岐阜大学大学院 医学系研究科 腫瘍制御学講座 消化器病態学分野 (第1内科)  清水 雅仁 教授

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増加する「非B非C型」肝疾患の要因は多様化へ

【しみず・まさひと】 1995年岐阜大学医学部卒業、同附属病院第一内科入局。米コロンビア大学メディカルセンター留学などを経て、2015年から現職。

肝硬変をはじめとする慢性肝疾患や肝がんの治療、研究に力を注ぐ岐阜大学大学院消化器病態学分野(第1内科)。近年、肝炎ウイルス感染に起因しない「非B非C型」の肝炎や肝がんの患者が増加するなど、新たな課題も浮かび上がっている。現状と今後について、清水雅仁教授に聞いた。

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―近年の慢性肝疾患の傾向を教えてください。

 国内の肝がんの罹患(りかん)者数は減少傾向です。しかし2018年のがん統計予測によると、年間の死亡数はおよそ2万7000人。部位別では5番目と、いまだ高い順位です。

 肝がんの主な要因はC型肝炎ウイルス(HCV)とB型肝炎ウイルス(HBV)です。100%近い奏効率が期待できるインターフェロンフリー治療などによって、C型肝炎ウイルスの排除が可能です。

 B型肝炎ウイルスに関しては、ウイルスを完全に排除する方法はまだ確立されていません。核酸アナログ製剤の投与などによる抗ウイルス療法によって肝炎を抑制します。2016年10月、B型肝炎ワクチンが定期接種の対象となりました。今後の感染者数の減少に期待しています。

 肝疾患の領域において日本が有する診断や治療技術は、世界をリードしていると言えます。さらに、それらを支える医療制度がしっかりと構築されている点も大きな特徴です。


 ウイルス感染に起因する肝がんが減っているとされる中で、ウイルス感染ではない「非B非C型」と呼ばれる肝炎や肝がんの割合が大きくなっていることが指摘されています。C型、B型肝炎ウイルスが関与しない肝がんは、この10年間で2倍程度に増加したとも言われています。

―どのような要因が考えられるのでしょうか。

 一般的に、非B非C型の半数は、飲酒によるアルコール性肝障害が主因だと考えられてきました。

 現在、お酒を少量しか飲まない、あるいはまったく飲まない人であっても発症する肝臓の疾患「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」の増加が注目されています。

 NAFLDが進行すると「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」に至る場合があります。NASHによる肝硬変が肝がんへと至る割合は年率2%ほどだと報告されています。

 NAFLD、NASHの患者さんの多くに肥満や糖尿病などが見られます。メタボリックシンドロームと深く関わっており、内臓脂肪型肥満で体内の炎症状態が続くことが発症に関係していると考えられています。

 私たちは研究で「内臓脂肪の量が多いほど肝炎の活動が活発化する」ことを突き止めましたが、NAFLDやNASHについてはまだ分からないことが多く、診断そのものが難しいという状況です。

 現時点での治療法は、食事療法と運動療法を中心とする減量です。NASHの治療薬の開発が進められていますが、実用化は少々先のことです。

―今後の肝疾患への対応について。

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 岐阜大学医学部附属病院は、岐阜県で唯一の肝疾患診療連携拠点病院。県内にある15の肝疾患に関する専門医療機関と共に、治療やそのフォローアップに努めています。

 私たち第1内科は岐阜県の「消化器がんによる死亡者の撲滅」を目標に掲げています。臨床や研究の成果をより広く発信していくことを大きな目的に、寄附講座「地域腫瘍学講座」を開設しています。

 20本のスコープを搭載した「経鼻内視鏡検診車」を導入した岐北厚生病院(岐阜県山県市)と連携して、検査体制が十分でない地域などで検診をサポートしています。大学病院が参画したこのような取り組みは、全国的にも珍しいでしょう。新たな治療や診断のあり方を提案したいと思います。

岐阜大学大学院 医学系研究科 腫瘍制御学講座 消化器病態学分野(第1内科)
岐阜市柳戸1-1
TEL:058-230-6000(代表)
https://hosp.gifu-u.ac.jp/1naika/


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