九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

時代とともに変化 誇りの持てる職場を目指す

福岡赤十字病院中房 祐司 院長(なかふさ・ゆうじ)1983年九州大学医学部卒業。米ワシントン大学医学部留学、佐賀大学医学部附属病院一般・消化器外科診療教授、福岡赤十字病院副院長などを経て、2020年から現職。 就任直後に緊急事態宣言  2020年4月1日付で、福岡赤十字病院の院長を拝命致しました中房祐司です。1983年に九州大学医学部を卒業し、九州大学第一外科(現:臨床・腫瘍外科)に入局しました。 九州大学ならびに関連病院で4年間の臨床修練を行い、3年間のアメリカ留学を挟んで、15年ほど九州大学で主に移植の臨床や研究に従事。その後、佐賀大学で消化器外科および乳腺外科の診療ならびに後進の指導に当たりました。 2009年に当院へ赴任し、主に大腸がん、乳がんを担当。2012年に副院長に就任してからは、研修医教育、病診連携、DPC、医療安全などの管理・運営業務を経験してまいりました。 院長に就任してすぐに、新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言が発令。感染患者受け入れ体制拡充のための病棟改造(ゾーニング工事)や人員配置の変更に翻弄(ほんろう)される日々が続きました。 一方、治療延期や受診控えによって一般患者数は外来、入院ともに激減。病院の社会的使命と、健全経営を両立させることの難しさを痛感しているところです。 常に最新の医療を提供  当院は、1947年に現在の位置(福岡市南区)に診療所として創設されました。1952年「福岡赤十字病院」と改称し、50床の病院として発足。以来、増改築を繰り返し、2013年に現在の病院として新築オープンしました。 手術室、血管造影室、集中治療室などをワンフロアに集約。救急外来の内部設備とアクセスを整備することによって、脳・心血管など急性期疾患の対応環境を充実させました。 その後も徐々に診療内容、ならびに人的規模を拡大し、現在は511床(一般509床、感染2床)、標榜診療科36科、医師175人を擁する陣容となっております。 医療機器についても、この3年は、それぞれ320列CT、ダビンチXi、3T―MRIを導入しました。また、2016年には病院機能評価、2019年には外国人患者受入れ医療機関(JMIP)の認証を受け、2018年からはDPC特定病院群に認定されています。病院規模、診療内容、診療体制、医療機器などさまざまな面から、大学病院に準ずるレベルになってきたと考えています。 がん診療連携拠点病院指定を目指して  これからも社会や地域のニーズに合わせてさらなる内容の充実、変貌を遂げていきたいと考えています。 まず初めに、血管造影室増設によって2019年から急激に症例が増加し、当院の強みの一つとなってきた不整脈カテーテルアブレーションの診療環境整備を行います。 2018年には、低侵襲手術センターを設置してロボット支援下手術を導入。泌尿器科と消化器外科領域では、早期に保険適用を獲得しており、順調に症例数を伸ばしてきました。 2019年からは呼吸器外科や婦人科領域でも安定した治療が行えるようになったため、この領域でも積極的に手術症例増加を目指していきます。 今後ますます入院期間は短縮されると予想され、効率的で適切な入院診療を行うために入退院支援体制を整備します。また、同年の実績で要件を達成できたため、念願であったがん診療連携拠点病院指定の申請を行う予定です。 これからの私の目標は、当院をさらに発展させ、「医療レベル」「経営体質」「教育・人材育成」、すべての面で日本トップクラスの病院とすることです。当院職員が家族、友人、知人に自信を持って勧められる病院、誇りの持てる職場とすることを目指しています。皆さまのご指導をよろしくお願いいたします。 福岡赤十字病院福岡市南区大楠3-1-1  ☎️0570-03-1211(代表)https://www.fukuoka-med.jrc.or.jp/

