社会医療法人天陽会 中央病院 厚地 伸彦 院長

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患者に「リスク」を負わせない

【あつち・のぶひこ】 1994 九州大学医学部卒業 飯塚病院 1999 東京女子医科大学病院 2001 済生会熊本病院 2007 鹿児島大学医学部附属病院 2008 天陽会中央病院 医療法人天陽会理事 2016 同院長

 父親が理事長を務めている天陽会中央病院に戻ったのが10年前。厚地伸彦院長は、たびたび起こる救急患者の県外搬送に危機感を抱き、専門である循環器領域を中心に、救急対応を強化してきた。その思いは災害対策にも通じている。

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―災害への備えについて聞かせてください。

 鹿児島市で最も"身近"な災害といえば、桜島の噴火です。

 当法人は、桜島に療養病床55床の「桜島病院」を有しています。高齢患者が多いため、噴火が起き「全島避難指示」が出た時点で、避難を始めたのでは間に合わない人が出る可能性がある。そこで、噴火発生の危険性が高まった「避難準備」の段階で、島外にあるこの病院に転院していただくことを検討しています。

 島内には、診療可能な医療機関が桜島病院しかありません。島外に避難し、避難所などで暮らす方の往診などにも、同じ法人のわれわれが協力する必要があるでしょう。

 さらに、大規模爆発が起きれば、島外であっても降灰や噴石のリスクが高まります。最悪、この病院にも1週間ほど外部からの応援や物資が来ないことも想定される。現在、当院に配備している食料や水などは3日分ですが、1週間の「籠城」状態にも耐えられるよう、今後、備えていく方針です。

 当院の入院患者は約220人、職員が700人余り。災害時には隣接する「天陽会中央クリニック」の外来患者、桜島病院の入院患者なども転院してくる可能性があります。必要な数はどのぐらいなのか。その見極めも大事になります。

―災害発生時の具体的な対応は。

 広いスペースが確保できる天陽会中央クリニックに本部を設置し、1階フロアと駐車場で患者のトリアージを実施。軽症の方の処置は、クリニック内で対応したいと考えています。

 重症の患者は中央病院で集中的に治療。当院の強みである循環器疾患の患者や透析患者の受け入れが中心になってくると想定しています。当院での対処が難しい容態であれば、対応可能な近隣の病院などと連絡を取り、搬送する必要もあるでしょう。

 県内には「鹿児島救急医学会」があり、医師、看護師を含めたさまざまな職種の人が常時、活発に情報交換をしています。研究会などを通じた「顔の見える連携」が災害時にも生きると思います。

―中央病院の「救急」については。

 私たちの病院は、「救急を断らない」が基本的なスタンスです。

 循環器疾患、消化器疾患の高度専門治療が可能。当院での治療が困難な患者であっても、救急隊からの要請があれば受け入れます。災害時のトリアージのように状態を見極めた上で、全身管理など必要な医療処置を施しつつ、専門治療が可能な医療機関へとつなぐ。それも大切な役割だと考えています。

 さらに、市内の医療機関から当院へ紹介される患者で医師が同伴しなければ搬送が困難な状態の方がいる場合は、ドクターカーで向かって当院へ運んでいます。

 ドクターカーでは、IABP(大動脈バルーンパンピング)などの補助循環装置を使いながらの移動も可能。機器を積んで迎えに行き、患者に装着して当院に連れてくるケースもありますし、同乗の医師から患者の状態の連絡を受け、院内で手術など必要な準備を進めておくこともできます。

 私が鹿児島に戻ってきた当初、県内には循環器の救急患者を受け入れられる医療機関が少なく、ドクターヘリなどで県外に運ぶ例も少なくありませんでした。

 「この状況を改善したい」「患者がリスクを負わなくて済む体制を整えたい」と努力してきて、今があります。「救急を断らない、地域に役に立つ病院」を目指して、今後もハード面、ソフト面を整備していきたいと思っています。

―循環器疾患に対する院内の体制や取り組みを聞かせてください。

 2010年、ハートセンターを開設し、今は循環器内科医8人、心臓血管外科医4人の体制。症例数は年々増加しています。

 狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患に対する経皮的冠動脈形成術(PCI)がもっとも多く、2017年は577件。2016年には心臓血管外科、循環器内科、放射線科が連携して、大動脈瘤ステントグラフト内挿術を開始し、順調に症例数を伸ばしています。

 当院が得意とするオフポンプ冠動脈バイパス術は85件、弁膜症手術も36件と、開心術も200件前後を推移しています。

 特色の一つが「ロータブレーター」を活用した動脈硬化の治療です。

 動脈硬化の形態の一つ「石灰化病変」は、血管内にステントを留置しても十分に広げられないなど、治療に難渋することで知られています。留置したステントが閉塞してしまうリスクも高くなるのです。そこで、ロータブレーターを使い、石灰化部分を削ってステントを留置。強固な石灰化がある症例にも対応しています。

―今後の方向性は。

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 医療技術の進歩などで治療の選択肢が増えています。その中で大事なのは医療者側が「やりたいことをする」のではなく「やるべきことをする」ということ。当院でできる治療の種類を増やし、技術を高めるということは当然大事ですが、「本当に患者さんにとって利益がある方法なのか」と吟味する視点が必要だと思っています。

 私は循環器内科医ですが、内科の手技にこだわるのではなく、外科に任せたほうがいいのか、外科と内科が一緒に治療したほうがいいのかを常に考えている。患者さんや家族への説明でも、選択肢それぞれのメリット、デメリットを具体的に提示し、何を望んでいるのかを聞きながら、治療法を決めていきます。

 「救急を断らない、地域に役立つ病院」であるために、循環器疾患に関しては世の中の動きをキャッチアップし、新しいものをどんどん取り入れていきたい。設備や機器、スタッフの教育も含めて、一層充実させ、強化していくつもりです。

社会医療法人天陽会 中央病院
鹿児島市泉町6-7
TEL:099-226-8181(代表)
http://www.tenyoukai.org/central/


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