JCHO玉造病院 池田 登 院長

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人工関節手術1万例突破 これまでとこれから

【いけだ・のぼる】 金光学園高校卒業(岡山)1980 京都大学医学部卒業 同整形外科学教室入局 1995 京都大学医学部整形外科助手 1999 玉造厚生年金病院(現:地域医療機能推進機構玉造病院)整形外科部長 2013 同副院長 2016 同院長

 2017年8月、人工関節の手術件数が1万件の大台に到達した独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)玉造病院。同院が支持され続けた理由は何なのか。

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◎歩んできた道のり

 当院の設立は、終戦直後の1945年11月です。玉造整形外科療養所として始まり、その後、内科を併設して玉造厚生年金病院となりました。2014年に現在の病院名となっています。

 一貫して整形外科を主軸に病院が運営されてきた点が特徴です。当初は中四国地方に「整形外科」を標榜する医療機関がなかったため、骨折をはじめとする整形外科疾患の患者さんが広い地域から来院したそうです。

 1950年代から1970年代に、発育性(先天性)股関節脱臼やペルテス病の患者さんを数多く診療。それらのカルテやレントゲン写真は、すべて大事に保管されています。

 この二つの疾患は変形性股関節症の主な原因です。患者さんの中で、後に変形性股関節症に進展して、人工股関節の手術を希望して来院される人もいます。幼少時のレントゲン写真をお見せすると、感激されることがしばしばあります。

 当院で人工関節手術を開始したのは1973年です。第1例目から診療録とレントゲン写真を保管しており、後に各症例に番号を付けて診療内容を登録する「人工関節登録管理システム」を導入して一元管理を行ってきました。今回、手術登録患者数が1万件に達したので、記念式典を行いました。

◎人工関節手術について

 現在の人工股関節の原点ともいえるチャーンレー式人工股関節置換術がわが国で初めて行われたのは、当院で第1例目が実施される少し前の1970年ころのこと。当院で開始した当時、骨盤側と大腿骨側ともに置換する人工股関節置換術は国内では限られた施設でしか行われていませんでした。

 人工膝関節は1975年に1例目を施行。初期の手術件数は股関節のほうが膝関節より多かったのですが、平成以後は逆転し、ここ数年は1対2の割合で膝関節が多くなっています。

 膝の手術が増えた理由は急速に進展した高齢化です。当院で手術を受ける患者の平均年齢は股関節で68歳、膝関節で74歳。膝に関しては4人に1人が80歳以上です。人工膝関節が必要になる方の疾患は主に加齢が原因で発症する変形性膝関節症なので、患者数が股関節に比べて多くなっているのです。

 2005年には人工関節センターを開設。外来診察から入院、手術、リハビリテーション、退院後のフォローアップまで一貫した診療体制を構築することができ、手術を受ける患者さんにより充実した治療を提供できるようになりました。

 昨年8月までの人工関節手術件数は膝が6685件、股が3100件。そのほか、肩が83件、肘が75件、指が42件、足が16件と続いています。

◎整形外科の現状と強み

 現在、当院には整形外科医が11人在籍、うち10人が整形外科専門医です。

 当院の医師は関節や脊椎など、ある程度の専門性を持って診療に当たりながら、整形外科全般の広い範囲の知識と診療技術を兼ね備え、特定の分野へ偏ることなく対応できることが強みです。

 整形外科で扱う疾患は変性疾患と外傷性疾患とに大別できます。人口は減少しているにもかかわらず、変性疾患は高齢化とともに増加傾向にあります。そのため人工関節の適応患者数は減少することがありません。

 ただ、関節を患っている患者さんすべてに人工関節の手術を行うわけではありません。まずは減量や運動療法の指導を中心とした保存的治療が優先されます。

 手術的治療を選択する場合には、どんな手術法にすべきかを事前にしっかり議論して最善の方法を選択。人工関節以外の関節温存手術にも積極的に取り組んでいます。

◎人工関節手術の特徴は

 人工関節手術は3室ある無菌室で実施。インプラントの設置に関しては「美しい術後X線像は短期成績だけではなく長期成績も良好である」との考えから、「美しいX線像」を目指した手術を心がけています。

 この言葉は主観的に聞こえるかもしれませんが、整形外科医にはよく響く言葉です。例えば、股関節では変形した股関節が失った正常のバイオメカニクスを、なるべく元の解剖学的状態に戻し、脱臼しにくい角度にインプラントが設置された画像のこと、膝関節では変形により偏位した下肢の荷重軸を正常に近い位置まで戻し、正常膝に近いキネマティクスで屈伸できるようインプラントが設置された画像のことを言っています。

 ほかに重要視しているのは事前の内科的な全身状態のチェックです。手術を受ける患者さんは高齢の方の割合が高いのでたいてい何らかの内科疾患を有しています。特に糖尿病や高血圧などは術前にしっかりしたコントロールが必要です。合併症が危惧される場合や重度の心疾患が認められた場合には、手術を見合わせることもあります。

 手術日が決まれば、事前にCT撮影を行い、骨の形態を調べて機種と設置位置をシミュレーションします。人工関節の機種に関して股関節でも膝関節でも一つに限定せず、多数のメーカーの機種を使用。事前に綿密な術前計画を立て、最も適合する機種を選択して手術に臨みます。

 このシミュレーションが手術の成否を決めると言っても過言ではありません。実際にメスが入るまでに手術の半分以上が終わっていると、私たちは考えています。

 いざ手術となれば丁寧な手技を心がけ、通常の初回手術なら2時間程度で終了。術後は2日目からリハビリを開始。2週間程度は急性期の人工関節病棟で、その後はリハビリテーション病棟に移り、術後約6週間で退院するケースが当院では一般的です。

 当院は回復期リハビリテーション病棟も有しており、しっかりリハビリができる当院のクリニカルパスは、特に高齢の方には適しているのではないかと考えています。

◎手術の進化と機種の進歩

 人工関節置換術はすべての整形外科手術の中でも、かなり完成された手術と言えます。適応、手技、後療法、術後のADLから人工関節の耐用年数まで、細かいこともわかってきました。

 近年の最も大きな革新は、2000年から使用できるようになった高度架橋ポリエチレンを使った人工関節です。従来のポリエチレンにガンマ線や電子線を照射し、熱処理を加えることで耐摩耗性が向上。当院でもいち早く導入し、以後、ポリエチレンの摩耗が原因でゆるみを生じた症例はありません。

 最近では、高度架橋ポリエチレンにビタミンEを浸透させたり、添加したりした製品も登場。さらなる耐磨耗性の向上が期待されています。

◎これからの課題

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 使用する機種が進化し、手術技術が向上しても、人工関節手術を終えればそれで終わりではありません。20年、30年という長期的なケアが必要です。不具合が生じれば、再手術になることもあります。患者さんには術後の経過が良くても必ず定期的に検診を受けるよう伝えています。

 患者さんの機能評価も、かつての医療者主体の評価法から患者さん主体の評価法に重点が変わりつつあります。患者さんの満足度こそが何より大切という考えが浸透してきています。

 その究極の到達点が股関節や膝関節そのものを意識することなく生活できるまで回復すること。私たちは、患者さん一人ひとりがそこにたどり着けるよう、現在有している技術を未来へと継承し、長いスパンでずっと頼りにされる医療機関を目指したいと思っています。

独立行政法人地域医療機能推進機構 玉造病院
松江市玉湯町湯町1-2
TEL:0852-62-1560(代表)
https://tamatsukuri.jcho.go.jp/


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