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地域とともにさらなる発展を

産業医科大学病院田中 文啓 病院長(たなか・ふみひろ)1986年京都大学医学部卒業、同胸部疾患研究所外科教室(現:医学研究科器官外科学講座呼吸器外科)入局。米MDアンダーソンがんセンター胸部外科留学、兵庫医科大学呼吸器外科准教授、産業医科大学病院副院長などを経て、2020年から現職。同大学第2外科学教授兼任。  2020年4月から産業医科大学病院の病院長に就任いたしましたので、ごあいさつ申し上げます。 私は1986年大学卒業と同時に京都大学胸部疾患研究所外科教室に入局し、以来30年以上にわたって肺がんや胸膜中皮腫などの呼吸器悪性腫瘍に対する手術を中心とした呼吸器外科学の診療・教育・研究に携わってきました。 2010年12月に縁あって産業医科大学第2外科学教授(産業医科大学病院呼吸器・胸部外科診療科長兼任)に就任し、恩師の教えである「自分や自分の家族が病気になったときに受けたい医療」の実現と後進への継承を目指して臨床・医学教育・医学研究を行ってきました。 また、産業医科大学病院の理念「①患者第一の医療を行います② 科学的根拠に基づく安全かつ質の高い医療を提供します③人間愛に徹した優れた産業医と医療人を育てます」を実現すべく全力を傾け、院内各部門や地域医療機関と連携して、教室員とともに地域医療の発展に努めてきました。今後はこれまでの経験を生かして、「自分や自分の家族が病気になったときにかかりたい」病院を目指して努力する所存です。 産業医科大学病院は1979年7月に診療を開始し、現在では北九州地区唯一の大学病院および特定機能病院として質の高い安全な医療・教育を行っています。特にがん診療の分野では、近年は北九州医療圏で最も多くの患者さんの診察を行っています。これはひとえに、開設以来、産業医科大学病院発展のために尽力された法人・大学および病院職員の多大な努力と、多くの地域医療機関および関係者の方々のご支援のたまものです。 一方で、病院開設より40年以上が経過し施設の老朽化や狭隘(きょうあい)化が目立つため、3年後(2023年)の開設を目指して急性期診療棟新築の準備を進めています。新棟は急性期医療に関わる部門を強化・集約した地上5階建ての診療棟で、ハイブリッド手術室など最新鋭の設備を備えるとともに、産業医学臨床センターや両立支援室などの産業医科大学ならではの機能も備える予定です。 私は、新病院建設準備室長あるいは新病院建て替え対策室長として、新病院建設の準備に関わってきました。この経験を生かし、経営的な視点とのバランスを取りつつ新病院での円滑な診療開始に向けて努める所存です。 また、医療を取り巻く環境は、求められる医療技術や医療安全のレベルが高くなる一方で、診療報酬の実質的引き下げや少子化による患者数の減少など経営的にも厳しさを増しています。さらなる産業医科大学病院の発展のために、時には従来の枠組みにとらわれない発想に基づいた業務効率化も重要です。これまでの産業医科大学病院の長所を生かしつつ、同時に他のさまざまな医療機関の多様な考え方や施策を取り入れながら、産業医科大学病院のますますの発展のために微力ながら努力する所存です。 さて、2019年末に中国に端を発した新型コロナウイルスの感染拡大は地球規模で広がり、医療のみならず社会全体に暗い影を落としています。当院でもコロナウイルス感染症対策に追われ、通常の診療業務にも影響が出ている状況です。 しかし振り返ってみますと、当院ではさまざまな制度化改革などの難問が生じるたびに職員が一致団結して局面を乗り越えてきた実績があります。今回の難局も必ずやこれを乗り越え、逆にこれらを糧として、より安全で高水準の医療体制を構築し、安心な医療を提供していけるものと確信しています。そのためには職員や関係者をはじめ、地域の医療関係者の皆さま方のご協力がぜひとも必要ですので、よろしくご指導ご支援のほどお願いいたします。 最後に、私は病院長に就任しても、あくまでも一外科医として、これまで通り手術に携わりますので、よろしくお願い申し上げます。 産業医科大学病院福岡県北九州市医生ケ丘1-1  ☎️093-603-1611(代表)https://www.uoeh-u.ac.jp/hospital.html

