九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

病院・地域で協働し信頼と共感の医療を追求

医療法人秀和会 秀和総合病院 五関 謹秀 院長(ごせき・なりひで)1973年東京医科歯科大学医学部卒業。同附属病院第一外科入局。東京都立駒込病院、東京医科歯科大学医学部附属病院などを経て、2004年から現職。東京医科歯科大学臨床教授兼任。  地域医療と救急医療を両翼にする秀和総合病院。高度な先進医療の提供、搬送困難な患者の受け入れ、地域医療連携室の設置などを通し「信頼できる安心医療」を推進している。外科医として第一線に立ち続ける五関謹秀院長は、広い視野で医療界の未来を見据えている。 ―近年の医療課題は。  超高齢社会を迎え、春日部市でも高齢者が増えています。患者さんに説明を十分に理解してもらえない、高齢夫婦世帯で患者さんが家族のサポートを受けられない…など、医療を提供する手前で困難が生じるケースによく出合います。  また、当院では搬送先が決まらない患者を受け入れていますが、生活保護を必要とする高齢者の場合には行政との連携が必要になるなど、高齢化から広がる問題への対応の難しさを痛感しています。  一方で、在院日数を短縮し、在宅や施設へという流れが起きています。「受け入れ側の準備は十分か」と問えば、整っているとは言えません。他業界からの参入も増えており、発展途上の施設は少なくありません  例えば、誤嚥(ごえん)性肺炎で入院していた患者さんを家に帰しても、同じような生活をすれば、再入院になってしまいます。当院では、対応できる施設に患者さんを移せなければ前進はないと考え、NSTカンファレンスに意欲ある施設のスタッフを呼び、一緒に勉強をしています。食べることの重要性、効果的・効率的な医療の提供の正しい理解を広めたい思いもあります。待っていても状況は改善しません。自分たちでできることは積極的に取り組みます。 ―埼玉県は全国でも医師・看護師不足が深刻です。  東京医科歯科大学と連携しており、200数床で50人超の常勤医師がいます。医師不足が慢性化する中、これだけ充足できているのはわれわれの強みです。  今、求められているのは、日本もグローバリゼーションが進み、日本に根付いた価値観を持つ人、欧米の個人主義を受け入れる人が混在する中で、医師と患者の関係性にも変化が生まれていると感じています。  昔は「共感の医療」つまり、病気治療に立ち向かう医師の情熱に感動し、病魔克服に立ち向かう患者さんの闘魂に感動する医療があり、医師と患者が信頼し合って結果を出しました。しかし今は、信頼関係が揺らいでいます。若い医師は防衛に走らざるを得なくなっているのです。  信頼される医師を育てるため、教育の重要性が増していると考えます。大学では専門性の細分化が進んでいるため、一般的な開腹手術ができる医師が減っている現実があります。これではいざというとき対応できません。医師は専門性を追求すると同時にすべてのことを身に付けるべきです。当院でははじめの5年間はあらゆる経験をさせます。  また、私は外科医であるため、術中に自分に何かあっても患者を守れるように、自分に代わる医師を育てなければいけません。そこで長年、積極的に執刀の位置に若手を立たせ、私は前立ちの位置で手術をしています。みんな懸命に患者に対峙しているので上達が早く、結果、あらゆる手術に対応できるようになっています。 ―さらなる取り組みは。  大学病院からこの病院に移ったのは、「患者にトータルで寄り添いたい」という思いからです。  分担や効率性も大切ですが、全体を把握することを忘れがちです。トータルで見てはじめて、患者のために病院が本当にすべきことが見えてきます。  施設か在宅か、という流れであっても、最後まで患者を診るのは病院の役割です。退院後のケアやサービスをシステム化し、まず春日部エリアで定着させたい。そして、いずれは海外などで活用できるシステムとして紹介できればと願っています。 医療法人秀和会 秀和総合病院埼玉県春日部市谷原新田1200☎048―737―2121(代表)http://www.shuuwa-gh.or.jp/

