医師がいるので、術数も増えています。将来的には人工関節センターの設立も視野に入れています」 1999年に現在地に移転してから、20年かけて、機能強化を進めてきた。一連の整備計画が完了した今もさらに先を見据え、歩み続けている。 「緩和ケア病棟の始動、新生児集中治療室(NICU)の改修など、まだまだすべきことがあります。いずれも県北では不足している設備です」 新病棟3階には、個室14床、家族用キッチンや待機場所などを整備した緩和ケア病棟もある。しかし、看護師不足から現在は稼働させていないという。 陽子線センター照射室  「今の人員で無理にオープンさせても、スタッフに負担がかかるだけだという判断から、現在はストップしています。なるべく早く稼働させられたら」 救命救急センターの指定を受けてから20年。美作市や鏡野町、久米南町などの津山市近郊はもとより、兵庫県佐用町など西播磨地域からも患者が救急搬送される。「県北唯一の3次救急、高度急性期を担う病院として役割を果たしていきたいと思っています」 医療・教育環境整備で人材の採用、育成と定着を目指す ダビンチ  「県北で高度急性期医療を担い続けるためには、人材の充足が何より必要」と話す林病院長。「陽子線治療装置やダビンチの導入など最新の医療機器を導入し、環境を整えてきたのは、患者さんのためでもありますが、スタッフが働きたいと思える医療環境、職場環境を整えるためとも言うことができます。地域を支え、患者さんを守るためには、スタッフの充実は不可欠。重症患者と救急患者であふれる当院の環境に疲弊しないためにも、人員の充足は最優先課題なのです」 2018年、働き方改革にも着手。当直体制や給与体系を見直し、個人に負担が集中しすぎない環境を構築しつつある。 林 同輔 病院長  さらに、2019年9月には川崎医科大学などを運営する「川崎学園」と、人材育成や研究の分野で連携する協定を締結。双方の施設など医療資源を有効に活用しながら、人材の育成と定着につなげたい考えだ。 「無理なく、しかし、やりがいを持って医療に従事できる環境の実現に、真正面から向き合い、取り組んでいきます」

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重点7項目を掲げ診療報酬への意識を改革

彦根市立病院金子 隆昭 病院長(かねこ・たかあき)1985年京都大学医学部卒業。同神経外科、小倉記念病院、兵庫県立塚口病院(現:兵庫県立尼崎総合医療センター)などを経て、1996年彦根市立病院入職、2012年から現職。2016年から彦根市病院事業管理者兼任。  地方公営企業法の全部適用となったのは2016年。基盤である診療報酬の加算に対するアプローチにおいて明確な目標を掲げたことが功を奏し、経営改善は加速しつつある。地域連携センターを軸に、地域完結型医療も目指す。 ―2018年、地域医療支援病院に。また地域包括ケア病棟開設から1年。  とにかく力を入れているのが地域連携。地域医療連携室、入退院支援室、患者家族支援室、在宅医療支援室、それに訪問看護ステーションの5部門をまとめた地域連携センターを中心に、病病連携・病診連携を強力に推し進めています。  毎週火曜日には周辺病院の担当者とカンファレンスを実施。急性期を終える患者さん一人ひとりについて、どこで受け入れるか協議します。診療所の先生方との連絡も密に取る。これで患者さんの流れがスムーズとなり、在院日数は2日ほど短縮されて約11日になりました。  それでも当院の入院患者の割合は回復期や慢性期が半数を占めていた。そこで2018年10月、41床の地域包括ケア病棟を開設しました。注意したのは、まずは周辺病院への転院を最優先にすること。そして地域包括ケア病棟では3週間を目安になるべく早く在宅、施設に戻れるようケアすること。これで急性期入院の割合は向上しました。  地域包括ケア病棟は、ほぼ満床が続いています。内訳はポストアキュートが8割超。3~4割をサブアキュートにするのが目標です。周辺病院との協力で実現したいと思います。 ―経営改善の切り札は。  まずは診療報酬にかかっています。以前はそのあたりの認識が甘く、加算漏れが多々ありました。  そこで、今年4月に重点7項目を設定。①救急医療管理②入退院支援③疾患別リハビリテーション④特別食⑤退院時情報添付⑥薬剤管理指導⑦特定薬剤管理指導です。  それぞれにチームを作り、リーダーを任命。勉強会で認識を深めています。結果、医師だけでなく他の専門職にも考えが浸透し、指導件数はかなり増加。退院時リハ指導などベンチマークが低かった項目も改善してきています。  加算が付くはずなのに取れていないということは、標準的な医療ができていない、という見方もできる。しっかり医療を行い、その対価を得る。ドクターがそんな経営意識を持つことは重要です。7項目が定着すれば、来年度に新たな項目を追加して広げる予定です。  加えて、これまで以上のコスト削減にも注力します。見直しは今月から。連携法人との共同購入も考えたいですね。 ―新たなトピックスや、目指したい方向性など。  専門医が育ちましたので腫瘍内科を設けました。2020年4月から対外的に標榜し、固形がんに対する薬物療法を積極的に行う予定です。  5人のスタッフを擁し、充実しているのが歯科口腔外科。不採算部門と考えられがちですが、診療報酬を見ると周術期だけでなく口腔ケアも良くなってきている。ケアで肺炎や脳卒中が減るとも言われており、摂食、嚥下(えんげ)も含めて医科・歯科連携を強めていきたいですね。歯科医院のみならず、当院の在宅部門も関与して進めたい。  あとは総合診療医ですね。当院は病院総合医のプログラムが認められており、ドクターの育成と確保も重点課題の一つ。臓器別、専門分野思考がまだ主流を占める中、総合診療に興味を持つ先生を積極的にバックアップしたい。  ここは湖東医療圏唯一の公立病院ですし、不採算部門でも持続させる責務がある。公立・公的病院が今後の方針について再検証を迫られるなど、厳しい時代を迎えています。「全員参加の経営」で乗り越えていきたいと考えています。 彦根市立病院滋賀県彦根市八坂町1882☎0749─22─6050(代表)http://www.municipal-hp.hikone.shiga.jp/