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リハ科専門医を1人でも多く

三重大学大学院医学系研究科 リハビリテーション医学分野百崎 良 教授(ももさき・りょう)2004年東京慈恵会医科大学医学部卒業。同大学附属第三病院、東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻修了、帝京大学医学部リハビリテーション科准教授などを経て、2020年から現職。  2020年3月に新設されたリハビリテーション科の初代教授に就任した、若きホープ。三重県には縁もゆかりもなかったが、「リハビリテーション科専門医を自らの手で育てたい」という一心で東京を離れ、赴任した。今、新境地でスタートラインに立つ。 生活に分け入る面白さに目覚めて  生まれ育ったのは熊本県水俣市近郊。「前は海で後ろは山。その山を三つ越えて、ようやくコンビニです」と懐かしむ。父親は、町の開業医。1日も休むことのなかった父は「医者になれ」とは一切言わなかったが、結局、きょうだい6人のうち5人が医師に。「人の役に立つことを生きがいにしていた。それを見て、やっぱりいいなと」 その後、東京へ進学。患者のトータルマネジメントに関われないかと考えていた時、リハビリテーション科の実習で退院前訪問指導に加わったことが、人生を決定づけた。「患者さん宅で家族や家屋改修業者の方やケアマネジャーが、一緒に膝を突き合わせて話し合うのを見て、これは面白そうだと思いました」 公衆衛生学修士を取得した東京大学大学院ではビッグデータを用いたリサーチに没頭。ここでの手応えが後の原動力にもなった。「この領域はまだエビデンスが不十分。早期介入することの有効性を示せれば、よりリハビリを広められると活動してきました」 早く実感するには、診療報酬を変えること。関わった論文が基となり、加算が決まったときはうれしかったと話す。エビデンスを活用し、政策立案やガイドライン作成にも関わってきた。「十分なリハビリを受けられていない患者さんは全国にいます。手を差し伸べられる方法を模索し、実現していきたい」 効率的なリハビリに導く  摂食嚥下(えんげ)障害に対するリハビリでは、嚥下内視鏡検査で病態観察のみならず、どのようなリハビリや食形態が最適か、踏み込んで検討する。また、脳卒中患者への下肢装具療法や、手足の筋緊張に対するボツリヌス療法では、「訓練効率を高めるにはどんな装具がふさわしいか、手足のどこを柔らかくすればいいのか、リハビリのためにできることを考え尽くします」。医師として何ができるか、アプローチの手法を数多く持っていることが重要と語る。 急性期の場合、全身状態が悪い患者が多く、セラピストが迷う場面は多い。その際に、背中を押す役割も引き受ける。「リハ科専門医が入って線引きすることで、攻め込んだリハビリが可能になるのです」 多職種のスタッフと役割分担をしていくことも、役目の一つだ。「人が好きでないと務まらない。そう思います」 認知度を高めニーズを掘り起こす  三重県のリハビリテーション科専門医は現在19人。「とにかく数を増やすこと。今、専門医養成のプログラムを作成中です。1人でも2人でも来てほしい」。周囲の病院に就任のあいさつと同時に、協力を申し入れている最中だ。リハビリテーション部の動画配信もスタートさせた。「まずは認知度アップが課題です。リハ科専門医が地域にどう貢献できるのかを広めて、全体のニーズを掘り起こしていきたい」 がん患者のための術前リハビリ外来や週末リハビリなど、マンパワーの許す限り強化したい案はいくつもある。やるべき価値があると立証するためのエビデンスも集約中で、今後解析を進めていくと言う。 生活や福祉の視点に立ち、患者に寄り添い医療につなげていくリハ科専門医の役割はますます高まる。「専門医が1人いると、地域の医療の質は確実に向上する。そう確信しています」 三重大学大学院医学系研究科 リハビリテーション医学分野津市江戸橋2ー174 ☎️059ー232ー1111(代表)https://www.hosp.mie-u.ac.jp/section/rehabilitation/

