患者、職員にとって心地よい病院とは
岐阜大学医学部附属病院の吉田和弘新病院長は4月の就任後、さまざまなテーマのワーキンググループを設置。病院の課題解決に積極的に取り組み始めた。
―15代目の病院長です。抱負などを。
小倉真治前病院長は、救急医療を柱に当病院の運営に力を尽くされました。その功績を踏まえ、岐阜県の医療の最後のとりでとしての役割を担う病院でありたいと思います。
そして「社会と医療のニーズに応えられる病院」を目指します。社会や医療の世界は急速に変わりつつあり、地域や個人のニーズも変化しています。
それらに応えながら、常に最先端の医療を提供し続けたいと思います。患者さんやそのご家族に「岐阜大学に来て良かった」と思っていただきたいですね。
―目標は。
四つの目標を掲げています。まず、一つ目が地域の中核病院としての役割を果たすこと。
継続的に医療が必要な疾患として国が挙げる5疾病5事業に対して、高度で質の高い医療の提供は不可欠。中でも「がんと救急」への対策は重要です。当院は「都道府県がん診療連携拠点病院」に指定されていますので、継続的なスキルアップが欠かせません。
二つ目が臨床研究の充実を図ること。これには本学のみならず関連病院との連携が欠かせないと思います。われわれと連携病院がユニットになれば2千床規模の体制を築ける。「岐阜大であれば臨床研究、治験が効率良くできる」というシステムを作り上げたい。大学病院は標準治療をするだけではなく、標準治療をつくる場でなければなりません。
三つ目は国際化を図ること。海外研修や人材交流を通じて、世界的にも活躍できるリーダーを育成します。すでに専門医の交流は始めていますが、研修医の段階で経験できるようになればと思います。これまでフランスのパリ大学、アメリカのマイアミ大学、タイのチェンマイ大学などと提携しています。
また、個人的には医師だけでなく看護師、事務系職員なども海外で学んでほしいと思います。海外の病院の場合、それぞれの職種が医師と対等に働いている。「医療というのは医者だけでやるものではない」という意識付けにつながると思います。
四つ目が「働き方改革」です。私は、働き方改革は一人ひとりによる「考え方改革」だと思っています。
私が目指すのは「時間のゆとりが心のゆとりを生み出す」ということ。ゆとりができれば患者さんに優しくできる。そして、患者さんの喜びに私たちはやりがいを見いだすのです。
多くの人が「残業しないと質の高い医療は提供できない」と思い込んでいると感じます。既成の概念にとらわれていないだろうかと、まずは自分たちの働き方を見直す必要があると思います。
―具体的な取り組みは。
病院長を中心に、副病院長、病院長補佐、看護部長、事務部長から成る「岐阜大学医学部附属病院成長戦略推進ワーキングプロジェクト」を立ち上げました。
病院の課題についてプランを練るだけでなく具体的に実践するための道筋をつくりたいと考えています。
例えば患者さんの手術や診療までの待ち時間が長いという問題。現在は外科手術の場合、入院後の診療を終えたときに主治医が手術の説明をします。
これを看護師などがもっと早い時期に外来ですることもできる。患者さんにとってみれば手術の不安も早いうちに軽減されますし、医師にとっても日中の手術に集中できる。そのように、多職種での分担、あるいはワークシフティングなど、さまざまな方法が考えられます。
患者さんにとって、そしてわれわれにとっても「心地よい病院とは何か」を考え続けていきます。
岐阜大学医学部附属病院
岐阜市柳戸1-1
TEL:058-230-6000(代表)
https://www.hosp.gifu-u.ac.jp/