一貫性高める新築移転予防、治療、リハビリまで
2018年5月、「鹿児島厚生連病院」がリニューアルオープンした。別施設だった「健康管理センター」を院内に移し、予防から治療までの一貫した体制を確立。さらに慢性期の患者の社会復帰も支援し、住民の健康をさまざまな側面で支えている。
◎健診と診療を一体化した新病院
2015年から建て替えを進めていた「鹿児島厚生連病院」が2018年5月7日、新病院での診療を開始した。地上8階建ての建物内にはこれまで別の場所にあった「健康管理センター」を一体化。検診と診療の場の距離を近くすることで、それぞれの連携を強化し、サービス向上を目指している。
新施設では病院と健康管理センターのエントランスを1階、外来診察室を2階、健康管理センター受付を3階に配置。低い階数に利用者の多い窓口を集めることで、利用者の負担軽減を図った。新病院に設置した手術室は3室。将来の導入に備え、ロボット支援下手術ができる設備も用意した。
健康診断と人間ドックに毎日、合計で160人もの人が訪れるという「健康管理センター」は、利用者の意見を反映させた構造に変更した。もともと病院が独自に設定するレディースデーに受診する女性が多く「健診中に男性の目が気になる」という声が多数あがっていた。
そこで新施設では健診エリアと休憩スペースを、男性用と女性用に分けた。検査機器には県内で唯一「乳腺エコー」を導入した。
さらに「特定健診」以外に「超音波検査」「巡回型肺がんCT検診」といった検査のためにCT車やエコー車をそろえた。県内でも鹿児島厚生連病院だけの設備だという。
◎得意とする肝臓・腎臓の領域も拡充
「鹿児島厚生連病院」は肝臓と腎臓の専門病院。各疾患の最後の砦(とりで)、すなわちどんな重症患者でも治療する病院を目指す。
「臓器は直接見ることができないので、病気に気がつかず重症化してから来院するケースがある」と前之原茂穂院長。そのため定期的な健診や予防の啓発に力を入れていくという。
健診や診察で異常が見つかった人にはNST(栄養サポートチーム)による食事療法、生活習慣改善のための糖尿病教育入院を実施。さらに肝臓や腎臓、心臓などの内臓不全が進んでしまった患者にはリハビリテーションを提供し、むくみや運動機能の低下が起こる心不全患者に対しては専用のリハビリチームを組んで治療に当たっている。
設備面では急性期の腎不全に対応できる透析器を新しく取り入れた。これにより手術中や救急の患者にも透析を施せる。
また九州大学病院の医師とのホットラインを設け、劇症肝炎などの肝移植が必要なケースにも対処。前之原院長は「肝臓や腎臓は急性期を過ぎると通院や透析が必要な慢性期が長くなります。治療方法が変わるたびに転院していると患者の負担になってしまう。当院は一貫して治療する設備と人員を確保しています」と語る。
◎3本柱で鹿児島県の中核病院に
健診から治療、患者の社会復帰までをサポートする病院として、地域住民の健康への意識を変える取り組みが始まっている。例えば、病気や治療法などの最新情報を提供する「健康塾」、最新のがん治療について学ぶ勉強会などを開催中だ。
また鹿児島県には「甑島」や「奄美大島」、「種子島」など数多くの離島がある。それぞれの島にスタッフを派遣し、健診業務を実施することで鹿児島県内の医療を広く支えている。
在宅医療のニーズも高まっている。前之原院長は「鹿児島県でも通院困難者や独り身世帯が増えています。地域の高齢者支援施設と協力して患者さんの意思を尊重した治療を提案する必要があります。予防・治療・リハビリテーションの三つを軸にしながら、地域社会に目を向けていきたい」と話している。
鹿児島厚生連病院
鹿児島市与次郎1-13-1
TEL:099-252-2228(代表)
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