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良き教育者であるために

京都府立医科大学大学院医学研究科 運動器機能再生外科学 整形外科高橋 謙治 教授(たかはし・けんじ)1990年京都府立医科大学医学部卒業。米カリフォルニア大学サンディエゴ校、日本医科大学整形外科・リウマチ外科臨床准教授、国際医療福祉大学医学部整形外科教授などを経て、2020年から現職。  新型コロナウイルスが猛威を振るい始めた2月に教授就任。診療や手術が思うようにならない中で、臨床に優れた医師を育てることを信念に取り組む。10年ぶりに戻ってきた母校で今後、実現したいこととは。 「白夜」に導かれ整形外科の道へ  工学部を目指し高校生活を送っていたある日、偶然手にしたのは、渡辺淳一の自伝的小説「白夜」だった。研修医がへき地で苦労しながら一人前に育つ姿に感銘を受けた。「そのとき、整形外科医になろうと決めました」と振り返る。 数年後、若狭湾沿いにあるへき地の病院に赴任する機会に巡り合った。雪深い道での交通事故や林業事故、スキーや海水浴でのアクシデント…。まだ若く、自信はない。しかし、目の前の患者を救うのは自分しかいない状況が続く。必死に手を動かし、勉強し、技術を磨いた。「とにかく真摯(しんし)に向き合うしか、方法がなかった。おかげで、臨床の自信がつきました」と懐かしむ。 大学に戻ってからは股関節外科を担い、2010年にはリウマチの最先端を学ぼうと日本医科大学へ。次に教授として赴任した国際医療福祉大学では、人工関節を探求。そして2020年、再び母校へ戻った。 広い守備範囲で高みを  1949年設立の歴史ある教室。関連病院は50以上、医局員は200人超、同門会も600人を超える大所帯を束ねる。「11の専門グループがあり、幅広い臨床に対応できることが特長です。さらに全国でアイデンティティーを示せるよう、一つひとつのレベルを上げていくのが私の役目です」 その先鋒(せんぽう)にしたいのが、自らの専門である関節外科。「中でも罹患(りかん)人口2000万人以上とされる変形性膝関節症ですね。手術だけでなく薬物療法、リハビリ、人工関節や骨切り術など最適な方法で対処します」 研究は、変形性膝関節症のMRI解析。レントゲンでは把握しきれない症状や、その後の経過を知り得る検査方法の開発に挑んでいる。成果の一つとして、半月板が内側にずれている患者は、軟骨が傷みやすくなることを突き止めた。 ずれた半月板を元に戻す縫合術はリスクもある。注目しているのはリハビリテーションだ。「有効なリハビリを開発した結果、症状も、関節軟骨が傷むのも抑えられることが分かりました。関節内注射、再生医療などと組み合わせる研究も計画中です」 実は、自身がこの変形性膝関節症を患う。5年ほど前、自転車レースのためのトレーニング中に発症。使い過ぎによるものだという。半月板が痛み、歩くのもおっくうになった。共同開発した温熱療法なども活用しながら治療中だという。 「まさか自分が開発した機器を、自分で使うとは思いもしませんでした。膝グループの先生からは手術した方がいいと勧められていますが(笑)。患者さんの気持ちは痛いほどよく分かります」 良き教育者になる  2月の就任時から、新型コロナウイルス感染症の対応に追われる日々。まず手術ができなくなり、医局員の半分が在宅勤務になった。院内感染が起きないよう最大限の取り組みを行いながらも、医師の育成については、しっかりとしたビジョンを示す。 「大学の教授はスーパードクターでも、有能な研究者でなくてもいい。ただ、良い教育者であることです」と高橋教授。今回起用されたのも、その熱意ゆえと考えている。 若手に伝えたいことは二つ。「まずは臨床の基本を身に付けること。患者さんの顔をしっかりと見て、触れて、診る。病棟を回って1日1回は必ず声を掛ける。電子カルテだと、患者さんの顔を見ないことも多い。患者さんの気持ちをすくい取らずして、相手の立場で考えることはできない」と話す。これは、患者だけにとどまらない。メディカルスタッフ、検査技師、理学療法士など、共に働くスタッフの気持ちも想像し、行動することを大切にしてほしいと、入局者に対してのあいさつで伝えたという。 さらに、自分のキャリアにおいて、何が大切かを考えることも忘れてはならない。「他者に貢献すること、責任の中で成長することを人生の目的にしてほしい。切に願います」 まずは良き医師として育てること。その中からスーパードクターと呼ばれるほど臨床で活躍する医師をはじめ、行政で活躍する、あるいは教育者として活躍するといった医師が出てくることが夢だと語る。 そんな、将来活躍できる医師を育てたいとの思いで家族を残し、単身赴任した。子どもたちには常に自己研さんする背中を見せたいと語る。 「息抜きは、家族との時間です。テレビ電話を前に一緒に食事したり、子どもの勉強を見たり。オンラインの恩恵を享受しています(笑)」 京都府立医科大学大学院医学研究科 運動器機能再生外科学 整形外科京都市上京区河原町通広小路上る梶井町465 ☎️075-251-5111(代表)http://www.f.kpu-m.ac.jp/k/orthoped/