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 厚労省は9月、毎年11月を「みんなで医療を考える月間」と定めた。医療者の疲弊が危ぶまれ、地域医療が厳しい状況に直面している中で求められるのは、国や自治体、医療者、市民などそれぞれが従来の枠や慣習にとらわれず思考し、行動すること。そんな呼びかけが本格化しそうだ。 医療者が働きやすい地域 実現に必要なのは  「延岡市の地域医療を守る条例」が制定されて10年が経った。当時、宮崎県立延岡病院の医師の退職が問題化するなど、延岡市の地域医療は危機的な状況にあった。軽症患者が救急外来を利用するといった「コンビニ受診」の増加が主な要因だ。 地域医療の崩壊を防ごうと市民も動いた。「宮崎県北の地域医療を守る会」を組織し、適正な受診の啓発活動をスタート。およそ15万人の署名を集めた。 2009年9月、全国の市町村では初めての「延岡市の地域医療を守る条例」を制定。市民、医療機関、行政それぞれの責務を明確に規定したことで大きな注目を集めた。市民の役割は①かかりつけ医をもつ②適正な受診(時間内の受診等)③医師等に対する信頼と感謝④検(健)診の積極的受診と日頃からの健康管理の4項目。 県立延岡病院の夜間・休日救急患者数はピーク時の9237人(2007年度)から半減(2012年度時点)。市民が医療者へ感謝の思いをつづった手紙を贈るなど、現在も地域ぐるみの「医療者が働きやすい街づくり」が続く。 国民の理解を促す五つの方策を提案  兵庫県西脇市「兵庫県西脇市の地域医療を守る条例」、香川県「地域医療を守るための宣言」、埼玉県「埼玉県医療を考えるとことん会議」などがここ10年ほどの間に生まれた。 しかし、患者の適切な医療機関、診療科の選択が広く根付いているとは言い難い。そこで厚労省は2018年10月から計5回、「上手な医療のかかり方を広める懇談会」を開催した。 資料として示された「横浜市救急相談センターへの問い合わせの結果」を見ると「6時間以内の受診」27・4%、「翌日日勤帯に受診を勧奨」16・6%、「経過観察」6・2%。 また、「日頃から決まって診療を受ける医師・医療機関を持たない理由」として「適切な医療機関をどう探してよいのか分からないから」「適当な医療機関を選ぶための情報が不足しているから」との回答が目立った(2017年9月「医療・医療保険制度に関する国民意識調査報告書」)。 会は医師の長時間労働を是正し、患者が安心して医療機関を受診できる環境をつくるためには、「医療の上手なかかり方をみんなで考え広める必要がある」と指摘。医師の人材確保や地域医療の提供体制構築なども踏まえた、中長期的な視点が必要だとした。 議論は2018年12月に「『いのちをまもり、医療をまもる』国民プロジェクト宣言!」として取りまとめられ、五つの方策の実施が提案された。①患者・家族の不安を解消する取り組みを最優先で実施すること②医療の現場が危機である現状を国民に広く共有すること③緊急時の相談電話やサイトを導入・周知・活用すること④信頼できる医療情報を見やすくまとめて提供すること⑤チーム医療を徹底し、患者・家族の相談体制を確立すること それぞれに要因があり「今できること」がある  取りまとめでは「医療危機」の要因を四つに大別。 医師・医療提供者の要因として「医師が一番という構造・意識がまん延している」「男性を中心とした働き方や慣習がはびこり限られた人材で業務を回さざるを得なくなっている」など、厳しい指摘も盛り込まれた。 これからのアクションの例として「あらゆる機会に医療のかかり方を啓発する(待合室、母子健診、小児健診、高齢者健診、学校健診、職域健診、公開講座)」「かかりつけ医として必要な能力を維持・向上し、かかりつけ医の所在・役割を市民に分かりやすく伝えるように努める」などが挙がった。 毎年11月を「みんなで医療を考える月間」と定め、各種キャンペーンなどの啓発活動を集中的に行う。医療を提供する側、受ける側のあらゆる人が「協働」の認識を深め、コミュニケーションが活発化されることが期待される。

