ここでしか育めない"徳島ブランド"確立へ
「地方は地方のやり方で、都市部とは違う教室の魅力を確立できると確信しています」と語る島田光生教授。徳島県における肝臓がんの現状と、「徳島ブランド」構築を目指す医局運営について聞いた。
―徳島県の現状はいかがでしょうか。
疾患別の死亡率では、全国的にも肝臓がんを含めた肝疾患、糖尿病を要因とする割合が高いのが特徴です。
肝炎にはウイルス性のものと糖尿病や肥満といった生活習慣病を因子とするものがあります。徳島県でもウイルス性が多いのですが、近年は後者が急速に増えています。糖尿病の患者さんの死因の1位はがんで、トップは肝臓がんです。徳島県は公共交通機関が限られており、車での移動が中心のため運動量が不足していることなどが指摘されています。
仕事の後に飲酒する文化が根強く受け継がれていることも関係していると考えられます。もともと糖尿病になりやすい食生活であること、そこに飲酒の習慣が加わることで肝硬変、肝不全、肝臓がんといった肝疾患の罹患者数が増加しているのではないかと言われています。
―糖尿病と肝疾患の関連は。
メタボリックシンドロームの因子があると、肝臓や膵臓の機能が低下します。全身の代謝が悪くなり、増悪すると高血圧や糖尿病を発症するのです。
肝臓はよく「沈黙の臓器」と言われるように、機能が低下しても自覚症状として現れにくいのが特徴です。体に異変を感じて、検査で肝臓がんを発見した時には手術できないほど進行していた。そんなケースも少なくないのです。
糖尿病と肝疾患に深い関わりがあることは医療者の中でずいぶん浸透してきたものの、実際の診療では十分に生かされていないのではないかと感じます。
糖尿病の患者さんの管理は、血糖値だけでなく肝機能の数値にもしっかりと目を向けておく必要があります。その徹底が、肝臓がんによる死亡率を低下させる一助になるのではないかと考えています。
―「徳島県肝疾患診療連携拠点病院」としての取り組みは。
肝疾患相談室を設け、外科と内科の医師、看護師が電話相談に応じ、必要な場合は医療機関での受診につなげています。
厚生労働省が定める肝炎医療コーディネーターの育成と活動の促進のほか、ICTを用いて山間部などの診療所に向けた肝疾患に関する講義も開いています。
各自治体や企業での出張講演や、無料採血による肝疾患ウイルス検査は、相談室の発足当初から力を入れている取り組みです。拠点病院の中でも、こうした活動は当院ならではのものでしょう。
―目指す医局の姿について教えてください。
人口約70万人の徳島県には、この土地に適した医局の運営や人材育成の方法があると考えます。それらを追求し、「徳島ブランド」として確立したいと思っています。
患者さんや症例、医局員の数は都市部の病院に劣るかもしれません。でも、規模が小さいことはデメリットではない。むしろ、行政や連携病院と顔の見える関係をつくりやすいことは大きな強みです。
医局では主治医制を廃止し、チームで患者さんを診ています。何かあればチームに連絡が入り、互いにカバーします。みんなで分け合うという考え方が基本的な方針です。こうして働きやすい環境を整え、今年も2人の女性が入局するなど、少しずつ「徳島ブランド」が知られるようになってきたようです。
外科は非常にやりがいあふれる診療科です。妊娠や出産といったライフイベントを経ながら着実にキャリアアップできる。そんなロールモデルを生むのも当教室の役割です。
徳島大学大学院医歯薬学研究部 消化器・移植外科学
徳島市蔵本町2-50-1
TEL:088-631-3111(代表)
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