島根大学医学部Acute Care Surgery 講座 渡部 広明 教授

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8月運用開始高度外傷センターの展望

【わたなべ・ひろあき】 1994 島根医科大学(島根大学)医学部卒業 第一外科(現:消化器・総合外科)入局 2015 地方独立行政法人りんくう総合医療センター大阪府泉州救命救急センター副所長 Acute Care Surgeryセンター長兼外傷外科部長2016 島根大学医学部Acute Care Surgery講座教授 高度外傷センター長

 不慮の事故を含む外因死は全国で約4万人。島根大学医学部の渡部広明教授は「外傷死の約4割は、少しの手技で救命できたはずの『防ぎえた外傷死』」だと語る。こうした現状を打破するために島根大学に設置された、日本で初めての高度外傷センターの特徴と今後の展開を聞いた。

-「Acute Care Surgery 講座」開設までの歩みを教えてください。

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 救急医療体制には、初期診療後に専門診療科の医師に来てもらい治療を施す「ER型救急」と、救命センター内の医師によってほとんどの治療が完結する「自己完結独立型救命救急センター」の二つがあります。

 「自己完結独立型救命救急センター」は、毎日外傷の患者が来るかも定かでない中で、昼夜一定数の医師や看護師を配置しなければならず、医療経済上の問題から普及が進んでいないのが現状。それにより日本の救急医療のほとんどは「ER型救急」の体制です。

 しかし、その体制には、初期診療後に各診療科の医師や手術室の手配に時間がかかり、重症外傷の患者への蘇生的手術が迅速にできないといったデメリットも存在しています。

 そこで2016年1月、外傷外科と救急外科、術後集中治療といった外傷教育を専門にした講座「Acute Care Surgery 講座」を日本で初めて開設しました。

 本学の学生は、シミュレーターを用いて、呼吸状態の悪化や血圧の低下、出血といった場合の対応などのトレーニングを積んだ後、指導医と共に実際に臨床に立ち、患者さんの診療をします。

 救急医学、その中でも外傷に関する知識やノウハウをしっかり学ぶことができることが当講座の強みです。

-8月、高度外傷センターを開設しました。

 日本全国で見ると年間約4万人が不慮の事故を含む外因死で亡くなっています。約10年前のデータによると、外傷死の約4割は、針を一本刺す、点滴をする、気管挿管チューブを入れるなどといったわずかなことで救命できたはずの「防げた外傷死」なのです。

 われわれは、中等症および重症外傷患者に迅速に適切な医療を提供し、救命率向上を図る目的で、2017年8月、高度外傷センターを開設しました。

 建物は3階建て。1階には日本で8台目、国公立大学では初めてとなる「ハイブリッドER」を設置しました。ハイブリッドERの室内は手術室用の空調。患者さんは一切動くことなく初期診療からCTの検査、手術、血液造影、カテーテル治療を受けることができます。

 通常、患者が搬入されてからCT検査を開始するまでの平均時間は、移動の時間を含めて30〜40分程度。ハイブリッドERでは、平均8分22秒。出血部分をCTで確認できればそのまま手術することもできます。

 移動による時間のロスや患者さんの身体的負担を最大限に軽減しながら、迅速に適切な処置を施すことができる。従来では助けることのできなかった重症患者を助けることができる、優れた救命ユニットです。

 ハイブリッドERでは1人しか治療できません。しかしハイブリッドERが使用中であっても最大3人まで受け入れ可能な外傷初療室を同フロアに設置。こちらも手術室空調ですので、初期診療後、その場での手術も可能です。

 救命を第一に診療していますが、患者さんのクオリティー・オブ・ライフ(QOL)も忘れてはいません。

 救命診療を進めながら、脳神経外科や整形外科、歯科口腔外科、形成外科などにも受傷当日から診療に介入してもらい、良好な機能予後と外傷後遺障害の軽減のために取り組んでいます。

-災害時を見据えた機能も充実しているそうですね。

 外傷診療の延長線上に災害医療がある。そういった意味では災害医療は高度外傷センターが担当すべきフィールドです。

 当医局は高度外傷センターの2階にあります。通常は医局として利用していますが、災害時は、DMATの災害対策本部として機能します。スタッフの全員がDMAT隊員で、医局内には情報端末を置き、DMATや被災状況を常にモニタリングできる体制を作っています。

 隣接する救命救急センターと高度外傷センターをつなぐ4m幅のホールには、災害時、最大30人程度の中等症〜重症患者を受け入れることができます。

 最上階の3階には手術室が二つあります。ここは、搬入された患者さんの中でも、比較的全身状態が安定している患者さんの手術に使用しています。高度外傷センターでは、人員を充足させれば同時に最大6人の中等症〜重症外傷患者の手術ができるのです。

-救命救急センターと高度外傷センターのすみ分けを教えてください。

 救命救急センターに隣接する形で高度外傷センターを開設しました。

 通常の診療では、患者さんの症候から診察、問診、診断という内科学的なアプローチをします。

 これに対し、高度外傷センターでは診断や原因よりも蘇生・生命の維持に重きを置き、外傷診療のA(気道)、B(呼吸)、C(循環)、D(中枢神経)を確保し、全身状態を安定させることから治療は始まります。

 このように救急患者を受け入れ、救命するという目的は同じであっても、診療の方針や手法は全く異なります。診療科目の専門性が重視される現代において、救急医療も専門ごとに分化しても良いと思うのです。

-島根県に高度外傷センターを置く理由とは。

 島根県全域人口70万人を対象に全県からの消防の受け入れに応じる形で高度外傷センターを運営しています。

 当院がある出雲市の人口17万人を対象にすると、重症外傷患者数も少なく、センターの人件費がかさみ、医療経済上良いことではありません。そこで、全県から一定数以上の外傷患者をここに集約する形で運営しています。

 数多くの症例を経験することで医療スタッフの熟練度が上がり、また診療の標準化により診療のスピードアップにもつながるでしょう。

-今後の展開を教えてください。

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 現在、2018年度の医療計画の改定に向けて、行政と共に島根県における外傷診療機能のあり方について討議を重ねています。

 高度外傷センターは大学がつくった施設ですが、今後は「島根県のための高度外傷センター」として、全県の重症外傷治療を包括するような医療政策になっていくことでしょう。

 行政のみでなく、周辺の医療機関とも連携を図りながら、出雲市という2次医療圏に限らず、島根県における重症外傷の最後の砦(とりで)としての体制を構築していきます。

島根大学医学部Acute Care Surgery講座
島根県出雲市塩冶町89-1
TEL:0853-23-2111(代表)
http://www.shimane-u-acs.jp/


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