医療法人青鳳会 美摩病院 四宮 文男 院長
■充実したリハビリ病床
当院は病床数155床、診療科は8つで、とくにリウマチ科と整形外科が患者数も多く病院の看板になっています。
院長に就任して10年の月日が流れました。就任した当時は長期療養型病院でしたが、リハビリテーションを中心とした病院への機能転換をはかりました。60床の回復期リハビリテーション病棟では、運動器疾患、骨折、リウマチや脳血管障害などの患者さんを受け入れており、リハビリを中心とした治療を行い、家庭復帰、社会復帰ができるよう援助しています。優秀な理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などのスタッフが大きな力になっています。
■豊富な高齢者向け施設
家庭復帰できた方と御家族の介護のお手伝いをできるようにデイケア、デイサービス、訪問リハビリ、訪問看護、ホームヘルパーなどの施設で在宅支援サービスを行っています。また、家庭復帰・在宅生活が困難な高齢者のために法人と関連法人で特別養護老人ホーム、老人保健施設、グループホーム、サービス付高齢者住宅などを運営しており、患者さんの家庭背景、障害の程度や経済状況に応じた施設に入所することができます。
■医療活動の3本柱
病院では医療活動の3本柱を掲げています。1つ目は「地域における高齢者医療の拠点としての役割」。関連の高齢者施設だけでなく吉野川市、阿波市の在宅患者の診療にあたっている開業医や地域の高齢者施設と連携し、重症患者さんを受け入れてサポートしています。
2つ目は「徳島県のリウマチセンターとしての役割」。病院が吉野川市にあることと、吉野川流域住民のリウマチ医療に責任を持つことで名づけた吉野川リウマチセンターには香川県や兵庫県なども含めて徳島全県下から患者さんが受診し、治療を継続されています。
そして3つ目は「運動器疾患と脳血管障害に対する総合的な取り組み」です。徳島の高齢化は深刻です。
平均寿命が延びています。しかし寝たきりの状態で長生きすることが、果たして幸せだと言えるでしょうか。人間が人間らしく生きるためには健康な脳神経と運動器を保持していなければなりません。どちらが欠けても健全な社会生活を営むのは困難です。高齢者になっても健康な運動器を維持する手助けをし、生活の質を高めることは医療の大きな役割と考えています。
■リウマチ性疾患への取り組み
関節リウマチは発症すると関節が変形し、日常生活に支障をきたす、重症例では寝たきりになってしまう病気でした。発病すると完治せず、生活の質を著しく損ねていました。
10年ほど前から画期的な抗リウマチ薬とくに生物学的製剤が登場し、リウマチ治療は飛躍的な進歩をとげました。今では、適切な治療によって寛解し、何ら不自由のない生活を送ることが可能です。
ただ、徳島県のリウマチ医療の最大の問題点は、薬剤の進歩に専門医の数が追い付いていないことです。そこで私は県下のリウマチ医療発展のために「徳島リウマチの会」を創設し、代表世話人の一人を務めています。毎月のように講演会や研究会があり大忙しです。
進歩した適切な治療を全ての患者さんに提供する、そのためにはそれができる医師を育成せねばなりません。この取り組みが、ライフワークの一つとなっています。
■地方の深刻な医師不足
私は月に2〜3回、県立海部病院(海部郡)でリウマチ外来をしています。徳島県南部はとくに医師不足が深刻です。少しでも助けになればとの思いで続けています。
新臨床研修制度導入以降、地方の医師不足が顕著です。大都市に医師が集中し、徳島県内においても大きな病院に医師が集中しています。みなさん、医師の確保に頭を悩ませているようです。
政府の医療政策にも問題があります。在院日数を削減して、患者さんを早く在宅へ返すように推進していますが、その受け皿が整っていない地域がほとんどです。医療費削減ありきで、地方の医療の実態を把握しきれていないのが、歯がゆいですね。
■患者さんのために
「医療は患者さんのために」を病院のスローガンに掲げていて、患者さん中心の医療を進めています。そのなかで重視しているのが「チーム医療の推進」です。カンファレンスや症例検討を頻回に行ない、すべての医療従事者が患者さんの情報を共有して患者さんを支えています。他部門から刺激を受け、各個人の能力の底上げにつながるという思わぬ副産物もありますね。もう一つは「医療連携」です。1つの病院、1つの法人内で医療を完結させる時代は終わりました。地域の病院と連携して医療を行ない、密な連携をしなければなりません。
現在、徳島県立中央病院、徳島大学病院、吉野川医療センターなどとはスムーズな医療連携が少しずつ取れるようになってきました。今後は、より多くの病院や診療所、さらに高齢者施設とも密な連携を築いていかねばならないと感じています。