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ドクターカーを導入し地域医療の未来に貢献する

南砺市民病院清水 幸裕 院長(しみず・ゆきひろ)1982年富山医科薬科大学医学部(現:富山大学医学部)卒業。米ピッツバーグ大学がん研究所研究員、京都桂病院消化器センター・消化器内科部長、南砺市民病院副院長兼内科部長などを経て、2014年から現職。  地域医療を担う病院として、急性期から回復期、在宅まで一貫した医療提供を行っている「南砺市民病院」。さらなる地域医療への貢献を果たすため、2020年4月までに県内初となるドクターカー専用車両の導入を調整中だ。現在の取り組み、今後の方針などを清水幸裕院長に聞いた。 ―病院での取り組みと、特徴を教えてください。  〝確かで温かい医療〟を目標に掲げる当院で、現在取り組んでいるのが「臨床倫理」です。  アメリカではすでに確立されている分野で、日本でも医学教育のコアカリキュラムに最近指定されました。医療の現場では、さまざまな方針決定の場面があります。例えば延命治療はどうするのか、治療方針と異なる希望が患者や家族から挙がった場合どう対処するか、その決定には難しいものがあります。  その決定は、これまで医師の経験値に頼るところが大きかったのですが、当院ではエビデンスを含め、考え方の道筋を理解した上で決定することが重要と考えました。法律の専門家、倫理哲学の専門家に外部委員を依頼し、〝患者の意向を最大限に尊重した医療のケア〟に、職員全員で取り組んでいます。  また、総合診療医が多く在籍していることも特徴の一つです。各診療科との垣根もなく、専門医と連携をしやすいよう、病院の仕組み自体を工夫しています。 ―ドクターカーの導入を予定されています。  関係機関と調整を図っている段階です。2020年4月までに消防無線、エコー、血液分析装置、輸液緊急セットなどを装備した四輪駆動車を予定しています。導入を決意した理由は大きくは二つあります。  一つ目は救急を充実させることでの地域医療への貢献です。救急の場合、医師との接触が1秒でも早ければ生存率が高くなる可能性があります。消防指令センターからの依頼を受け、救急車と同時に当院の総合診療医が直接現場に出向くことができれば、その場での有効な救命医療が可能になるのです。もし当院で受け入れ困難な患者の場合には、近隣病院へ依頼するといった、速い判断と処置ができるようになります。  二つ目の理由は「看取(みと)り」への対応です。在宅での看取りを希望される患者さんやご家族は多いのですが、自宅でいざ緊急事態が起きると、結局救急車を呼ばれることが少なくありません。  パニックに陥っている状況の中で、一般の方に冷静な判断は難しく、このような時こそドクターカーが赴くことで「臨床倫理」に基づいた適切な判断が行えると考えています。  3次救急のドクターヘリは富山県にありますが、地域密着型のドクターカーの運用は初めての試みです。導入に当たっては、院内の医師の調整、消防指令センターや救急隊、警察との連携、ドクターヘリとの兼ね合いなど、各機関との調整が大切なところです。 ―今後は。  ドクターカーをはじめ、「必要だ」と判断したことは、たとえ前例が無くても、利益が厳しくても実現していこうと考えています。  今後の地域医療を考えると、病院機能の再編なども必要になる可能性が高いと感じています。20~30年後を見据えて、5年後から病棟の一部建て替えも予定しています。職員の意見も大いに取り入れたいと、現在意見をヒアリング中です。  私自身がチャレンジングな研究を続けてきた経験から、職員にも志を高く、前向きに働ける環境をつくることができたらと思います。医療の質を保っていくためには、医師はもちろんですが看護師や技師を含め職員全員のレベルアップが必要不可欠です。  患者さんを第一に、職員も大切に。そして新しいことにもチャレンジする病院であり続けたいと思います。 南砺市民病院富山県南砺市井波938☎0763―82―1475(代表)http://shiminhp.city.nanto.toyama.jp/