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患者を支える家族に 医療は何ができるのか

医療法人社団明愛会 小倉南メディカルケア病院窪田 正幸 院長(くぼた・まさゆき)1979年九州大学医学部卒業。九州大学小児外科研修医、米メイヨークリニック留学、福岡市立こども病院感染症センター外科医長、九州大学小児外科助教授、新潟大学小児外科教授などを経て、2019年から現職。  福岡県第二の都市であり、急速に高齢化が進んでいる北九州市。この地で、小倉南メディカルケア病院は医療と介護をシームレスにつなぐ体制を整え、地域医療を支えている。今年4月に就任した窪田正幸院長に、これまでの歩みと病院の将来像を聞いた。 黎明期にあった小児外科と共に40年  新潟大学教授として研究・臨床・教育に携わっていた時代には、自らプロ向けのグラフィックソフトを使って独自にテキストを作成したこともあったという窪田正幸院長。「小児外科は、会員数が全国でも2200人程度で、いわばマイナーな分野。小児外科に入ってくるのは子どもが好きな人が多く、人数は少なくともやる気があるので、『一緒にやっていこう』という気持ちで指導していました」と、当時を振り返る。  1979年、九州大学医学部卒業時に、国立大学初の小児外科講座が開設され 「外科も小児もやりたかったし、新しい面白そうな分野だから」と小児外科の道へ。以来、胆道閉鎖症といった先天性疾患、小児呼吸器、小児泌尿器、悪性腫瘍など広範な領域を専門として歩み、新しい治療法の開発にも積極的に取り組んできた。  新潟大学教授を退任後、出身大学がある九州で、高齢者を中心とした医療を提供する小倉南メディカルケア病院の経営に携わることになった。 高齢者医療に加えて新たな強みを  小倉南メディカルケア病院は2013年に新棟へ移転し、移転後は北九州エリアで初の病院と介護老人保健施設の一体型施設としてスタート。グループ内には介護サービスや訪問看護ステーションを有し、低層階に療養病床90床、上層階に介護老人保健施設を併設している。  就任以来、窪田院長は病床稼働率をさらに上げるため、二つのプランを進めている。第一に、気管切開、呼吸不全といった呼吸器系の患者を受け入れること。第二に、医療的ケア児の療養入院を受け入れることだ。  「以前は呼吸器の患者さんは診ていなかったのですが、現在はNPPVに使用する機器なども導入して対応しています。また、当院は療養病床なので、高齢者だけでなく小児も受け入れ可能。ベッドや測定機器は新たに必要でしたが、スタッフは輸液管理や気管内吸引、排泄管理は大の得意です」  北九州市で医療的ケア児に対応できる施設は少ない現状があり、長期入院やレスパイト入院が可能な施設があれば患者や家族の助けになる。そんな確信から、窪田院長は北九州市立総合療育センターや北九州地域医療的ケア児支援ネットワーク連絡会などに足を運び、情報交換に努めている。小児患者の入院は4月以降、すでに数人の実績があるが、今後も保護者の信頼を得るための地道な歩みが必要だと考えている。 信念に従い地域に貢献する病院へ 「理想は、高齢者医療と小児医療のハイブリッド。高齢者の療養医療を一つの大きな柱としながら、子どもやご家族のお役にも立ちたいと考えています。さまざまな年齢層にうまく対応でき、多様な疾患を診られるような病院になれたら」  特に小児のレスパイト入院については、小児外科医としての強い思いがある。昼夜逆転した子のケアを続ける両親、在宅で3時間ごとに気管吸引をする家族など「冠婚葬祭はもちろん、少しでも休んだり、ほかの子どもと家族旅行に行くことができれば」というケースを見てきた。   「私の医師としてのポリシーは、家族団らんの手助けをすること。病気を経験したけれど、子どもを中心に笑顔で家族団らんができている。そんな姿を思い描いています」。窪田院長が牽引する将来像は、優しく力強いものになりそうだ。 医療法人社団 明愛会 小倉南メディカルケア病院福岡県北九州市小倉南区葛原東2─14─2 ☎093─473─1010(代表)https://www.jojinkai.com/kokura/

