4月 教授就任 夢を実現する医局に
「医局員が抱く夢を実現するためのサポーターに、私はなりたいのです」。4月に就任した山口修教授は、医局にどんな新しい風を吹かせようとしているのか。
―医局の印象は。
近年は医局が臓器別に再編されることが増えてきましたが、当医局は旧ナンバー制を残し、第二内科として、循環器、呼吸器、腎高血圧を診療しています。一見、関連がないように見えますが、どれも「全身を診る」必要があるという点で共通しています。
4月に教授に就任し、愛媛県にやってきました。着任してまず感じたのは、医局内の風通しの良さ。診療は専門に特化し、グループごとに行います。しかし、週に一度の「医局会」で全員が顔を合わせるので、壁を感じることはありませんね。
関連病院と大学内の医局員一人ひとりと面談しました。そうすると、「将来こうしたい」と、多くの人が明確に将来の夢を持っていることが分かりました。もちろん私も夢を持って愛媛県にやってきました。それぞれの夢を共有し、かなえられる講座にしたい。そんな思いから「みんなで夢を分かちあえる講座」という教室運営目標を掲げています。
―新たな取り組みを始める予定は。
歴代の教授が築き上げてきた取り組みや文化をたどり、感じた上で、さらに良くしていく方法を模索しようと思います。
私は大学院時代から約18年間、心不全の発症とアポトーシスによる心筋細胞死、オートファジーとの関連をテーマにした研究を行っています。生命予後が不良な心不全は、分子メカニズムが解明されておらず、ここ数十年で治療法に大きな変化はありません。心筋細胞内の分子機構を解明し、新たな治療法に結びつけることを目標にしています。
研究とは、多くの人が携わり、持ち寄った研究成果を積み上げていくことで少しずつ大きくなる「山」のようなもの。山が高くなるほどに視野が広がり、治療法など新たな可能性が広がります。持ち寄った研究成果が小さなものに思えても、それがのちになって、とてつもなく大きな発見であったことが分かることも少なくありません。だからこそ、新しい症例に出会ったら、論文に残して共有することが重要なのです。
臨床だけに気持ちが傾くと、ともすれば自分の技術を磨くことだけにとらわれかねません。医局員には、臨床現場で出てくる「クリニカルクエスチョン(疑問)」を見いだし、解明しようとする姿勢を大事にしてほしいと思います。
―今後力を入れることは。
当院は四国で唯一の、植込型補助人工心臓装着手術の実施施設です。今後は関連病院や各地域の中核病院に周知を徹底し、より多くの人が治癒法の一つとして補助人工心臓植込み手術を選択できる環境を築いていきたいと考えています。
現在、愛媛大学医学部医学科学生の約4割を女性が占めています。環境の整備が不十分であるがゆえに、働きたくても働けないということになれば医療崩壊につながりかねません。当医局では、檜垣實男前教授が早くから女性医師の働きやすさを重視しており、医局内には女性専用の休憩室が設けられています。ワークシェアを推進し、短時間勤務にも対応するなど、女性医師がより働きやすい環境整備も急務として進めるべきだと感じています。
愛媛県内では、呼吸器と循環器の専門医が不足しており、特に不足している南予・東予地域の病院に週に一度医師を派遣し、診療支援を行っています。今後は若い世代に向けて第二内科の魅力を積極的に発信し、後進の育成に努めます。リサーチマインドを持って、全身を診ることのできる医師を一人でも多く育成することが、私たちの責務であると思うのです。
愛媛大学大学院医学系研究科循環器・呼吸器・腎高血圧内科学講座
愛媛県東温市志津川
TEL:089-964-5111(代表)
https://www.m.ehime-u.ac.jp/ school/int.med2/