小児外科とは「つくる医療」です

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鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 小児外科学分野 家入 里志 教授

1994 九州大学医学部卒業 同医学部附属病院医員(研修医:小児外科)1995 北九州市立医療センター(研修医:小児外科) 1996 国立病院九州医療センター(レジデント:外科) 1997 九州大学大学院医学系研究科生殖発達医学専攻入学 2001 同医学部附属病院医員(小児外科) 2003 同医学部附属病院助手(先端医工学診療部) 2007 同大学病院助教(先端医工学診療部) 2010 同大学病院診療講師(先端医工学診療部) 同大学病院講師(小児外科) 2014 同大学大学院医学研究院准教授(小児外科学分野) 2015 オランダ・ユトレヒト大学附属ウィルヘルミナ小児病院訪問研究員 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科小児外科学分野教授 ■所属学会:日本小児外科学会(評議員・データベース委員、トランジション検討委員・Pediatric Surgery International Publication Committee) 日本外科学会 日本小児血液・がん学会 日本内視鏡外科学会(評議員・ロボット手術検討委員小児外科領域委員長) ほか

 鹿児島大学小児外科学は講座が開設して今年で25年目を迎えた。4月に4代目教授に就任した家入里志教授に今後の抱負や小児外科学の魅力について話を聞いた。

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新生児の横隔膜ヘルニアのモデル模型を用いて術前のシミュレーションの重要性について語る家入教授。

■高度な医療の提供を

 今年4月に教授に就任して最初に取り組んだのが小児外科の大学病院内における位置付けの把握と診断・手術の分析です。これらがようやく見えてきたので、次の段階でなすべきことは南九州の小児外科医療の患者さんの分布と地域性の把握です。

 県の人口動態を見ると鹿児島市と姶良市は人口が増加、または横ばいが予想されていますが、それ以外の地区は人口減少が予想されていて、少子高齢化が進行してしまいます。それでも医療を必要とする子供たちがいることは間違いありません。

 離島やへき地の患者さんであっても鹿児島市内と同等の高度な医療を提供する必要があるので、県内あるいは南九州の小児外科医療の集約化に取り組むことが急務です。

■小児外科の魅力

 成人の外科は消化管、肝胆膵、呼吸、泌尿器、婦人科など専門が細分化されていますが、小児外科では脳と心臓を除く、ほぼすべての臓器を診なければならず幅広い診療と手術が行えます。

 適切な治療を施せば、患者さんは、その先70年、80年と長い人生を過ごすことが可能です。自分が治療した患者さんが成人して、社会に羽ばたく姿をみると医者冥利(みょうり)に尽きますね。

 少子高齢化が顕著な日本において、病気を持ったお子さんを治療して社会に返す、学校に通い、就職、結婚して、次の世代へとバトンを渡す。この循環を促すのが我々に課せられた使命です。

 小児外科は外科のなかでも特殊な存在で、希少な病気を持った患者さんを診る科だと言えます。一人ひとりの患者さんをしっかりと治療すれば、必ずやその子の将来及び、日本の将来につながります。

 苦労することも多いですが、やりがいもあるので、少しでも小児外科に興味がある人は、ぜひ教室の門を叩いてもらいたいですね。

■つくる医療

 癌、悪性腫瘍を対象とすることが多い成人外科では患部を取り去り、再建することが手術の最終目標となりますが、一方、小児外科ではもちろん小児がんも手術を行いますが生まれつきの形態異常の手術を対象とすることが多くなります。たとえば食道がつながっていない、肛門がないなどの患者さんの臓器機能を回復させる作業が必要です。

 小児外科は「つくる医療」です。つくるとは臓器を造る意味のほかに子供たちの人生を創るという意味があります。生まれつき無い臓器を造り、患者さんのその後の人生を創造するのが小児外科医だと思っています。

 私が医師になって21年がたちました。これまで治療に携わった患者さんが順調に育ち、成人して大学生、社会人になっています。なかには医学部に入学した人もいて、彼らの姿を見ると私のやってきたことは間違いではなかったと感慨深いものがありますね。

■シミュレーションの重要性

 現在、内視鏡外科手術の事故が問題になっています。ああしたことが起こらないように実際の手術の際、安全な手術が行えるように新生児の横隔膜ヘルニアの模型を用いたトレーニングを行っています。

 事前にシミュレーションをして、あらかじめイメージを持つことは重要です。何のイメージもなしに手術に臨むのは、とても危険なことです。

 知識、技術は当然必要ですが、危険を予測する能力も外科医には必須です。そういった能力を養うためにもシミュレーションは有効だと考えています。

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■異変に気付く力

 患者さんは治療が終わってからも長い人生が待っています。10年後、20年後にどのような影響が出るかを考えながら治療をして、出来るだけ障害が残らぬように社会に戻してあげることを常に念頭に置いてフォローアップしていくことが大切になります。

 大人の患者さんであれば、自分の症状を医師に伝えられますが、小さなお子さんにそれを求めるのは難しいので、異変に気付く力と親御さんが感じたわが子の異常をしっかりと聞き、評価することが必要になってきます。

■世界レベルの小児外科医療を

 鹿児島大学小児外科は来年で開講25年を迎えます。手術も1万例以上手がけている歴史ある講座です。

 コンスタントに小児外科を志望する有望な医師が入局してくれているので、人材も整って、高いレベルの診療を提供できていると思います。今後は私の専門領域である内視鏡外科手術を発展させていくつもりです。

 ベースがしっかりとしている教室なので、私がそこに肉付けをする形でレベルアップさせて、世界のトップに見劣りしない小児外科医療を目指し、若い人が世界に羽ばたく手助けができたらと考えています。


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