"治す"から"支える"へ 在宅医療に力を注ぐ
地域住民の高齢化が進む佐賀県小城市。病院に求められる医療のあり方も、急速に変化している。大正初期に開業した江口病院は、患者のニーズを敏感に感じ取り、地域密着型の病院を目指している。
-今秋に新築移転を予定。その理由は何でしょう。
現在の病院が建てられて30年が経ちました。来院する患者さんの多くが若者から高齢者へと変わり、さらに院内の狭さや老朽化も目立ち始めています。
そこで、建て替えを決断。新病院は今年の9月1日から稼働します。病床数は全体で98床。一般病床が48床で、そのうち7床が地域包括ケア病床、残りの50床は医療療養病床です。
新病院移行後も今までの院内体制は変わりません。院外にある「訪問看護ステーション」や「デイケア三日月」は新病院の中に設置し、医師との連携を強化します。
佐賀県の地域医療構想では、2023年ごろまで高齢者の数が増えると予想されています。高齢の患者さんが望んでいるのは、できるだけ住み慣れた地域、これまでと同じ環境で生活することです。「治す」よりも「支える」を重視した、在宅医療のニーズが高まってくると考えています。
運転免許返納などによる通院困難者の増加で、自宅で医療を受けたいと希望する方も増えるでしょう。さらに小城市では75歳以上の後期高齢者だけの世帯が増加。自宅での生活が困難になったり、介護が必要になったりした人が施設に入所するケースも多くなっています。
そこで、われわれは自宅ではない場所でも医療を受けられる体制を整えました。市内の老人ホームなどの施設と提携し、月に2度、医師が施設を訪問して診察するサービスです。看護師、ヘルパー、ケアマネジャーも派遣して患者を支えます。
情報共有にはカナミックネットワーク社の医療介護に特化したクラウドサービスを活用。医師が診察した情報やヘルパーが感じたことなどをリアルタイムに入力・確認できるようにしたので、急な体調の変化にもすぐに対応可能です。
最近、小城市では看取(みと)りまでできるグループホームが増えてきました。われわれは、患者さんの治療方針や今の容態などの情報を家族はもちろん、施設の管理者にも伝えるようにしています。
病状の進行具合などを伝えておけば、急な容態の変化にも慌てずに対処できるでしょう。もし悪化した場合はすぐに入院できるよう、地域包括ケア病床を確保しています。二重三重のセーフティーネットを設け、患者さんやその家族が安心できる環境を整えることも、大切なことだと思うのです。新病院では、一般病床のベッド数を見直して、地域包括ケア病床に移行していくことも視野に入れています。
-地域でどのような役割を果たしていくのでしょうか。
今、地域の医院やクリニックの先生方と協力体制を整えて、二人主治医制のようなシステムを展開中です。患者の情報を共有し合う医師が近くにいれば、きめ細かな対応ができる。在宅医療を広げるうえで必要な部分だと考えています。
在宅医療は患者さんのことだけでなく、家族の介護力、経済力、価値観まで含めて考えなければなりません。医師1人で把握するのは難しいでしょう。私たちが地域の医療・介護・福祉に関わる人たちをつなぐチーム医療の要となることができたら。そんな思いを抱いています。
医療法人ロコメディカル江口病院
佐賀県小城市三日月町金田1054-2
TEL:0952-73-3083
http://www.eguchi-hospital.com/