九州大学病院がんセンター市民公開講座 がんとの向き合いかた 考えよう

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 九州大学病院がんセンターの市民公開講座が10月26日、福岡市中央区天神のレソラNTT夢天神ホールで開かれた。参加者数は136人だった。

 講師は、塩山善之九州国際重粒子線がん治療センター(サガハイマット)副センター長、宮部治恵NPO法人キャンサーサポート代表、田畑正久龍谷大学文学部真宗学科教授の3人。がんとの向きあい方や生き方を、それぞれの立場から話した。

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開会のあいさつをする石橋九州大学病院長。司会進行を清水祐紀子九大がんセンター助教が務めた。

 開会のあいさつで石橋達朗九州大学病院長は、同病院が平成20年から福岡県の都道府県がん診療連携拠点病院となり、昨年には九州で唯一、小児がん拠点病院にも指定され、九州一円のがん治療に力を注いでいると紹介、「今日のプログラムは、いろんな角度からがんに向き合ってみようと構成した。実りある内容を期待している」と述べた。

 最初のテーマは「重粒子線がん治療の現状と今後」。サガハイマットの塩山善之副センター長が、36枚のスライドと配布資料で、主ながん治療法を説明、放射線治療の長所と短所について触れたあと、重粒子線はがん細胞に対してより高い効果を示すが、極所治療のため、ひとつの部位に固まって存在する固形の「がん」に有効で、血液のがんや広範に転移したがん、胃や腸のがんも適応となりにくいと話した。さらに、国内に重粒子線がん治療施設は5か所あり、2013年に治療を受けたのは1682人で、およそ3割が前立腺がん、頭頚部12%、肺11%、肝臓10%、骨軟部9%の順で、先進医療のため、照射回数に関係なく314万円かかり(診察や検査、投薬などは公的医療保険適応)、今後は保険適応に向けた取り組みも必要となると語った。

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熱く語る宮部治恵さん(上)。座長は外須美夫九州大学病院麻酔科蘇生科教授が務めた。

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講演する塩山善之氏(上)と座長の中西洋一九州大学病院呼吸器科教授。

 続いて、2002年に子宮頸がんを発症し、2005年には直腸がんになって余命1年と言われた宮部治恵さんが、「がんになっても笑うて生くばい!」と題し、「海や山やゴルフが好きで、健康にだけは自信があった自分が、大量の出血で救急搬送され、子宮頸がんと診断された」と、がんとの出会いを語り、治療や不安との闘いの中で、リレー・フォー・ライフや子供へのがん教育、がんサロンの開催など、がんを通じて誰かの役に立つ活動に、生きる目的を見つけたと話した。さらに、「仲のよかった友達が事故で突然亡くなった。その知らせを聞いて、人はいつ死ぬかわからない、明日が必ず来るとは限らないと悟った。それを友達は身をもって教えてくれた。今は1分1秒がとても大切」と述べ、生きるとはその積み重ねだと会場に訴えかけた。

 最後の特別講演で、佐藤第二病院(大分県宇佐市)の院長でもある田畑正久龍谷大教授は、「仏の智慧は老病死の苦しみをどう超えさせるか」と題して講演、「どんなに患者さんのがんを治しても、最後には亡くなられる。

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仏の智慧について語る田畑正久龍谷大教授と座長の石橋達朗九州大学病院院長。左は閉会のあいさつをする水元一博九州大学病院がんセンター長

死は避けられないことに気がついた。人間を救うのは医療だろうか」と切り出し、「世間的な知恵とは知識のことで、表面的なもの。他方、仏教の智慧は、そのものの背後に宿されている意味を感得すること。私の教わった医学教育は、知識をたくさん学ぶことで、22歳から外科医をやりながら仏教を学んで来た」としたうえで、「医学では、老いる、病む、死などというものはあってはならないから、元気な状態に戻そうとする。しかし、戻せなくなってからどうするかという問題はほとんど手つかず」と指摘した。そして「日本人の死亡場所の8割は病院。死の現場の8割を病院が囲い込みながら、そこでなされる医療が単なる救命や延命だけで、本当に患者さんのためになっているのだろうかという問題提起が少しずつされ始めている」などと、およそ1時間話し、「毎日という短い時間の中に命が完結している。それをくり返しながら日々を輝かせ、最後は仏様にお任せしたらいい。それを体全体でわかることが智慧」と結んだ。


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