田舎の精神科病院の奮闘 ―西諸県郡地域における当院の役割―

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特定医療法人浩然会 内村病院 内村 大介 院長

内村 大介(うちむら だいすけ) 1989 宮崎医科大学医学部卒業 1996 九州大学大学院医学系研究科博士課程生理系専攻卒業 1996 宮崎医科大学医学部精神医学教室助手 2005 特定医療法人浩然会内村病院院長
■役職:宮崎大学医学部医学臨床教授、宮崎県精神科病院協会理事、宮崎県医師会理事、西諸医師会副会長、小林准看護学校校長
■資格:精神保健指定医、日本精神科病院協会認定指導医、日本精神神経学会精神科専門医兼指導医、精神保健判定医、精神保健審判員

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 西諸地区の自殺率が高い現状

 都道府県別自殺率で宮崎県は常に全国でワースト10位以内であり、そして当西諸地域は県内ワーストです。自殺の要因にうつ病などの精神疾患、健康問題、経済問題等が挙げられます。当地域は、命に関わる大病や外傷で、多大な労力と費用を払って遠隔地に出向くことが多くなります。さらには、パチンコ店が大変多く営業しており、パチンコなどで生活が困窮する方も多勢います。また、この地域のアルコール消費量は非常に多く、最近の調査で自殺との間に高い相関関係があることも分かりました。現代社会は、情報のグローバル化やスノビズムが定着しており、人間関係は希薄になる一方です。これは当地域も同様で、先に挙げたことなどを理由に貧窮した人はスノビズムの下で絶望感を持ちやすいと思われます。様々な要因が絡み合いやすいため、結果として当地域の自殺率は高いのかもしれません。

 精神疾患及び精神障害への偏見

 貧窮や健康問題、対人問題などが影響してうつ病やアルコール関連障害、その他の精神疾患にかかると、当地域に根強く残る偏見に晒されます。これを防ごうと、抱えた心の病を隠して我慢し、自殺を選ぶ場合も少なくないのかもしれません。

 地域に住んでいる方々の様々な支えになり、そして精神疾患や精神障害者への偏見をなくしたいとの思いで、平成6年から職員の意識改革及び病院の改革を始めました。田舎の精神科病院の職員は、患者さん及び患者さんの身内、同僚や部下、上司と日常生活の場が同じになる場合があり、勤務時のモラルを高くしておかないと職員の日常生活に悪影響が及びかねません。職員には、病を抱えた身内に対するように、より真摯に、優しく、一生懸命に患者さんに接するように指導しています。そして、4年前より、地域に住まれる方と患者さん・職員・病院との交流を深め、患者さんの社会復帰リハビリテーションを目的とする「ふれあい祭」を作業療法士を中心として職員総出で開催しております。様々な演目、模擬店、バザー、職員のポスター発表などを行ない、祭りのフィナーレには花火を打ち上げています。昨年の参加者は総勢500人を超え大盛況でした。また、職員のポスター発表にも多くの方が興味を示してくださいました。

よろず相談室

 当院の医師は患者さんの病気だけではなく、一人の人間としての患者さんに向き合って診療しています。患者さんとその周囲の人を視野に入れて治療を組み立て、患者さんの周囲の人も含めて様々な問題や悩みに対応しています。さしずめ当院の診療風景は「よろず相談室」といった感じで、診療場面では必ずしも医学に裏打ちされたアカデミックな医療の話だけではなく、病気や治療とは無関係の話や世間話を交えた様々なストーリーが展開されます。

顔の見える連携

 西諸地域ではお互いの顔が見える医療機関連携が確立されています。先般、県の予算で行った「うつ病における身体科医師―精神科医師連携(G―P連携)事業」も年間で70症例を超す実績を上げました。またBPSDを有する認知症症例の紹介も増える一方ですが、当院の認知症サポート医が所属する認知症支援ネットワーク会と自治体が協力して宮崎県で最初に認知症ケアパスを作成・配布し、現在は認知症初期集中支援チーム設置の最中です。その他の精神科疾患での相談や紹介も数多くあり、行政の方と一緒に対応・診療を行なうこともしばしばです。

 逆に、精神科の患者さんの身体科受診もスムーズに行なわれており、精神科の患者さんという理由で断られることはほとんどありません。自治体立病院を含めた当地域の各医療機関が密に連携し合い、地域全体で総合病院として機能しています。

 深刻な医療従事者不足

 当地域も医療従事者が不足しており、特に医師や薬剤師不足は深刻です。国が医師と薬剤師を登録制にして派遣してくれないかと真剣に思う程です。 看護師も決して潤沢ではなく、当院でも規定数維持に苦労しています。しかしながら、最近若い看護師や男性看護師、正看護師の割合が急増しており、職場環境も非常に活発になっております。

 また、精神保健福祉士、作業療法士、臨床心理士、介護福祉士、管理栄養士等のコメディカルもなかなか集まりませんが、現在は、志の高い少数精鋭が疾患別クリニカルパス作成、生活療法や栄養指導の評価、ケースワーキング、電子カルテでの職種間情報共有化と建設的運用等で非常に重要な役割を担っています。

愛される病院へ

 「地域に住まれる方々の支えになり、地域の皆様に愛される病院になりたい」と奮闘しています。自由で活発な雰囲気が根付き、疑心暗鬼にならず良い意味で言いたいことを言い合って前向きなけんかができる、職種間の垣根も低く、真面目に一生懸命に取り組む者や正直者が馬鹿をみない、居心地の良い職場になってきています。勉強熱心な職員も増え、外部で学んだ知識を病院にフィードバックしてくれる自慢の職員が増えています。これからも職員一丸となって職員一人一人の思いを患者さんに還元し、これまで以上に地域の方に信頼される病院にしていかなければならないと思っております。


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