全国26都市で4月8日一斉に市民公開講座
福岡は天神エルガーラで
作家の阿川佐和子さんが内藤誠二九大教授と対談
一人の持ち時間は15分と20分。5人の講師が紹介されるたびに600人の参加者から拍手がわいた。それは礼儀というより高度な医療技術の話が分かりやすくて興味を引いたことへの拍手だった。
1912年(明治45年)に第1回目の日本泌尿器病学会総会=1928年に日本泌尿器科学会に改称=が開催されて今年で100年目。4月21日から24日までパシフィコ横浜で開催される学会総会に先駆け、4月8日に全国26都市で同日いっせいに「知って得する泌尿器科学市民公開講座」が開かれた。
福岡の会場は天神のエルガーラ。九大病院から4人、原三信病院から2人の医師が講師を担当し、「前立腺がんのロボット手術」(横溝晃)、「前立腺肥大症の薬物療法と低侵襲手術」(山口秋人)、「腎がんの腹控鏡手術と薬物治療」(立神勝則)、「夜間頻尿と尿失禁=薬物療法と手術療法」(武井実根雄)、「最新の泌尿器内視鏡検査法」(猪口淳一)を演題としてそれぞれ話した。
内容は一般市民に理解しやすく工夫されており、遠隔操作による「ロボット」手術や、前立腺肥大症のレーザー手術(PVP)の様子が動画でスクリーンに映し出され、会場から驚嘆の声があがる場面もあった。
代表世話人を務めた内藤誠二九大病院泌尿器科教授は学会の歴史を紹介する中で、100年前には千人に満たなかった会員数が今は7千8百人を超え、そのうち女性は378人(5㌫)いることや、さまざまなアンケートから「8割の人が泌尿器科を受診することに抵抗感がある」、「診療科目の中で泌尿器外科に好印象を持つ人は3・5㌫、泌尿器科で8・2㌫」、「泌尿器科は内科の中に含まれていると思っている人は半数近い」、「9割近くがPSA検査を知らない」、などと話し、泌尿器科に対する誤解やイメージの暗さを変えていく必要があると語った。
後半では作家の阿川佐和子さんが登場して内藤教授と対談、「泌尿器科の人気がないのは、歴史的に花柳界の病気という印象があるのでは?」などと話し、会場を何度も沸かせた。
阿川さんのファンだという40代の女性は、「講師の話はどれも分かりやすくて身近に感じました。動画にはびっくりで、まるで自分が内視鏡の先端になったような気持ちがした」と話していた。
会場入口では参加者に「泌尿器科とわたし」と題した体験手記受賞作品集が配られた。全国1447通の応募から選ばれた10作品を載せたもの。