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人と情報がつながる「世界に開かれた大学」へ

関西医科大学友田 幸一 学長(ともだ・こういち)1977年関西医科大学医学部卒業。金沢医科大学大学院医学研究科感覚機能病態学教授、関西医科大学医学部耳鼻咽喉科学(現:耳鼻咽喉科・頭頸部外科学)講座教授などを経て、2015年から現職。  大阪と京都の中間、京阪電鉄「枚方市」駅前にキャンパスを構え、2018年には看護学部、大学院を新設。英国の教育専門誌「タイムズ・ハイアー・エデュケーション(THE)」による2020年世界大学ランキングでは、国内の私立大学で4位、関西の私立大学では1位と、存在感に注目が集まっている。 ―2028年の創立100周年に向けて。  まずは、2021年4月にリハビリテーション学部の開設を目指しています。本学は先端医療だけでなく、四つあるすべての病院で介護福祉も手掛けています。「出生から介護まで」を実践する医療系複合大学として、リハビリの現場を支える高度な知識と専門的技術を持つ人材を育成します。 国際交流事業も、より活性化します。その拠点になるよう国際交流施設や留学生の居室、患者さんご家族のための宿泊設備などを備えたタワー棟を、2021年に竣工予定です。本学のシンボルとなるでしょう。 同時に、主に発展途上国からの留学生を受け入れる「国際大学院」を開校予定です。4年間の授業料は免除、生活費も支援します。学んだ知識を母国で生かすとともに、われわれも交流を続けながら社会発展に寄与できればと思います。 仮称ですが、「最先端医学研究所」の設立計画も進んでいます。本学の特色を生かした研究テーマを掲げ、ナンバーワンではなくオンリーワンを目指す。まだ準備段階ですが、2~3年で具体化したいですね。 大学の機能拡張に伴い、内部体制の改革も必要でしょう。各部署で立案管理していた企画業務についてはデータを集約し、IRやURA(研究活動の企画・マネジメント)などを強化しつつ部門を整備します。 ―「THE世界大学ランキング」での評価は。  ランキングに入ることが目的ではなく、客観的指標で浮き彫りになる大学の良い点、弱点をしっかり分析することが重要です。調査はそのためのツールと捉えています。 今回、教育面の充実や論文の被引用率などを評価いただきましたが、いかに維持継続するかが肝心。高評価が刺激になって、全体のレベルアップにつながることを期待しています。 医科大学としての専門性を生かし、今後も研究力、教育力の充実に力を注いでいくつもりです。 ―今後は。  本学は女性の医学校として開学した歴史があります。伝統的に女性医師が多く、彼女たちが長く活躍できるよう支援することは、われわれの責務です。 その一環として、2020年4月に「オール女性医師キャリアセンター」を開設しました。女性医師の働きやすい環境づくり、リカレント教育の充実など、今のライフスタイルに合った対応策を、このセンターを拠点に取り組んでいきたいと思います。 関西医科大学グループとしての大規模な構想も考えています。各地の医師会には、本学を卒業した開業医が多く所属しており、世界を舞台に活躍している方も少なくありません。この人脈を生かし、連携を深めることはできないか。そこで実現したいのが「グローバル・コア・センター構想」です。インターネットで国や地域を結び、情報を集約するシステムを構築したいと考えています。 現在進行中の人的交流、経済社会活動、医工連携や海外との研究開発などのデータもすべて集めます。「このような情報・人を探している」「こんなプロジェクトを立ち上げたい」といったニーズに、スピーディーに応えるシステムです。 時間はかかっても、私が担うべき案件として少しずつ充実させていくつもりです。グローバルリーダーになれる医療人を育てるため、今後も名実ともに「世界に開かれた大学」を目指していきます。 関西医科大学大阪府枚方市新町2―5―1☎072―804―0101(代表)http://www.kmu.ac.jp/

