琉球大学大学院医学研究科麻酔科学講座 垣花 学 教授

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教室の基盤は「教育」多様性で領域を網羅する

【かきのはな・まなぶ】 1991 琉球大学医学部卒業 同麻酔科入局 1996 米カリフォルニア大学サンディエゴ校 1998 沖縄県立宮古病院 2000 琉球大学医学部附属病院麻酔科助手 2009 米マサチューセッツ総合病院2014 琉球大学大学院医学研究科麻酔科学講座教授

◎指導医に求めるもの

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 私が医学生だったころの沖縄県内の麻酔科医は10人にも満たなかったのではないかと思います。

 5期生として琉球大学を卒業した1991年当時には20人ほどになり、現在は70人強。県内各地に医局員を派遣できるようになりました。まだ全域で充足しているとは言えませんが名護、中部、那覇、宮古、八重山の五つの県立病院や主要な病院には麻酔科医が常駐しています。

 連携の基盤がありますので、当院を基幹施設として関連病院と構成する専門研修プログラムについても、地域医療に混乱をきたすことなく新制度に移行できるのではないかと思います。

 少ない人員でスタートしながらも、琉球大学医学部附属病院が1984年に開院して以来、麻酔科が大きな事故をいっさい起こしていないのは誇れることだと思います。教育体制の整備に、熱心に取り組み続けてきた結果でしょう。基本方針は「教育のための臨床」であり、「教育のための研究」です。

 私がセンター長を務める琉球大学医学部附属病院臨床研修センターでは地域の医療機関が相互に協力して初期臨床研修プログラムを構築する「RyuМIC(リューミック)」を展開。実習生や後期研修医も含めて、マンツーマンを重視した指導が特徴です。

 積極的に経験を積ませて、いい点は伸ばし、改善すべき点はどんどん指摘します。もちろん最初からすべてをうまくできる人はいませんから、指導医がしっかりとカバーします。

 「患者さんにもしものことがあったら」と、研修医に任せることができないのなら、指導医のレベルに達していないというのが私のスタンス。そこまで責任を負うのが指導する立場にいる人間のあるべき姿だと思いますし、そんな医療者が働いていることが、いい人材が集まってくる条件でもあると考えます。

 1984年に開講し奥田佳朗初代教授、須加原一博第2代教授ともに多様性を尊重し、風通しのいい教室づくりを進めてきました。3代目である私もその雰囲気に引かれて入局した1人です。何もかもできるスーパーマンを目指すのではなく、一人一人の長所を集めて麻酔科のすべてを網羅する。そんな思いで教室を運営しています。

◎反省が進歩につながる

 当教室は伝統的に朝のカンファレンスに力を入れてきました。その日に予定している手術麻酔の計画や予測される問題点などを担当医がプレゼンテーション。医局内で情報を共有することで計画に不備がないかをチェックします。難易度の高い症例があれば、いつでもバックアップできるよう準備を整えます。

 当院では心臓と肝臓の移植手術を除いて、ほぼあらゆる種類の手術が可能。主には心臓、消化器全般です。当科には沖縄県で唯一、日本心臓血管麻酔学会認定の心臓血管麻酔専門医が勤務しています。4人の専門医がおり研修施設に認定されているなど、資格取得を積極的に奨励しています。

 集中治療室は麻酔科が管理しています。重症患者の経過をずっと観察する中で大切にしているのは「逆算」の視点をもつこと。オペでは麻酔科医が何をどこまでしておくべきか、麻酔の内容によって状態がどのように変化していくのかを見すえて行動しています。刻々と変化する状況に合わせて術中に人工透析をスタートするなど、24時間、柔軟に対応できるのが強みです。

 私たちが管理する患者さんは新生児から高齢者まで、疾患の範囲は頭のてっぺんから足の爪の先まで。年齢にも病気にも境界線はなく、複数の疾患が重なっている患者さんも少なくありません。

 私が教授に就任して以降、毎週金曜日の朝に集合し、その週の全症例を振り返ります。特に術後に状態が悪化したり、合併症を起こしたり、あるいは同じ手術であっても予後が異なったりした患者さんについて原因を探り、今後の対策に役立てています。

 専門分野をもつ医師に必要と言われる「プロフェッショナルオートノミー」が意味するものは、反省を繰り返しながら進歩していくことだと思います。技術と知識はもちろん、自分自身の人間性や道徳観を見直して改善していく能力です。

 70代の患者さんが当たり前の時代になり、90代も増えています。TAVI(経カテーテル的大動脈弁植え込み術)の実施例も伸びており、麻酔科医がかかわる医療の幅は広がっている。

 近年は、以前のように「術中に万が一の事態が起こらないための麻酔管理」から、がんなら「再発や転移のリスクを低減する麻酔管理」といった研究が注目されるなど、より「先」に着目した医療へとシフトしつつあります。症例を体系化しデータを蓄積して、術後管理を専門とするチームの編成も考えていきたいと思っています。

◎ 10年後の医療を守る

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 国内有数の実績を誇るペインクリニック科を擁するNTT東日本関東病院。そこで研修した医局員が、当教室のペインクリニックの中心を担っています。

 いくつもの医療機関で治療してきたが痛みが軽減しない、難治性疼痛の患者さんが中心です。痛みのバックグラウンドに何があるのか、探り当てるのは容易ではありません。原因が肉体的なものか精神的なものか、これまでの治療の効果は少しでもあったのか、なかったのか。他の診療科と連携し、可能性を一つ一つ時間をかけて特定していきます。中には薬の飲みすぎが痛みを引き起こしており、種類を整理することで改善されることもあります。

手術麻酔は急性期の治療。ペインクリニックは慢性期の治療。緩和医療は治る、治らないにかかわらず「がんと診断された瞬間」に始まる―。昔はここまで麻酔科の領域が広がるとは予想していませんでした。

 ですから、より多くの若く、新しい力が必要です。琉球大学が輩出してきた麻酔科医は、まだ引退の年齢を迎えていません。今後も増加を続けていきます。しかし10年後には、1期生の引退が始まります。地域医療を守るためにも、引き続き人材の獲得に注力します。

琉球大学大学院医学研究科麻酔科学講座
沖縄県中頭郡西原町上原207
TEL:098-895-3331(代表)
http://ryukyuanesth.com/


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