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全国から熱い注目を集める 熊本発の認知症医療モデル

熊本大学大学院 神経精神医学講座福原 竜治 講師(ふくはら・りゅうじ)1997年愛媛大学医学部卒業。愛媛大学医学部附属病院精神科神経科講師、熊本大学医学部附属病院(現:熊本大学病院)神経精神科特任講師などを経て、2016年から現職。熊本県基幹型認知症疾患医療センター副センター長兼任。  進みゆく高齢化社会で、ますます関心が高まる認知症。認知症の早期発見、診療体制の充実、人材育成などを目的に県内の専門医療機関が連携しているのが「熊本県認知症疾患医療センター」だ。その基幹型認知症疾患医療センターの副センター長として活動している福原竜治氏にセンターの概要について聞いた。 —熊本大学の神経精神医学講座の特徴は。  1904年に開講された伝統ある講座で、常に『患者さんと共に歩み、最善を求めて、探究を続ける。』を理念に、患者さん一人ひとりの症状に応じた診療を行っています。   その中でも大学病院ですから、医師を含めた専門スタッフの教育は重要な役割です。「ジェネラリスト+スペシャリスト」、いわゆる自分の専門領域を研究しながらも精神科のあらゆる場面に対応できる人材育成を目指しています。  若い医師には、救急を含めた多様な診療場面を経験する研修を実施。病気が起こる理由や原因を探求する研究者マインドを養う教育も行っています。  診療面では、精神科病床を有する総合病院という役割から、身体合併症を有する患者さんの入院治療を行ったり、大学病院という役割としては、高度医療を提供し、診断・治療が難しい疾患に対応したりしています。例えば若年発症の認知症は同じ疾患でも頻度がかなり少なく、高齢発症のタイプと比べて症状もやや異なるため、診断が難しいことがあります。そういった患者さんが他の病院やクリニックから紹介されてくるのですが、大学病院としてしっかり検査して治療方針を定めていくといったことを行なっています。 —「熊本県認知症疾患医療センター」とは。  大学病院の大きな目的の一つが地域との連携です。「熊本県認知症疾患医療センター」は、その地域連携が形になったものと言えます。  熊本大学の「熊本県基幹型認知症疾患医療センター」を含め、2009年に「認知症疾患医療センター」を県内8カ所に置いてスタートしました。現在は、県内12カ所に増え、相互に連携しながらさまざまな活動を行っています。  患者さんが30分以内でアクセスできることを目標に、県内の隅々までカバーするのは全国でも珍しく「熊本モデル」と称されています。  熊本県や熊本市といった行政が参加している点も特徴です。目的は①認知症の早期診療と鑑別診断。②認知症に伴う精神症状や行動障害の治療③認知症を持つ方の身体合併症の対応。④かかりつけ医や認知症サポート医の標準医療の普及や啓発。⑤認知症の医療や介護にかかわる専門医の育成。⑥医療・介護・福祉の地域連携システムの構築などです。  現在は年4回の事例報告会や、各種さまざまな研修会を行っています。精神科医だけでなく、精神科治療に関わるメディカルスタッフも含め、多い時には100人超が参加し、職種を超えて熱心に議論しています。若い医師やスタッフのスキルアップにつながればと思います。 —今後の目標は。  熊本県では、2025年には約5人に1人が認知症になると予想され、認知症は身近な病気になりつつあります。まずは、研修や講習会を通して認知症の患者さんだけでなく、ご家族も安心して暮らせるように、身近な支援ができる環境を整えていくことが目標です。  「熊本県基幹型認知症疾患医療センター」センター長である、当講座の竹林実教授は気分障害の専門家であり、現在、患者さんの病状が回復して仕事に復帰するまでなど、社会的な回復までを支える取り組みを開始しています。  「熊本県認知症疾患医療センター」による幅広い認知症への取り組みに加え、精神科疾患全般に手厚い医療を提供できるような組織づくりを目指しているところです。 熊本大学大学院 神経精神医学講座熊本市中央区本庄1—1—1☎096—344—2111(代表)https://www.kumamoto-neuropsy.jp/

