サロンオーナー 脇田 法子 さん
■充実したリハビリ病床
「雑巾を水にぬらして、そのまま壁に投げつけると、びしゃっと張り付いて、そのままずるずると壁を伝って落ちていくでしょう。そのずるずると落ちる雑巾みたいな感じ」
福岡県飯塚市でシャンソン化粧品のエステサロン「CEサロン 'elua(エ・ルア)」を経営する脇田法子さんは、14年以上自身を苦しめてきたC型肝炎のだるさを、そう表現した。
C型肝炎はC型肝炎ウイルス(HCV)に感染して起こる病気で、進行すると肝硬変や肝臓がんを引き起こす。脇田さんの病気がわかったのは、12〜13年ほど前、母が営んでいた化粧品販売の仕事を継いで夢中になって仕事をしていたころだった。たまたま近所での献血に行ったところ、肝機能の低下を指摘され、病院に行くと、C型肝炎と診断されたのだ。
思い当たることはあった。疲れやすく、お酒も体が受け付けなかった。でも、病気だとは考えたこともなかった。「私って体力ないな、仕事ってがんばるときついものだな」(脇田さん)と思い、その状態で仕事に、育児に、日々走り続けていた。
実際に治療を始めてみると、想像以上に厳しかった。通院でバスに乗るのにも、バス停で待つ体力がない。インターフェロン治療では、副作用として示されているうつ状態にもなった。大好きなフラダンスも一時は辞めるほどだった。
それでも、仕事は諦めなかった。店の奥にベッドを置き、いつでも休める状態にして、店に出続けた。エステで「ハワイアンロミロミ」の手技を導入するためにハワイまで研修に行った。客に触れるため、手のけがに細心の注意をはらい、「美と健康を売る仕事」( 脇田さん)を続けてきた。
C型肝炎は新薬が次々と登場し、転機の時を迎えている。脇田さんも今年1月から2種類の薬を飲み始め、3月中旬には「ウイルスゼロ」になった。今も2週間に1度、血液検査を受けているが、異常なしの状態が続いている。
「朝、自然に目が覚める。こんなにも違うなんて」。脇田さんは、再び健康を手にした喜びを感じながら、一方で、こうも語る。
「肝炎が分かる前の私は、どんなにきつくても、頑張れ、頑張れるはず、と自分に対して思っていた。たまたま私は病気がわかり、治療できたけれど、今、あのころの私と同じように、病気だと分からず頑張っている人がいると思うと、そのことが気がかりです」