目指すのは地域と共生する病院
前身の「夜間診療所・外科昭和医院」時代から数えて、今年で80年。2016年には新築移転を果たし、現在の名称に変更した。「時代の変化に対応し、地域に根差した病院組織を作っていかなければならない」と語る猶本良夫病院長の構想とは。
―開院80年。これまでの歩みと診療の特徴は。
川崎学園の創設者である川﨑祐宣初代病院長が、「病院は患者さんのためにある」という理念のもと、1938年に「夜間診療所・外科昭和医院」を開業し、以来80年にわたり、岡山市中心部で地域に密着した医療を提供してきました。救急と外科、整形外科を中心に発展を遂げましたが、現在は救急医療、高度専門医療、リハビリテーションを診療の3本柱に据えています。
1960年ごろには岡山市内近郊で発生した交通事故・災害事故による患者の約8割を当院に搬送していたそうですが、医療環境の変化にうまく対応できなかったため、4、5年前には救急車による搬送件数が年間約1700台にまで減少。先行きが見えず、2010年には80人もの看護師が退職する事態になりました。その後、人員確保に奮闘しましたが、翌年の入職者は8人。当院は存続の危機を迎えたのです。
しかしありがたいことに職員たちは相手を思い、尊敬し合って仕事をしてくれていました。職場の雰囲気の良さが口コミで広まって求職者が増加。病院合同説明会に出展すると対応しきれないほどの人が集まるようになりました。現在、看護師の新卒入職者数は毎年およそ80人。初期臨床研修医も25人ほど在籍しています。救急車の受け入れ台数も2017年度には4495台まで回復しました。
2016年6月には手術支援ロボット「ダビンチXi」を岡山県で初めて導入。今年度からロボットを使用した手術の保険適用範囲が拡大されたことを受け、これまでの前立腺がんと腎がんに加え、胃がん、直腸がんでも運用を開始します。
リハビリでは必要に応じて手術前から手術直後と早期のリハビリ開始を推奨しています。新築移転の際にはPET―CTを導入し、がん診療初期のステージ判定や治療の効果の確認で活用しています。
―大事にしていることは。
どの医療専門職も、家族と一緒にいるよりも長い時間を職場である病院で過ごします。その職場が良い環境でなければ、生きる意味を見失うかもしれない。だからこそ「あいさつの一つであっても大事にし、充実した良い職場を作りましょう」と、日頃から職員に言っています。
医療職の中で最も多い看護師に対しては、定年的に満足度調査を実施。課題を抽出して、なるべく早く対策を取るようにしています。現在は看護師だけですが、今後はそのほかの医療職にも満足度調査の範囲を拡大していく予定です。
新病院になって1年半。今後は医師の確保と診療科の整備を行い、今より多くの患者、さらには重症度の高い方に対応できる病院を作る必要があるでしょう。この地域における当院の存在感を発揮し、さらなる高みを目指していきます。
―今後の展望をお聞かせください。
高齢化率が年々上昇している岡山市。地域に出て患者のニーズをくみ取り、認知症ケアや在宅支援に反映していくことも当院の責務だと考えています。
川崎医科大学は、1970年の開学以来、これまでに約4300人の卒業生を送り出し、彼らは、岡山県内はもとより全国各地の地域医療の第一線で活躍しています。当院は、川崎医科大学の第二の附属病院として、最先端の高度医療の提供とともに、救急医療をはじめとした地域に密着した医療、すべては患者さんのためにあるという病院の原点の思いを実践。時代のニーズに合った総合医をはじめとする全人的医療を提供できる良き医療人の育成を目指していきます。
川崎医科大学総合医療センター
岡山市北区中山下2-6-1
TEL:086-225-2111(代表)
https://g.kawasaki-m.ac.jp/