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嚥下障害のための新たな病態評価の研究に着手

高知大学医学部 耳鼻咽喉科学教室兵頭 政光 教授(ひょうどう・まさみつ)1983年愛媛大学医学部卒業。スウェーデン・カロリンスカ研究所ストックホルム南病院留学、愛媛大学大学院医学系研究科准教授などを経て、2008年から現職。高知大学医学部附属病院副院長兼任。  食事を摂るために欠かせない嚥下(えんげ)機能。嚥下機能の低下は患者のQOLに直結する。日本嚥下医学会の理事長でもあり、これまでも嚥下内視鏡評価基準の提唱など、嚥下障害の正確な診断に尽力してきた兵頭政光教授が今、取り組んでいる新しい病態評価とは。 —嚥下障害の新たな病態評価の研究を始められました。  嚥下機能の検査は嚥下内視鏡検査(VE)や嚥下造影検査(VF)を行うのが一般的です。内視鏡検査では上からの画像、造影検査では、正面や側面からの画像を捉えることができますが、どちらも平面的なため、正確な病態把握が行いにくい場合がありました。  そこで、CGを使ってもう少し立体的に嚥下運動を捉えられないかと、始めたのが今回の研究です。患者のCT画像を基に、CGで立体的に嚥下運動を再現。嚥下機能のどこに問題があるのかを客観的に見られるようにします。このCGを使えば治療のシミュレーションを行うこともできます。例えば喉を引き上げる手術を行った場合、その後、どれくらい誤嚥が減るのかということを、実際にシミュレーションし、予測することが可能になります。  ある程度の治療の効果は予測できたものの、このように患者ごとのCGを作成できるようになったのが大きいですね。その方の嚥下器官の構造がどうなっているのか、どこに問題があって誤嚥を起こすのか、どのような治療が適切であるのか。感覚的にではなく、客観的に診ることができれば、治療・診断の精度が上がることが期待できます。  また患者さん本人やご家族の方にも、嚥下運動や治療法を視覚的に示せることが必要だと思います。これにより理解が深まり、より安心して治療に臨んでいただけるようになるのではないでしょうか。  CGの作成に時間がかかるなど、まだ課題もあります。将来的には実用化できるよう、研究を進めていきたいと思っています。 —今後の医局の方針は。  人員不足の状況は、以前からあまり変わっていません。現在、特に医師の少ない県西部や東部などに医師の派遣を行っています。しかし、一人常勤体制ということもあり、どうしても手術や緊急時などには、患者さん一人一人に向き合うということが難しい状況です。  この状況を改善すべく、医局の方針として、専門性にとらわれず、耳鼻咽喉科の全ての分野をカバーできる医師の育成、体制づくりを進めていきたいと思っています。  その他の新しい取り組みも、積極的に行っていくつもりです。CGを使った病態評価をはじめ、ITベンチャー企業と共同で、いくつかのプロジェクトを計画しています。  例えばAIを使った痙攣(けいれん)性発声障害の診断や、物を飲み込む際の嚥下音から嚥下障害の評価を行う研究など、今後はITとの連携で医療の精度を高めることができればと考えています。 —医師の働き方、女性医師の支援については。  現在、高知大学医学部附属病院副院長を兼任し、働き方改革の担当をしています。  その一つとして、女性医師の働き方をどうサポートしていくかが大きな課題です。今や若手の3分の1ほどが女性医師。いかに彼女たちが働きやすい環境をつくるか、いかに産休育休後に戻ってきてもらうかが重要だと考えています。  実際、当医局にも産休育休から復帰した医師がいます。夜間の当直を免除したり、子どもの急病時には交代できる体制をとったりという配慮を行っています。  周囲のサポートをどうするのか、他の医局員に過度の負担がかからないよう配慮することも必要になります。医局のチームワークをもって、この課題に取り組んでいきたいと思います。 高知大学医学部 耳鼻咽喉科学教室高知県南国市岡豊町小蓮185−1☎088―866―5811(代表)http://www.kochi-ms.ac.jp/~fm_otrhn/

