医療法人貴生会 和泉中央病院 生谷 昌弘 理事長・院長

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「生きやすい」社会の実現のために

【いくたに・まさひろ】 大阪教育大学附属平野校舎卒業 1992 大阪市立大学医学部卒業 京都大学医学部精神神経科医員 2001 医療法人貴生会和泉中央病院院長 2016 同理事長

 医療法人貴生会は、和泉中央病院とサテライトクリニックを中心に、訪問看護ステーションなど八つの付属事業を運営している。

 理念に「地域の憩いの舎(やかた)」を掲げる生谷昌弘理事長に、和泉中央病院が地域で果たしている役割や取り組みについて聞いた。

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◎主体性を尊重した治療

 1974(昭和49)年の開設以来、当法人では精神疾患を有している人が、いかに良い人生を過ごせるかを第一に考えてきました。

 精神疾患を有している人は独特なこだわり、思考の偏りがあります。そのために生きにくさを感じたり、社会に順応するのが難しかったりするのです。

 私たちは患者さんの主体性を尊重しながら、より生きやすくするには、どうすれば良いかを常に患者さんと共に考え、治療にあたっています。

 人によって症状はさまざまです。また精神疾患の症状は変動要因が大きく、日々変化していきます。最近の精神科診断においては、健常から病気までを連続したものとしてとらえ、症状の量的差異で病気を考える傾向があります。病気かそうではないかという「白か黒か」の判断ではなく、今、患者さんが、病気のどの地点にいるのかを見極めることが必要なのです。治療方法を誤らないように、患者さん個々人の症状をみて慎重に判断する必要があります。

◎ニーズに応える

 精神科というと長期入院のイメージがあると思います。しかし、今は他科と同様に在院日数を短縮し、在宅復帰を促進しています。

 精神疾患は、原則慢性疾患であり時に増悪します。しかし、増悪時に迅速で適切な対応さえできれば在宅生活を維持できます。

 「一人暮らしがしたい」「仕事ができるようになりたい」「一日ゆったりと過ごせるようになりたい」など患者さんのニーズはさまざまです。

 私たちは法人内に訪問看護ステーションやホームヘルプ事業所、グループホームなどがありますし、就労支援もしています。

 患者さんのニーズに応じたサービスが提供できているのではないでしょうか。

◎リスペクトを

 精神科医療では、患者さんの生きてきた歴史や生活背景を重視した診療が求められます。病名だけで全てをひとくくりにしてしまうのは危険です。例えば統合失調症の人が服を着て歩き、生活しているわけではなく、あくまでその人が統合失調症に罹患しているのです。患者自身の尊厳を認める、他者としての存在を認める、つまりリスペクトすることが必要です。

 「あるがままのその人を受け入れる」ことが、精神医療の第一歩になります。

◎多元的な治療

 近年は脳科学の進歩が目覚ましく、統合失調症などの診断、治療にも神経画像が役立っています。生物学的アプローチ、精神病理学的アプローチなど、多角度から患者さんを診る必要があります。薬物治療が著効する患者さんがいれば、精神療法や環境調整が有効な患者さんもいるのです。

 以前は精神病理学と生物学的精神医学は相反するイメージがありました。しかし、現在では互いの長所を生かした多元的な治療がトレンドとなっています。

◎偏見をなくすために

 現代は、インターネットなどで精神疾患や薬について簡単に調べられます。しかし、中には誤った情報、偏った情報もあります。

 脳科学が進んだとはいえ精神科医療はまだ、よくわかっていない部分が多いのが現状です。間違った解釈や理解が先行して、偏見を生んでいます。病気そのものだけでなく、こうした偏見によっても、患者さんが生きにくくなっているという現実があります。

 精神疾患に対する根強い偏見をなくし、患者さんが生きやすい社会にするために、われわれ精神科医は正しい情報、知識を社会に発信しなければなりません。

 その一環として市民向けの講演をし、地域の方を招いての「いこい祭」を毎年開いています。

◎生きるヒント

 例えば起床時に「今日は一日どうやって生きていこうか」と考えたとします。それでもどうしたらよいか分からなければ、デイケアなどに来てもらえば何かヒントがあるかもしれません。そこから一日を元気に過ごせる糸口がつかめるかもしれないのです。

 精神疾患は少しのことがきっかけで症状が改善することがありますし、逆に悪化することもあります。健常な人からみると、とても些細(ささい)なことですが、本人にとっては重大なことなのです。

 外からは分かりにくい部分なので、分かってあげる場所と人が必要です。当法人の施設を活用してもらい、生きるヒントをつかんでもらえたら幸いです。

◎就労支援

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 最近、リワークという言葉がよく使われています。私は就労支援とは単なる就職支援ではないと思っています。社会や生産活動に関わることで患者さんの生活に幅を持たせ、何らかの変化が期待できると考えています。

 就労支援というと、ひたすら単純作業をしたり、みんなで仲良くパンを作ったりするようなイメージがあるかもしれません。しかし、パンを作るなら子どもから大人まで安心して食べられる、体に優しい、最高のパン作りを目指すべきです。

 そのために皆で話し合い、作業を進める、その過程にこそ意味があります。質の高いものに触れることで脳が活性化し、脳が変わります。そうすると病状が安定し、治療効果向上が期待できます。

 精神疾患を有する人が安心して暮らせる環境作り、必要な医療サービスを迅速に提供できるチームとして機能すること、それが私たちの役割だと考えています。

医療法人貴生会 和泉中央病院
大阪府和泉市箕形町6-9-8
TEL:0725-54-1380
http://kiseikai-izumi.jp/hospital/


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