新春にあたり
年頭にあたり新年のご挨拶を申し上げます。
今年の干支はさる、丙申(ひのえさる)です。丙は「火の兄」といい、横に燃えさかる性質があり、申は物事が進歩発展し成熟するまで伸びる様を意味しているそうで、この組み合わせから本年は、諸々の問題が益々明確になり、それらが拡大することにより、問題解決へ向けての決断力、行動力が必然的に必要とされる年になるとのことです。
我が国の政治や経済、外交、安全保障環境をはじめ、中東や欧州の今後の展開はいささか不安でありますが、現在進行中の医療を取り巻く環境の大変革の行く末も我々にとって大いに気になるところです。
我が国は諸外国に例をみないスピードで高齢化が進行しており、65歳以上の人口は国民の約4人に1人の割合となる3000万人を超え、2042年の約3900万人でピークに達し、その後も75歳以上の人口割合は増加し続けることが予想されております。
とりわけ約800万人にのぼる団塊の世代が75歳以上となる2025年以降は、国民の医療や介護の需要が更に増加することが見込まれています。
国は2025年問題に対応するため、地域包括ケアシステム構築と地域医療構想を車の両輪として医療介護提供体制作りを進めています。これらの展開、帰趨(きすう)は非常に気になるところですが、とりあえずは皆保険制度の「いつでも、どこでも、だれでも」のうち「どこでも」の部分を見直すことはすぐにでも実行できるでしょう。限りある医療財源を大事に使うためにも、かかりつけ医を窓口としての医療連携の積極的運用への理解を深める事が重要です。高額医療費、医療類似行為等への対策も喫緊の課題です。
猿たちが井戸に映った月影を取ろうとして木の枝からぶら下がり、手と尾を結んで井戸の中に入ったところ、枝が折れて皆が溺れ死んだ故事から、欲心を起こして分不相応な事を行い、命までも落とす浅慮・無謀な行為をたとえて「猿猴が月」と言います。世界の宝とも言える国民皆保険制度を将来に残すために、私たちは現在の社会事情に鑑み、「猿猴が月」とならぬよう、みんなが少しずつ我慢をし、知恵を出し合うことにより、高齢化、人口減少、低経済成長社会に適応出来る制度に改造し、運用していきたいと思います。
本年が明るく活気のある社会を創る年になることを願いますとともに、皆様方にとりましても幸多き年でありますよう心より祈念申し上げます。