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和歌山の小児医療を守り川崎病の新治療を開発

和歌山県立医科大学 小児科学教室鈴木 啓之 教授(すずき・ひろゆき)1981年和歌山県立医科大学医学部卒業。紀南綜合病院(現:紀南病院)、米テキサス大学ガルベストン校、和歌山県立医科大学小児科学教室准教授などを経て、2015年から現職。  小児の後天性心臓病の原因となる川崎病。その臨床・研究に長年携わってきた鈴木啓之教授と研究チームは、2019年に新治療法を発表。地域医療にも尽力する鈴木教授に聞いた。 ―川崎病の新治療法とは。  川崎病は、年間1万5000人以上が罹患(りかん)する原因不明の病気です。全身の血管に炎症が起き、重症化すると血管壁に瘤(こぶ)ができて冠動脈障害を合併する。川崎病患者の約2・6%に、後遺症として残ります。 この冠動脈病変リスクを低減しようと開発したのが、通常の免疫グロブリン大量療法をシクロスポリンで強化する新治療法です。シクロスポリンはネフローゼ症候群などに有効な免疫抑制剤で、これを5日間少量内服すれば、冠動脈病変リスクを0・46倍に抑制できます。 今の治療に追加して少量飲むだけなので、患者さんの負担が少なく、薬代が安いなどメリットも大きい。2月に保険収載となり、ファーストラインで使えるようになりました。 ―小児科では珍しい、医師主導治験を経たそうですね。  15年ほど前、強い関節症状のある川崎病の患者さんに、若年性特発性関節炎に有効と言われていたシクロスポリンを投与。効果があったことに着想を得たのが始まりです。後に千葉大学が発表したゲノム研究の結果と符合する点があったことで、共同研究が始まりました。川崎病の発症や重症化に遺伝的素因が関わっていることから、シクロスポリンがその発症メカニズムを抑えると考えたのです。 2008年に先行研究を開始。2014年から、北海道から沖縄まで、全国22カ所の施設と連携し、2年5カ月かけて臨床試験を実施しました。 この治療法は、結果的に非常に有効ですが、川崎病にはさまざまなタイプがあり、万能とは言えません。ステロイドやインフリキシマブなど評価されつつある他の製剤とどう組み合わせるか、冠動脈病変リスクゼロを目指して取り組んでいきます。 ―和歌山県の現状は。  和歌山県の人口の半分弱を抱える紀北地域に医療施設が集中しています。面積が一番広い紀南地域にある中核病院は田辺市、串本町、新宮市に計3カ所のみ。この南北格差が問題です。 少しでも解消しようと、三重県との県境に近い新宮市立医療センターの小児科医を2人から3人に増員。くしもと町立病院では、病院事業管理者になられた元・近畿大学小児科教授の竹村司先生と協力して日曜外来を実施。田辺市の紀南病院では紀南地域の中核病院として重症患者を引き受け、不可能な場合は大学へ搬送する体制を取っています。 大学では、循環器、腎臓、神経、小児がん・血液、未熟児・新生児の5グループで、県の小児科医療をカバーしています。血液悪性腫瘍では造血幹細胞移植に取り組み、腎臓分野ではネフローゼ症候群やIgA腎症治療を実施し、循環器グループは、心臓外科・麻酔科・ICUとチーム医療で取り組み、先天性心疾患の外科治療に成果を上げています。 和歌山県の総合周産期母子医療センターとして、24時間365日稼働。ドクターヘリは15分以内に出発する体制が整っています。 小児科医は、内科でいう総合診療科医。専門性が高いだけでなく、地域では広い分野を見られる医師が求められています。人材育成でも重要視している点です。 顕著な例が、発達障害。対象の多さを考えると、すべての小児科医が関わる必要があり、小児科専門医の資格を取得する過程で、必ず経験を積んで対応できるようになるべきと考えて若手医師を教育しています。不登校や摂食障害、虐待など社会科学的な疾患が増加している今、しっかりと家族の相談に対応できる医師を目指してほしい。そのためにも地域との連携を進めていきます。 和歌山県立医科大学 小児科学教室和歌山市紀三井寺811―1☎073―447―2300(代表)http://www.wakayama-med.ac.jp/med/shonika/

