3病院の力を結集 一体化の成果はいかに
1975年三重県立大学(現:三重大学)医学部卒業、同放射線医学教室入局。米ジョンズホプキンス大学医学部放射線核医学科留学、三重大学医学部放射線医学教室教授、同附属病院長などを経て、2013年から現職。
公立1病院と民間2病院が統合。2012年4月に「桑名市総合医療センター」が生まれた。2018年5月、それぞれの場所での診療を終え、新病院に機能を集約。本格的な一体化の動きが進んでいる。
―開院後の状況はいかがでしょうか。
2018年5月1日に入院棟と外来棟がオープンしました。まず、計321床が稼働。そして11月、新病院に隣接する7階建ての旧病院の一部、改修棟の工事が終わって、ここに79床を開設。全400床の整備が完了しました。
引き続き旧病院を取り壊して、駐車場の工事に着手します。すべての工程が終了するのは、2019年度中の予定です。
新病院は2018年6月からフル稼働しています。7月以降の病床稼働率は90%を超え、今後も同程度の割合で推移していくと見込んでいます。
外来の患者数は1日平均900人から1000人程度です。今後も1000人前後を維持すると見ています。診療単価は外来、入院ともに、目標の数字を上回っています。
統合後の経営状況は芳しくありませんでしたが、新病院の開設をきっかけに上向き、10月には黒字に転換。この流れを保っていきたいと思っています。
―診療面で力を入れているのはどんな点でしょうか。
二次医療圏である桑員地区の中核病院として、高度急性期、急性期を担っています。小児救急も含めた救急医療、周産期医療などに力を入れています。
当院が最も重視しているのはがん診療です。これまで桑名市には大規模な病院がなく、治療装置の整備の遅れや、専門分野に特化した医師の不足など、ハード面、ソフト面のいずれも十分な体制が整っていませんでした。
このため、患者さんは治療のために県内であれば四日市市、あるいは名古屋市にまで足を運ばざるを得なかったのです。
そこで新病院では、桑名市で初めて、IMRT(強度変調放射線治療)が可能な装置を導入。念願の放射線治療を開始しました。
自分の住む街で、標準的ながん医療を受ける。この当たり前のことが実現する環境が、ようやく整ったのではないでしょうか。
また、増加する在留外国人への対応策として、スペイン語、ポルトガル語を話せる医療通訳者を配置しました。1カ月当たり300人を超える患者さんに対応しています。
そのうち1人は母国で臨床心理士を務めていた経歴をもっており、患者さんの心理面のケアにも力を発揮しています。
―統合の効果をどのように捉えていますか。
三つの病院が統合したわけですから、当センターには、より多様な人材が集まることになりました。
それまで異なる方針で医療に携わっていた者たちが一緒に働く仲間となる。そのことに不安がなかったわけではありません。
フタを開けてみると、非常に円滑なチームワークを発揮してくれました。体制の厚みが増したことで仕事量が軽減され、余裕が生まれたことが一因だと考えています。
「建物が新しい」という強みは、医師を確保する上でも大きく貢献しています。開設前の常勤医は、3施設を合わせておよそ80人でした。現在、110人程度に増えました。三重大学も医師の派遣に前向きです。
また、患者さんの感謝の声も職員の励みになっているようです。以前は「どうしてこの治療を受けられないのか」といった意見をいただくことも少なからずありました。
今は「よそに行かなくてよかった。ありがとう」と受診時に声をかけてくださる患者さんもいます。地域住民の喜びを感じながら、私たちは日々の診療に当たっているのです。
地方独立行政法人 桑名市総合医療センター
三重県桑名市寿町3-11
TEL:0594-22-1211(代表)
https://www.kuwanacmc.or.jp/