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地域に開かれた病院に。2020年秋、新病院が完成

社会福祉法人恩賜財団済生会 大阪府済生会富田林病院 大阪府富田林市向陽台1―3―36 ☎0721―29―1121(代表)http://www.tonbyo.org/  2018年、病院開設者が済生会となり、新たなスタートを切った「大阪府済生会富田林病院」。経営の立て直しを牽引してきた宮崎俊一院長は、病院の建て替えという次なるビッグプロジェクトに挑む。 ◎黒字転換が新病院建設の弾みに  2016年に院長に着任。そのミッションは「経営の立て直しと、新病院へのリニューアルでした」と振り返る宮崎院長。  富田林病院は大阪府の東南部にある南河内医療圏に位置する。周辺には近畿大学病院(大阪狭山市)をはじめ、地域の中核となる病院が点在する競争の激しい医療圏だ。しかも富田林病院は数年前に内科医の不足という問題が浮上。救急の受け入れが難しくなり、厳しい経営環境に置かれた。  市立病院で公設民営という歴史を刻んだ後、2018年に済生会に移管。運営も済生会グループが担っている。  宮崎院長は経営の立て直しを図るために、職員の協力を仰ぎながら「断らない救急」「医療の質を上げる」といったさまざまなスローガンを掲げた。医師をはじめ職員の意識改革が進むにつれ、救急の不応需率は大きく下がり、これに伴い経営は黒字に転換した。  「短期間での黒字化が富田林市議会にもインパクトを与えたのでしょう。念願だった建て替えが決定、2019年1月には無事起工式を終えることもできました」。地上6階、地下1階の新病院。開院は2020年秋ごろを目指している。 ◎新病院建設は地域の信頼をより強固にするため 地域に開かれた講堂、大規模災害にも備えた機能を持つ病院全図  現病院は1977年に建設。40数年が経ち老朽化が進む。「40年前とは、検査や診療の内容が大きく変わっています。医療機器も変化しますので、病院機能が対応できなくなる部分が出てくるのです。新病院では40年後の医療システムに対応できるようにしたいと思っています」  「地域の皆さんから信頼される病院になるというのが最も重要なことだと思います」とも強調する。信頼され続けるためには、新病院建設によって医療の質をより上げていくことが必要だ。「標準を目指すだけではなく、先端医療ができる施設を目指したい」と宮崎院長は考える。  新病院の建設で重視しているという四つのポイントがある。①患者さんや家族など、利用者に優しいこと。②救急や災害に強い施設であること。③スタッフに優しい建物であること。④維持管理がしやすいなどコスト面や運営上、病院経営に貢献すること。  「新病院で働くことが職員のモチベーションアップにつながってほしい」という思いは強く、スタッフが働きやすい動線をつくるなど、労働環境としての視点を重要視する。環境が充実した病院になることは、優秀な人材の確保にもつながると考えている。 ◎医療のみならず介護の視点も取り入れて 宮崎俊一院長  「医療だけでなく、介護の視点を取り入れた病院であることも大切なのかもしれない」と宮崎院長は考えている。  救急医療とがん医療が運営の柱ではあるものの、ニーズに応え、訪問看護ステーションなど福祉関連の施設も持つ。回復期の医療提供を考え、新病院ではリハビリのスペースを広くするようにした。  工事は1期、2期に分かれて進められ、第1期で新病院を開設。  その後、現在の病院を取り壊す作業を進め、第2期では講堂などを建設する。講堂は、院内の患者だけで使用するのではなく、地域で利用してもらうことを想定する。  「地域の方たちにも使っていただきたいですね。そのような場を通じて地域との密接な関係を築いていけたらと思います」  講堂を含む全体のグランドオープンは2021年末から2022年にかけて予定している。