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困っている人がそこにいるから

医療法人紘友会 福山友愛病院末丸 秀二 理事長・院長(すえまる・しゅうじ)1994年金沢医科大学医学部卒業、2000年岡山大学大学院医学研究科博士課程修了。岡山大学医学部附属病院精神科・神経科、三豊市立永康病院心療内科医長などを経て、2018年から現職。  広島県南東部に位置し、県内第2の人口を擁する福山市。市内で唯一の精神科救急医療施設である医療法人紘友会福山友愛病院に末丸秀二理事長・院長が院長として着任してから3年余りが経過した。 ―取り組んできたこと、感じている病院の特徴を。  当院はもともと精神科の病院ですが、私が赴任して、まず取り組んだのが、心療内科の開設でした。 提供する医療の内容を変えることが狙いではありません。精神科を受診することに対して、「ハードルが高い」と感じる患者さんやご家族を、医療機関につなぎやすくしたいと考えたのです。前任の三豊市立永康病院で心療内科医長をしていた経験もあったことから、開設を決めました。 その後、心療内科があったから気軽に受診できたという声や、診断書を「心療内科」から出してほしいという要望をいただくなど、一定の効果を実感しています。 病院の特徴の一つは「救急」。経営上の生命線でもあります。当院は、1987年、200床で開院し、現在347床。20年以上にわたり、広島県東部地区の精神科救急医療施設、応急入院指定病院、医療観察法指定通院医療機関の役割を担ってきました。 今は、三原市にある小泉病院、三原病院と、福山市にある当院の3病院で救急当番を1カ月交代で担当しており、年に4回、当番が回ってきます。それ以外の時期であっても、24時間365日応需の看板を掲げており、病床稼働率は、常時90%超えています。 複数の精神科疾患を合併していたり、認知症の周辺症状が出ていたりと、精神科の患者さんはこの地域でも増えている印象です。対応するだけの十分な医師の確保がなかなか難しい中、ほぼ無休での救急対応を可能にしているのが、経験豊富なスタッフたちの存在。着任当初、重症の患者さんであっても、適切に対処する看護師らスタッフの姿に、驚き、感心したのを今でも覚えています。 ―デイケア、付帯施設もお持ちですね。  外来の患者さんを対象に、1999年に小規模デイケアを開始。多くの要望をいただき、その後、大規模へと移行しました。2003年には精神科デイ・ナイトケアも始めています。 付帯施設としては、2005年に、社会復帰を目的とした精神保健センター「友愛」を開設。4階建てのセンター内に、精神障害者宿泊型自立訓練施設、精神障害者グループホーム、精神障害者福祉ホーム、居宅介護支援事業所、地域生活交流センターなどが入っています。 国の方針で、患者さんの地域移行が進みました。難治の統合失調症の患者さんや発達遅滞を遠因とした依存症やパーソナリティー障害の患者さんは、特に継続的に診ていく必要があります。入院医療だけでなく退院した方を支える医療にも引き続き注力していく必要があると感じています。 ―今後については。  私自身が、やりがいを感じるのは、やはり「地域の方々に必要とされている」と感じる瞬間。病院としても、地域密着で市民の皆さん、近隣の地域の皆さんが、頼って、利用してくださる病院であり続けたいと思っています。 そのために力を入れているのが、組織づくり。少し乱暴な言い方をすると、この病院を、「私がいなくても大丈夫」だと胸を張って言える組織にしていきたいと考えてきました。 私は、トップダウンのタイプではありません。周りを信頼して、教えてもらって、患者さんをよくみている現場の管理者の意見を聞いて、病院を運営していく。今後も大事にしていきたいと思います。 そして、創設以来の病院の方針である「困っている人がそこにいるから。なんどきも断らないトータル的な医療の提供」を引き続き目指していくつもりです。 医療法人紘友会 福山友愛病院広島県福山市水呑町7302―2☎084―956―2288http://yuai-hospital.or.jp/

