寓話を1つ。
老婆がアインシュタインに言いました。
「あなたを有名にした特殊相対性理論というものを、私にも分かるように説明してください」
そこでアインシュタインは可能な限りやさしく、かみ砕いて教えたそうです。
それを聞いた老婆は深くうなずいて、それからというもの早足で歩くようになり、動作も喜劇王チャップリンみたいに早くなりました。
彼女は「物体の速度が光速に近づくほど時間経過が遅くなる」を、「速く動いたら長生きする」と理解したわけです。
教えるには限界があります。教えてもらうにも限界があります。この老婆は、「彼女なりに正しく理解した」ことに問題がありました。わからないままでいれば、フィルム映画を早回しするかのごとくカクカク動くことはなかったんです。
さて、この寓話の後日談。老婆があまりにも目まぐるしく動くため、家族が困って、どうにかしてくれとアインシュタインに申し出ました。
そこはさすがアインシュタイン。老婆にこう教えました。「物体の速度が光速に近づくほど質量が増加する」。
老婆の動きがぴたりと止まりました。「速く動いたら太る」と彼女は理解し、長生きよりも痩身を選んだわけです。
このようなことは多かれ少なかれ皆がやっていることで、それに気がつかないのは「その人なりに正しく理解している」からです。アインシュタインのつもりで懇切丁寧に教え、この老婆のように正しく理解している毎日です。