広島中央保健生活協同組合生協さえき病院 福山 慎二 院長
― 開設されて満10年がたちました。
佐伯地域に有床診療所を作ろうと、複合的な医療機関を計画していたことがありました。その動きとは別に福島生協病院の建て替え計画があったため、福島生協病院のベッドを分割して分割移転しました。この地域で入院医療や高齢者の療養型医院のニーズに応えるという目的があります。
比較的広い地域から患者さんが集まってくるので、地域の医療ニーズにこたえるべきという案が出て、一般病床54床、療養病床60床に加え、歯科や通所リハビリを有するケアミックス病院としてオープンしました。
広い意味での療養を意識していますし、一般医療としては地域密着型の地域医療を目指しています。病院の特色としては生協が母体であることが大きな特徴でしょう。運営などは組合員の要望やニーズに応える形で決定しています。
病院の利用委員会などでは、組合員から見た病院の運営や医療のありかたについて意見をもらっています。ほかには組合員の方に、環境整備のボランティアや高齢者やがん患者さんの傾聴ボランティアなどもお願いしており、組合員ぬきでは当院は成り立ちません。
― 生協病院の魅力は。
(上写真)病院内に併設されたリハビリ室で、リハビリ中の車イスの患者さんに声をかける福山院長。(下)病院1階ロビーに設置された意見箱。「苦情や要望を投書することは一番身近な運営参加です」と呼びかけ、利用者の意見を積極的に取り入れようとしている。
組合員が所有、運営していることや、地域に根ざした大衆的な病院のありかたに魅力を感じて生協運動に関わるようになりました。
各科の専門家のなかで高度な医療技術を学ぶスタイルも必要ですが、そういった医師だけでは医療が成り立たない。車の両輪として、第一線に立つ医師が必要で、住民のみなさんからの医療ニーズ、地域のニーズを受け止める医療機関が必要だと思います。
経済的な格差の問題で受診できない方もいます。当院はそういった視点をはずしたくないので、差額ベッドも置いていません。
― 今後の展望は。
生協が開設した病院として基本路線は変える予定はありません。高度急性期医療ではニーズに応えられない面もありますが、地域の医療ニーズに応えるということと、リハビリを行って地域に帰してあげるという責任を担っていますので、今後もその点は責任をもってやり遂げたい。
療養病棟には一般の介護施設で診ることのできない、病気や障害を持った方が入院しています。そういう方を当院で受け止めて満足のいく環境作りを目指していきます。
医療のしくみがどんどん変わっているので、変化に目を配りながら患者さんに満足してもらう医療を提供したいですね。とくに、高齢者の方には、人生の最期に満足を提供するという意味での満足です。看取りだけではなく、人生最期の一定期間に当院で過ごした日々に満足感をもっていただきたいと思います。