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ネットで対応策を共有 地域の認知症をサポート

高知大学医学部 神経精神科学教室數井 裕光 教授(かずい・ひろあき)1989年鳥取大学医学部卒業。兵庫県立高齢者脳機能研究センター(現:兵庫県立姫路循環器病センター)、大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室講師などを経て、2018年から現職。大阪大学大学院医学系研究科精神医学分野招聘教授兼任。  認知症のさまざまな症状のケアに悩む人たちが、お互いの情報を共有するコミュニティーサイト「認知症ちえのわnet」。その研究代表者である高知大学医学部神経精神科学教室の數井裕光教授に、開発に至る経緯やその活用法、そして高知県における認知症診療の現状について聞いた。 ─「認知症ちえのわnet」を開設した理由は。  認知症の症状には、物忘れなど認知機能の低下と、怒りっぽい、幻覚・妄想など周囲の人との関わりの中で起きる行動・心理症状 (BPSD)とがあります。 ケアをする際に対応が難しいのがBPSDです。さまざまな対応法についてこれまで紹介されていますが、その有効性について検証されませんでした。 そこで、実際に認知症の人をケアする家族や介護・医療従事者に、どのような症状に対して、どのように対応し、うまくいったか否かを投稿していただくウェブサイト「認知症ちえのわnet」を開設しました。 投稿いただいた情報を分析し、成功率を計算しています。成功率は、サイト内で共有。ケアする人は、それを目安に、最適な対応法を探すことができます。また、質問にイエス・ノーで答えていけば、対応法が提案される「認知症対応方法発見チャート」も提供しています。 このようにトライ&エラーを繰り返しながら効果的な対応法を見つける方法は、発達障害の分野にも応用できると思います。将来的には、「発達障害ちえのわnet」も開設したいと考えています。 ─高知県における認知症診療の連携は。  県内に四つある「地域型認知症疾患医療センター」の機能強化を目的に、「基幹型認知症疾患医療センター」である当院が連絡会や研修会を開催して、最新の情報を提供しています。 診療にとって大切なのは、やはり顔が見える連携です。高知県は広く、すべての地域に認知症の専門医がいるわけではありませんので、かかりつけ医に対応いただく地域が多くあります。また、ご家族の方がどのようにケアすれば良いか悩んでも相談できる場所が少ない地域もあります。 認知症には、大人の水頭症のように〝治る〟認知症もあり、アルツハイマー病やレビー小体型認知症であっても、早く診断して、早く治療を始めることができたら、長く良好な状態を長く保つことができます。BPSDに関しても、ご家族がそのことを認識されるだけで、ケアの方法も変わってきます。 専門医が少ない地域の医師会からお呼びいただいて、認知症の診断・診療について、「認知症ちえのわnet」の話をさせていただく機会も増えています。また、豊富な知識や経験を持つ介護福祉士やホームヘルパーの方とも講習会や学習会を行い、「認知症ちえのわnet」を通じての意見交換なども呼び掛けています。 かかりつけ医をはじめ多くの方に、認知症についてもっと理解を深めていただき、早く専門医につなげていただけるような仕組みができるよう努めていきたいですね。 ―「認知症ちえのわnet」の展望は。  あるテレビ番組でこのウェブサイトが紹介されたことで、一気に1000人ほど登録者数が増えたことがありました。「まずは知っていただく」ということの大切さを実感しました。これを機に高知県だけでなく、全国からの登録者も増え、ケア体験の投稿は現在約2690件、まずは5000件を目指しています。 現在、新型コロナウイルス感染症の影響で、介護施設に通えずに、在宅でのケアで悩んでいるご家族も多いと思います。「認知症ちえのわnet」も活用して、例えば、どのような気分転換をさせたらよいのか、といった情報を広く伝えていけたらと思います。 高知大学医学部 神経精神科学教室高知県南国市岡豊町小蓮185─1☎088─866─5811(代表)http://www.kochi-ms.ac.jp/~fm_nrpsy/

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