専門性を拡張する新施設完成後の展望
再来年のリニューアルオープンを目指し新病院を建設中。幅広い診療科を維持しながら専門性の拡充を目指す。
2020年1月新病院稼働
―建設中の新施設について教えてください。
敷地面積は8千8百坪、6階建てで、延床面積は約6千坪になる予定。屋上にはヘリポートを新設します。2019年12月に施設が完成する予定で、開業目標は2020年の1月です。
新施設は、今の病院運営方針を踏襲。その大きな柱は二つ。「消化器疾患」と「循環器疾患」に対する医療の専門性強化です。
当院では、2017年度、35人の肝がん患者に対して、九州医療センターの才津秀樹先生が技法を確立したマイクロ波凝固壊死療法を行いました。肝臓の切除手術に比べ、患者さんへの負担が少ないため、体力が落ちた高齢者や肝硬変患者にも対応できます。
2003年から2017年にかけて当院のこの療法の5年生存率は55%。悪くない成績と言えるのではないでしょうか。最大で27個の肝転移病巣を一度に焼灼するなど、この分野においては実績が豊富であり、今後もこの手法によって、より多くの患者さんを治療していきたいと考えます。
肝疾患患者への対応を拡充するため、新施設では、専門性の高い「肝疾患治療センター」を独立した機関として併設予定。常勤医5人の体制で運営します。
循環器疾患の治療は、昨年、久留米大学から当院に戻り、副院長に就いた弟が中心になって担当します。
現在、延岡市と地元企業である旭化成と共同で慢性心不全患者を見守る医療システムを開発中。九州保健福祉大学の佐藤圭創教授と共同で倫理委員会に申請済みで、本格運用を目指しています。
このシステムは、スマートフォンなどのデバイスにインストールして運用できる医療アプリを活用したもの。医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、ケアマネジャーなどのさまざまな職種スタッフが、患者さんの病状をリアルタイムで共有し、経過観察できます。
数年前からアプリ開発を進めていた旭化成と、SNSを活用して独自に人工心臓チームの連携体制を確立させてきた副院長との連携によって、慢性心不全患者に対する実用的な医療サポートシステムが完成しつつあります。
また、新病院稼働と同時に訪問看護部門を新設。IT技術を活用しながらきめ細かな医療を提供することで、終末期も安心して地元で医療を受けられる体制を強化していきたい。運用プロセスのさらなるブラッシュアップを進めていきたいと考えています。
災害時にも地域医療を死守
―新施設の防災対策は。
延岡市には、大きな川が2本流れており、災害が発生して橋が崩落した場合には、地域が分断されると予想されています。その場合には、当院が災害拠点病院に代わって地域医療を死守する責任があります。そこで、新施設は地盤の固い高台に建設することにしました。
県内全域が被災した場合には、新設するヘリポートから、隣県の大分や熊本に患者さんを運ぶシミュレーションもしていきます。
さらに、災害発生時にスムーズにトリアージができるように、1階に、975坪の広い空間を確保しました。災害時には、300台分の駐車場も活用する計画です。
延岡で生まれ育った私にとって、当院への信頼と期待は、大きな糧となっています。民間では県北最大規模の病院として、専門性に特化しながら、この地で医療を完結できる体制を強化するため、進んでいきたいと考えています。
医療法人伸和会 共立病院
宮崎県延岡市中川原町3-42
TEL:0982-33-3268(代表)
http://www.nobeoka-kyoritu.or.jp/