「人」/若年性認知症患者の思いをのせて歌う音楽療法士のshokoさん

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コンサートで「あなたを忘れない」などを歌ったshokoさん。客席では、涙をぬぐう人の姿も見られた

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 65歳未満が発症する認知症の総称「若年性認知症」。その患者の思いをのせた曲「あなたを忘れない」と「あなたの海で」を作り、歌う女性がいる。音楽療法士のshoko(松下祥子)さん(37)=福岡県在住。高齢者の認知症とはまた違う、若年性認知症への理解が広がってほしいと願い、活動している。 

 shokoさんは福岡県出身。大学卒業後「音楽に関わる仕事がしたい」と、福岡女子短期大学に社会人入学、音楽療法科を卒業した。

 若年性認知症との出会いは、音楽療法士となって働き始めたデイサービス施設「天神オアシスクラブ」(福岡市中央区)。そこには若年性認知症の50代の女性と介護する夫が訪れていた。

 夫の名前さえも忘れていく妻。介護をひとりで抱え、疲れ、笑顔を失っていく夫。お互いが相手を思い合っているにも関わらず、溝は深まっていくようだった。しかし、妻が夫を見つめる視線は、他の人に対してのものとは違っていた。「思いはある。言葉にできないだけ」。そう感じた。

 自身の祖母が認知症だったこと、その祖母を介護していた母のことも、どこかで重なった。「曲を書いたら」。オアシスクラブの施設長、中島七海さんに背中を押されると、あふれるように言葉と曲が浮かんだ。

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今も天神オアシスクラブで働くshokoさん。認知症の人と笑顔で語り合う

 「若年性認知症の方の気持ちがそのまま歌になっていて、涙がとめどなく流れました」。中島さんは、初めて曲を聞いた時のことをそう表現する。2007年に完成したこの曲は、若年認知症者と家族の会「オアシス虹の会」のテーマソングにもなっている。

 その後、shokoさんは音楽を通じて知り合った寛史さんと結婚し、3人の男の子にも恵まれた。今、若年性認知症の人や家族の、家族を忘れてしまうことへの不安や悲しみ、家族に忘れられてしまう苦しさ、寂しさが、より一層、胸に迫る。

 2015年1月、国は認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)に「若年性認知症施策の強化」を盛り込んだが、実情把握や対策は、まだまだこれからというのが現状だ。「関心を持ってもらわないと、何も変わらない。この歌が、若年性認知症の方やご家族が大変な思いをしていることを知ってもらうきっかけの一つになれば」とshokoさん。これからもずっと、歌い続けるつもりだ。

【メモ】若年性認知症=2009年の厚生労働省の発表によると罹患者数は全国で推計3 万7800 人。女性より男性が多く、発症平均年齢は51 歳。住宅ローンや子どもの学費が払えなくなる、子ども世代が若く介護に関わるのが配偶者だけになる、親世代の介護もあり二重介護の状態になる、介護期間が長くなるなど、さまざまな問題が言われている。

本当は いつも伝えたい
でもうまく伝わらない
いつか 
言えなくなる日がくる
今 あなたに 
心いっぱい ありがとう

私があなたのことを
忘れてしまっても
けして
悲しまないでいてね
私の中から
あなたは消えないから

『あなたを忘れない』より

失われてゆく海 
さまよえる愛のはざま
海が消えてしまっても 
心は生きてるから
あなたの愛に抱かれて
あなたの海の中で 眠りたい

『あなたの海で』より


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