第109回日本消化器病学会 九州支部例会
消化器病学のNew Frontierを求めて
5月19日(金)、20日(土)の2日間、徳島市の阿波観光ホテルで「第17回日本NO学会学術集会」が開催される。
学会長を務める徳島大学大学院循環器内科学分野の佐田政隆教授に学会について、また教室での取り組みなどを聞いた。
―第17回日本NO学会学術集会の会長を務めます。まずNOとは何かを教えてください。
一酸化窒素(NO)は血管内で産出され、血管を拡張させる働きがあることが分かっています。1998年には、内皮依存性血管弛緩因子としてNOの役割を解明した研究に対し、ノーベル医学生理学賞が授与されています。また近年の研究で、NOは神経、消化管などにも作用することが分かってきました。
分かりやすいNOの活用事例としてED治療薬「バイアグラ」が挙げられます。NOが血管内で拡張することで血液がスムーズに陰茎内の血管をめぐって勃起するのです。
―学術集会の見どころは何でしょう。
今回の学術集会のテーマは「NO研究 温故知新」です。NO研究の原点に戻って今後の発展につながるような大会にしたいですね。
特別講演は大阪大学大学院工学研究科の菊地和也先生、浜松医科大学細胞分子解剖学の瀬藤光利先生、広島大学原爆放射線医科学研究所の東幸仁先生にお願いしています。みなさんNOを原点として基礎研究、臨床研究をしてこられた方々です。研究成果を発表していただくことで、参加者のみなさんの刺激になればと期待しています。
シンポジウムでは最先端の血管イメージングで実際に血管が拡張される様子を見る「次世代を照らす血管機能イメージング」や、今話題の腸内細菌とNOの関係について3人が発表する「腸内細菌、NOとヘルスサイエンス」などを予定しています。その他にも多彩なプログラムを用意しています。(別表)
―会長としての意気込みを。
NO学会には基礎研究者も臨床研究者も所属しています。基礎と臨床が融合している数少ない学会だと言えるでしょう。
基礎の先生はNOが臨床にどう応用できるかを知りたいと思うでしょうし、われわれ臨床家は基礎の技術を臨床に応用したいと考えています。
異分野の先生が一同に会して情報発信をします。参加者の方には自分の研究に応用できる情報を見つけていただきたいと思います。
―循環器内科学教室の最近の取り組みについて教えてください。
私たちは昨年3月に、肥満によって、インスリン抵抗性が発症するメカニズムを解明しました。
肥満の人や肥満のマウスは脂肪細胞が拡大、やがて変性を起こします。すると脂肪細胞の遊離DNAの断片が、本来は細菌由来のDNA断片を認識するToll様受容体9(TLR9)によって認識され、免疫担当細胞の一つであるマクロファージを活性化させるのです。
この結果は脂肪組織の慢性炎症を引き起こすことを示唆し、新たな治療戦略の開発につながるのではないかと期待されています。
また外科と共同で大動脈弁狭窄症に対してカテーテルを使っての弁置換術などもしています。
今月23日には市民公開講座「徳島大学病院循環器内科フォーラム2017〜不整脈から心臓と脳を守る〜」を開催します。
市民のみなさんに不整脈についての正しい知識と予防法、治療法について知ってもらうのが目的です。
心房細動の薬や不整脈のカテーテル治療などについて各講師が分かりやすく説明します。
―循環器内科のやりがいについて。
循環器内科は内科であってもカテーテルなどを用いた外科的な対応ができるのが魅力の一つです。瀕死の状態で担ぎ込まれた患者さんでも手術をすれば元通り元気な状態で退院できるのです。
昔は狭心症の手術はバイパス手術をするしかありませんでした。しかし現在では、ほとんどの場合、カテーテル治療で対応可能です。不整脈も昔はメスで切っていましたが、今は高周波で焼いています。心臓に穴が空いている人でもカテーテルを使って穴をふさぐことが可能なんです。
今から26、27年前に担当した患者さんが、いまだに私のことを「命の恩人」と呼んでくれ、たまにあいさつに来てくれます。そんな患者さんからの声を聞くと、この仕事について良かったと思いますね。
―趣味は何ですか。
趣味はマラソンで先日(3月26日)の徳島マラソンにも参加しました。今回で9回連続の出場です。ずっと4時間20分台で4時間の壁を越えられませんでしたが、昨年は3時間52分、今年は3時間50分でした。30分もタイムを短縮できた理由は、フォームの改善と練習量を増やしたことです。
東京でプロのコーチにフォームの指導を仰ぎました。練習量はひと月100km走っていたのを300kmにまで増やしました。
―学生時代から陸上をしていたのですか。
学生時代は柔道一筋でした。当院の永廣信治病院長は高校の柔道部の先輩です。永廣先生は柔道の達人で、医師にならなかったらオリンピックに出ていただろうと言われています。
「七帝柔道記」という小説をご存じですか。旧帝大の柔道部を舞台にした作品なのですが、この中に私も「ベテラン寝技師・佐田政隆」として登場しているんですよ。
大学時代は勉強よりも柔道に熱中していました。他の友人はテニスサークルなどで青春を謳歌(おうか)していました。それに比べると汗臭い青春時代でしたね(笑)
5月19日(金)
・特別講演1
「NO研究から開始した分子イメージングプローブ開発」
演者/菊地和也(大阪大学大学院工学研究科)
・シンポジウム1
「次世代を照らす血管機能イメージング」
・シンポジウム2
「活性イオウとNO:レドックスシグナル研究の新展開」
・特別講演2
「顕微鏡技術と質量分析技術の融合」
演者/瀬藤光利(浜松医科大学 細胞分子解剖学)
5月20日(土)
・特別講演3「血管機能測定の現況と未来」
演者/東 幸仁
(広島大学原爆放射線医科学研究所/広島大学未
来医療センター)
・シンポジウム3「腸内細菌、NOとヘルスサイエンス」
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