愛媛大学大学院医学系研究科 地域小児・周産期学講座 松原 圭一 教授

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新たな取り組み続々と 広がる周産期医療教育

【まつばら・けいいち】
1988年愛媛大学医学部卒業、1994年同大学院医学研究科博士課程修了(医学博士)。米ウィスコンシン大学マディソン校客員講師、愛媛大学医学部附属病院周産母子センター准教授などを経て、2017年から現職。

 「小児救急医療の充実」と「安全な周産期管理」を目的として2014年に開設された「地域小児・周産期講座」。地域が抱える課題と課題解決に向けて進めている人材確保の策や、始まった新たな取り組みとは。松原圭一教授に聞いた。

―講座の概要を。

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 小児科医不足が原因で愛媛県の小児救急医療は十分な機能を果たせず、また周産期においても母体死亡が続くなど、小児と周産期を取り巻く環境は厳しい状況にありました。

 これらの問題に対して継続して戦略的な取り組みを実施し、改善していくために「地域小児・周産期学講座」が開設されました。現在は小児科医2人、産婦人科医2人の4人が在籍しており、私は周産期部門の教授を務めています。

―地域における分娩件数や産科医の現状を教えてください。

 宇和島市を含む南予や島しょ部、今治市周辺の地域では若い人が流出し、分娩件数は減少しています。

 一方、新居浜市を含む東予の一部地域では若い世代が流入傾向にあり、分娩件数が維持されています。しかし、産科医の数は変わらないため、医師不足は引き続き課題です。

 その改善策として、当講座では、例えば若い医師が学会で発表する機会を積極的に設けたり、「産婦人科ではこんな医療ができる」といった明確なイメージを伝えてモチベーションの向上を図ったりしています。産婦人科に興味を持ってもらうことで、人材の確保に努めています。

―「周産期シミュレーション教育」の取り組みが進んでいます。

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 医療者を対象にした小児救急における「新生児蘇生法(NCPR)トレーニング」は2015年から実施しています。同時に周産期救急に対する対応力の強化も、県の周産期医療を考える上で重要な課題となっていました。

 というのも、近年は高齢妊娠が増えたことなどが影響し、妊娠高血圧症候群の患者数や帝王切開件数、癒着胎盤や弛緩出血といった周産期における緊急性の高い合併症の発生頻度が増えていると感じます。「何かが起こったときに対応策を学ぶ」という教育は、なかなか成り立たなくなっているのです。

 そこで2017年、当講座が中心となり周産期医療に関わる方を対象にした「周産期シミュレーション教育」を導入しました。愛媛県で初めての試みです。

 その中心となるコースが産科救急を含む周産期を総合的に学ぶ「ALSO( Advanced Life Support in Obstetrics)」です。

 妊娠初期の合併症から出産前のリスク評価、難産、分娩後の大出血、妊婦の蘇生法。これらの対処や知識を2日間にわたり、講義やマネキンを用いた実地訓練を通じて学びます。

 同年、「J-CIMELS(日本母体救命システム普及協議会)」の講習会も開きました。産科救急措置に特化した内容で、受講は半日。参加しやすいこともあって、全国的にも広がっています。

 産科医、救急医、助産師、看護師、医学生など、講習会の参加者は多様です。アメリカの家庭医が始めたALSOは、参加者の中に家庭医の方も多く含んでいるのが特徴です。

 この12月に、同じく寄附講座の「救急航空医療学講座」と共同で、消防士の方を対象にした周産期シミュレーション教育「消防士産科救急教育」を開催。

 直接分娩の現場に関わらなくても、分娩施設に到着する前に、血圧や体温、脈拍のほかに胎児や出血の状態を受け入れ施設に伝えることができれば、妊婦に対する対応はもっとスムーズになるでしょう。

 こうした取り組みを継続的に広げていくことによって、愛媛県の小児・周産期医療の維持、そして発展の一翼を担っていきたいと考えています。

愛媛大学大学院医学系研究科 地域小児・周産期学講座
愛媛県東温市志津川
TEL:089-964-5111(代表)
https://www.m.ehime-u.ac.jp/


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