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発達障害の診療強化 暮らし支える医療を

医療法人永和会 下永病院池田 篤司 理事長・院長 (いけだ・あつし)1996年久留米大学医学部卒業。広島大学医学部附属病院(現:広島大学病院)泌尿器科、国立福山病院(現:国立病院機構福山医療センター)泌尿器科などを経て、2002年下永病院入職。2014年同院長、2018年から現職。  来年で開設40年となる精神科の「下永病院」を中心に、広島県福山市で医療・介護の計8施設を展開する医療法人「永和会」。昨年理事長に就任した池田篤司氏の下、発達障害など新たな診療ニーズにもスタッフ一丸で取り組む。備後地域の医療を支える同会の今後の展望を、池田理事長・院長に聞いた。 —診療の特徴は。  発達障害の診療です。中でも16歳以上の「大人の発達障害」については、2016年から下永病院に専門外来を設け、専門性の高い医師が診断や治療に当たっています。公認心理師6人を置いて、連携してカウンセリングや診断のための検査を手掛けています。  診療ニーズはとても高いと感じます。例えば、小児科で発達の課題について診てもらっていた人が大きくなると、診療の受け皿がとても限られてしまっている現状があります。大人になって初めて、発達に起因する「生きにくさ」に直面するケースもある。  そうした人が受診できる医療機関は、この地域では多くありません。そのため、三原市や尾道市などからも受診に来られています。10代後半は思春期であり、かつ、これから社会に出るナーバスな年頃。適切なフォローが必要です。診療によって、うまく社会に出ていくサポートができればと思っています。 —高齢の患者さんに対して。  下永病院は精神科ですが、医療法人「永和会」として、さまざまな医療機関や介護施設を持っています。これらをより効果的に連携させ、患者さんの人生のステージに応じた法人内での一貫したケアを提供していきたいと考えています。  精神科の病院は、入院患者さんの体に何らかの合併症が起きた場合は、転院することが一般的です。  しかし、当院では内科治療を行っています。私はもともと泌尿器科医でしたし、副院長も内科の経験が豊富です。精神の疾患から身体の合併症まで治療が可能ですし、看取(みと)りができる態勢も整えています。患者さんの家族にも安心してもらえると思います。 —スタッフの育成について。  患者さんと「人と人」としての関わり合いを大切にする、そんなスタッフを育てたいですね。精神科は「その人が病気かどうか」を判断する基準や、最適な治療の方針がはっきりしていない面があります。患者さんの状況を幅広い視点から適切に把握する目を養ってもらいたい。私も泌尿器科と精神科という二つの科を経験したからこそ、留意できるようになったことがあります。  患者さんのバックグラウンドを含めてその人全体を知ろうと努める。そんなスタッフこそ、「人と人」としての信頼関係を築けるのではないでしょうか。  スタッフにスキルを磨いてもらうためには、スタッフのQOLを上げることが欠かせません。子育てをしながら安心して働ける職場づくりのため、企業主導型保育所を設けています。看護師を中心に業務効率化を進め、休日を増やしたり、残業を極力減らしたりといったことにも取り組んでいます。もちろん、現実の医療現場はなかなか厳しい面があり、改善の余地はまだまだあります。 —少子高齢化で、地域との連携も大切さを増します。  地域に密着した医療は、永和会のモットーでもあります。地元の民生委員の方と定期的に情報交換する協議会を、10年ほど続けています。地域の住人や家族が困っている情報を吸い上げ、対応することで、ご本人や周りの方のサポートにつながります。認知症や精神の健康などをテーマにした懇話会も定期的に開き、幅広い人が集まっています。  これからも「治療」だけでなく、地域の住民の「暮らし」にトータルで貢献していきたいと思います。 医療法人永和会 下永病院広島県福山市金江町藁江590―1☎084―935―8811(代表)http://www.eiwa-kai.or.jp/