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診断、治療、社会復帰へ脳専門病院の挑戦

医療法人雄心会 青森新都市病院 片山 容一 総長・院長(かたやま・よういち)1974年日本大学医学部卒業。米バージニア医科大学脳神経外科、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校脳神経外科、日本大学脳神経外科主任教授・副総長などを経て、2017年から現職。青森大学脳と健康科学研究センター長兼任。  2017年5月に脳神経外科の専門病院として開設された「青森新都市病院」。脳神経外科疾患を中心に、診断から治療、社会復帰までの総合的な医療の提供を目指す。 ―脳神経外科専門病院として開設2年半。狙いは。  当院の母体となる医療法人雄心会は、北海道函館市の函館新都市病院を中心に、病院や介護施設などを運営しています。函館新都市病院は、主に函館地域を対象にした脳神経外科の専門病院で、今年32周年を迎えます。  法人の伊藤丈雄理事長は脳神経外科分野で多くの経験を積まれた医師です。長年にわたって診断から治療、社会復帰までを見据えた質の高い医療や介護の提供に注力。それが法人の理念でもあります。こうして函館で積み重ねたノウハウを青森市で生かそうと新たな病院づくりに取り組むことにしました。  全国的な傾向を見ると都市部では循環器や脳神経といったさまざまな専門性のある病院が多数展開されています。一方、青森市でそのような需要があるのか未知数でした。しかし、開設から2年半で、年間約1200台の救急車を受け入れるまでになりました。  この地域にも高度で専門的な医療を提供する病院の必要性があったのだと思います。期待に応えるためにも、当院はより高度で専門性の高い医療を提供する責任があると考えます。 ―病院の特徴、強みなど。  病院は東北新幹線の「新青森」駅に隣接しています。専門病院であれば広いエリアをカバーしなければならないと考えて、アクセスを重視しました。  診療面での大きな特徴は脳神経外科において、あらゆる分野に対応すること。脳神経外科の専門医5人を中心に、脳卒中、脳外傷、脳腫瘍、脳機能の調整まで多様な専門家をそろえています。  脳卒中や脳外傷など一刻を争う疾患に対しても、365日、24時間手術が可能。脳腫瘍に対する放射線治療、脳動脈瘤(りゅう)に対する血管内治療など、さまざまな手術の実積があります。  質の高い検査や治療を提供したいと医療機器も充実しています。高精度放射線治療システム、3・0テスラのMRI、血管造影装置など、最新の医療機器を取りそろえています。  加えて、リハビリにも力を入れています。最近では急性期のリハビリの重要性が高まっています。患者さんの社会復帰までを支えるために早期にリハビリを開始し、寝たきりにしないことを重視しています。  患者や家族の状況に即した居宅での療養を支えるため、開院当初から訪問看護の機能を有していることも特徴の一つです。在宅の患者さんをサポートすることも、大事な役割だと考えています。  さらに、歯科口腔外科も設けています。咀嚼(そしゃく)が脳機能にさまざまな影響を与えることが、多くの研究で明らかにされています。患者さんのQOLを支える意味でも大切な診療科だと思います。  また、乳腺外科や形成外科による乳がん治療や、消化器の内視鏡治療にも力を入れており、診療科の幅も広がってきています。 ―病院に「青森大学脳と健康科学研究センター」が併設されています。  青森県の健康寿命は全国的にも低くなっています。そこで大学と連携しながら臨床研究を進めることで、脳を守るための新たな知見を生み出せないかと考えています。脳を守ることは病気の予防や健康増進に貢献し、さらに健康寿命の延伸にもつながると思います。  10月の「日本脳神経外科学会学術総会」では、循環器疾患の予防薬を処方された患者さんの脳疾患の発症リスクを調査した研究などについて発表しました。センターの研究が、国内の新たな知見として、超高齢社会に貢献する。そんな未来を描いています。 医療法人雄心会 青森新都市病院青森市石江3―1☎017―757―8750(代表)http://aomorishintoshi-hp.yushinkai.jp/

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