女性の健やかさと母性を支える

  • はてなブックマークに追加
  • Google Bookmarks に追加
  • Yahoo!ブックマークに登録
  • del.icio.us に登録
  • ライブドアクリップに追加
  • RSS
  • この記事についてTwitterでつぶやく

独立行政法人労働者健康福祉機構 愛媛労災病院 宮内 文久 院長

■ 宮内 文久=みやうち ふみひさ
1973 年山口大学医学部卒業、 同研修医。同大学院医学研究科(産婦人科学専攻)修了・医学博士。社会保険徳山中央病院、山口大学医学部産科婦人科学助手、同講師。ミシガン大学生殖内分泌学研究所客員研究員就任。山口大学医学部産科婦人科学助教授を経て、1989 年労働福祉事業団愛媛労災病院産婦人科部長、2005 年労働者健康福祉機構愛媛労災病院副院長、2012 年同院長代理。2014 年より現職。
■ 南條和也=なんじょう かずや  1980年 山口大学医学部卒業。1986 年 同大学大学院医学究科博士課程修了後、山口大学、済生会下関総合病院などで勤務。1989 年より現職。

c20-1-1.jpg

◆「女性」の健康な生活を守るために

 当院の目的のひとつは労働者の健康を守り支援することです。そこで過去10年にわたって女性労働者の健康支援に取り組んできています。

 昨年度までは、深夜長時間労働が女性に与える影響の調査、そして今年度からは、女性をターゲットにして、どうしたら働きやすい環境をつくれるかについて取り組んでいこうと思っています。

 これまでの研究で、夜間勤務に従事する女性は不規則な月経周期の出現率が高く、特に看護師では夜間勤務の回数が増えるにつれてその出現率が増加することや夜間の光刺激や睡眠覚醒リズムの乱れが血中メラトニン濃度を変化させることなどが分かってきました。

 私たちには避けて通れない体内リズムがあります。その主役がメラトニンと呼ばれるホルモンで、私たち人間は、目から入る光という情報をメラトニンというホルモンの情報に置き換えています。

 朝日が出て、夜明けとともに働き、日没とともに寝るのがベストな生活でした。

 しかし、人間が日光に代わる明かりを手に入れ、夜の時間帯に活動の幅を広げるとともに、夜間労働が増え、また、男女雇用機会均等法によって、さまざまな職場が女性にも開放されました。

 男女を比較すると、私は女性の方が夜間労働による影響を受けやすく、性差という面で、女性は夜間労働には向いていないと思っています。

◆愛媛から世界規模の研究

 これまでの労働の質の評価は、消費カロリーや職場環境などが指標でした。そして、新たな評価法として、ストレスを受けることによって変化する複数のホルモンの値を測定しようというところに来ています。

 ホルモンの測定には、これまで血液を使っていましたが、これは採血という侵襲を伴います。その他の方法はないか、ということで、唾液にたどり着きました。

 そして今、最先端なのが髪の毛です。

 血液や唾液はその時のストレス状態を瞬時に反映しますが、髪の毛は1カ月、3カ月など長期にわたるストレスが分かりそうなのです。今、あすか製薬メディカルなどと共同研究を進めており、ユニークな結果が出そうです。

 田舎の地にあっても世界規模の研究ができています。インターネットを使った情報検索・共有と、毎年参加するアメリカ内分泌学会における交流で、研究の進捗状況が分かります。そして、素晴らしいパートナーを得たこともあり、非常に競争の激しい領域でありながら、我々は世界の最先端をいっていると感じています。

 ストレスをいかに評価するかは、難しいところです。厚労省が主導するストレスチェックでも、ストレスを測る指標は疲れやすいか、イライラするか、などの本人の訴えでしかありません。

 本人の自覚とは別に、客観的な指標も必要です。これまでの客観的指標は、時間外労働の長さや医師や上司などの他人の評価だったりしましたが、今後はホルモン値の変化などが取り入れられるようになればいいと思っています。

◆夜勤は肥満の原因にも

 時間栄養学では、食事を食べる時間によって、代謝が変わり、栄養蓄積・分解にも変化が出るとされています。

 しかも、夜間は昼間に比べると同じものを食べても蓄積されやすいのです。そのため、夜働くと肥満、メタボリック症候群、糖尿・高血圧になりやすく、危険です。

 厚労省の許可をもらい、全国の看護師さんの夜間勤続年数と身長体重を聞き、夜間労働とBMIとの関係を明らかにしたいと思っています。

 今まで労働をホルモンの動きで評価した前例がないため、私達はデータをもとに啓蒙活動にあたっていきたいと思っていますし、勤務形態データも、ストレス指標に加えたいと考えています。

◆中高生にも警鐘

 私は新居浜市教育委員会の教育委員もしています。今スマートフォンが普及して、多くの中高生が持っていますが、その画面に使われているLEDは蛍光灯と比べて、眼の中に入ると散乱しやすく網膜に与える影響が大きい特徴を有しています。

 ですから、夜寝る前にスマートフォンを見ると、メラトニンが影響を受け、不眠になり、昼夜逆転を招く。この影響はパソコンのディスプレイも同じで、医師であり教育委員である立場から警鐘を鳴らしています。

「不妊治療」にできること / 南條 和也 産婦人科部長

 当院は、ほぼあらゆる不妊治療を行なっているのが強みです。メールや電話での不妊相談も受け付けています。不妊外来には、子どもを切望する方や一応検査をしてみようという方などそれぞれですが、当院に来る方は、主に前者が多く、さまざまな治療を覚悟されています。大半は、女性が1人で来て、夫婦一緒にというのは少ないです。年間200人ほどの新患のうち15%から20%は、排卵期に合わせ性交渉をする「タイミング療法」と並行し様々な検査をするうちに妊娠します。体外受精、顕微授精、凍結融解胚移植などの高度生殖医療もさほど難しいものではなく、県の助成金制度もあるため、「高度生殖医療」をされる方も増えてきました。それでも妊娠できる割合は、平均年齢の上昇もあり5割を切っています。不妊治療を2年、3年と続けるのは精神的にも辛く、途中で断念される方もあるため、メンタル面のサポートが、当院の今後の課題です。

 私は、研修医の時も大学院生の時も、指導医が宮内先生でした。不妊症治療を専門とする人生を歩むようになったのは、宮内先生という恩師との出会いがあったからです。


九州医事新報社ではライター(編集職)を募集しています

九州初の地下鉄駅直結タワー|Brillia Tower西新 来場予約受付中

九州医事新報社ブログ

読者アンケートにご協力ください

バングラデシュに看護学校を建てるプロジェクト

人体にも環境にも優しい天然素材で作られた枕で快適な眠りを。100%天然素材のラテックス枕NEMCA

暮らし継がれる家|三井ホーム

一般社団法人メディワーククリエイト

日本赤十字社

全国骨髄バンク推進連絡協議会

今月の1冊

編集担当者が毎月オススメの書籍を紹介していくコーナーです。

【今月の1冊, 今月の一冊】
イメージ:今月の1冊 - 88. AI vs. 教科書が読めない 子どもたち

Twitter


ページ上部へ戻る