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増加する外国人患者の受け入れ体制を強化

医療法人真生会 真生会富山病院真鍋 恭弘 院長(まなべ・やすひろ)1986年福井医科大学(現:福井大学)医学部卒業。湖北総合病院耳鼻咽喉科、福井医科大学附属病院耳鼻咽喉科などを経て、1995年から現職。  2018年に創立30周年を迎えた「真生会富山病院」の創立時からの理念は「自利利他」。最近では外国人の患者の受け入れにも積極的だ。病院経営にさまざまな工夫が求められる中で、これからの病院がどうあるべきか。新しい取り組みに挑戦する真鍋恭弘院長に話を聞いた。 —病院の特徴は。  当院では創業以来、大切にしている理念があります。それは、「自利利他(じり りた)」の精神。「他人を幸せにすること(利他)、それがそのまま自分の幸せ(自利)になる」、つまり「患者さんの幸せが第一であり、それが私たちの医療者としての幸せである」という意味です。この言葉を医師・従業員全員で日々意識しています。  最近増えているのが、外国人向けの医療です。きっかけは7年ほど前。ある医師を通じ、中国国内で治療が困難とされた患者さんが眼科治療のために来院しました。手術は成功。その方からの紹介で、その後、中国からの患者さんが継続するようになりました。  現在では中国の病院経営者が当院の勉強会に参加したり、眼科と内科の研修医が2人当院に在籍したりと、中国との交流が続いています。  港が近いことや県内の外国人就労者が増加していることもあり、中国以外の外国出身患者も増加中です。現在ではロシア、パキスタン、フィリピン、ベトナムなどさまざまな国の方が訪れるようになりました。彼らは横のつながりが強く、友人や家族を連れてまた来院してくれるのです。  なるべく多くの方が治療を受けられるよう、平日の外来受付時間は午後7時までにしています。 —海外の患者の留意点は。 やはり文化の違いでしょう。特に入院時は注意が必要です。宗教上食べられない物があることも多く、文化の違いには特に配慮を要します。入院手続き時に細かくヒアリングし、失礼がないよう気を付けています。  また、言語については、英語通訳1級1人、中国語通訳1級1人の医療通訳士が常勤し、診療のサポートに当たっています。他にも、診察申込書や病院案内、外来受付などを多言語で表示。昨年、「外国人患者受入れ医療機関認証制度(JMIP)」も県内で初めて取得しました。 —今後は。  「自利利他」の追求が変わらずテーマです。自利「自分の幸せ」は、当院の従業員の幸せにもつながります。過重労働にならないよう調整を図り、やりがいをもって仕事に取り組んでほしいと思います。  「キュアとケア」という言葉があります。キュアは治療のこと。ケアは対話など心のサポートのことです。かつては治療によって完治する病気が中心でしたが、現在は高齢化によって、延命はできるが完治は難しい、という状況の方も増えています。従来に比べ、キュアの割合が低くなり、ケアの割合が高まっていると言えるでしょう。  当院では、医師・従業員ともに「対人援助論」というケア理論を学んでいます。これにより、終末期の患者さんに「できること」が増えました。その結果、笑顔を取り戻し、「もう少し生きてみよう」と、明るく病気と向き合う方も多くなりました。これは、医療従事者にとっても大きなやりがいにつながっています。  現在、常勤医師の在籍数は40人を超えました。当院は99床の病院なので恵まれた人数だと思います。外来の最終受付時間を遅めに設定することや、海外からの患者の受け入れ、最近では働き方改革などいろいろな試みがスムーズに進めやすい状況です。  理念を柱に、良い循環が生まれています。今後もこれを継続していきたいと考えています。「自利利他」の追求と実践を通じ、これからもあらゆる患者さんに向けて、〝本当の幸せ〟を追求する医療を提供していきます。 医療法人真生会 真生会富山病院富山県射水市下若89―10☎0766―52―2156(代表)https://www.shinseikai.jp/

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