岡山済生会総合病院 糸島 達也 名誉院長・内科診療顧問

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本当に必要な場所へ医師を

【いとしま・たつや】 1964 岡山大学医学部卒業 岡山済生会総合病院でインターン 1965岡山大学医学部第一内科入局 1969 岡山大学医学部附属病院中央検査部助手 1974 同第一内科助手 1981 同講師 1989 岡山済生会総合病院内科主任医長 2003同院長2010 同名誉院長 岡山医師研修支援機構理事長 2012 岡山県地域医療支援センター長

 医師の偏在解消、地域の未来を担う人材の育成。NPО法人岡山医師研修支援機構の理事長であり、岡山県地域医療支援センター長も務める岡山済生会総合病院の糸島達也名誉院長・内科診療顧問は、独自の視点から問題解決の糸口を見つけようとしている。

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◎医師が集まる条件

 人口1000人当たりの医師数が最も多いのは、どの国であるかご存知でしょうか。

 146カ国を対象にしたWHO(世界保健機関)の2010年の調査データを基にすると、最多はオイルマネーで潤うカタールで7.7人。2位がモナコ7.2人、次いでキューバ6.7人、スペイン4.9人と続きます。

 先進国に目を向けてみると、ロシア4.3人、ドイツ3.9人、イタリア3.8人、フランス3.2人、イギリス2.8人、アメリカ2.5人。日本は2.3人で55位でした。

 世界の平均は1.8人。例えばインドやスーダンといった国はそれぞれ0.7人、0.3人と、経済的に豊かでない国ほど、医師の数が少ない傾向にあることがわかります。医師数は単純に人口に比例するのではなく、GDP(国内総生産)と深い相関関係にあるのです。

 日本国内に置き換えてみても、東京や大阪、福岡など、GDPが大きい地域には多くの医師が集まっています。さらに細かく言えば、医師数は病院の収益と密接な関わりがあります。

 このように、私がセンター長を務める岡山県地域医療支援センターでは、世界、日本、そして岡山という視点から、医師数と人口、GDPの関係に着目した調査と考察をしました。医師数の地域差や、経済的な豊かさとの関係を明らかにすることで、優先的に支援すべき医療機関の把握、必要数の推測などにつながると考えたためです。

 岡山県地域医療支援センターは、2012年に設立されました。

 地域医療に関わる機関が連携し、県内のどこに住んでいても保健・医療・福祉・介護サービスを効率的に受けられる体制を充実させる。医療従事者の就労環境の整備などを進め、医療の不足している地域を支援し、地域偏在を解消する。そして、質の高い教育指導のための環境づくりをサポートし、医療従事者のキャリア形成を支援する。この3点を基本方針として活動しています。

◎健全な競争が生まれた

 岡山県は全国と比較しても、医師の総数は多い地域であると言えます。

 問題は岡山市や倉敷市には十分すぎるほどの医師がいるものの、それ以外の地域では少ないことです。特に20〜30代の若い医師は岡山市や倉敷市に集まり、それ以外の地域には、なかなかやってきません。

 加えて岡山県の医師は高齢化が進んでおり、毎年60人ほどだった引退者の数が、今後は倍になるとも言われています。

 こうした流れを食い止めようと、岡山県は2009年、岡山大学と広島大学の各医学部医学科に、県内の高校出身者を対象にした「地域枠」を設置しました。

 この枠で入学した学生は卒業後、岡山県内の大学病院などで2年間の初期臨床研修、県内の医師が不足している地域で5年の勤務、専門医の育成プログラムを展開する医療機関で2年の研修と、計9年の指定業務に就くことが義務付けられています。

 岡山大学の地域医療人材育成講座、広島大学の地域医療システム学講座、NPO法人岡山医師研修支援機構、自治医科大学卒業生、そして当センターが連携し、各機関に所属する医師たちが地域枠の学生と卒業生をサポート。地域医療体験実習、地域医療に関するセミナーの開催などもあり、地域枠の学生と卒業生のキャリアを手厚くバックアップします。

 また、岡山県から月額20万円、6年間総額で1440万円の奨学金の貸与があります。前述の9年間の義務を果たすことで全額免除されます。

 そんな地域枠出身の医師を、どの地域や医療機関に配置するべきかを客観的に判断するために、当センターでは県内全病院に対する調査と評価をしています。

 配置希望の有無のほか、①地域の医師不足②地域の受け入れ体制③教育指導体制④地域で果たしている役割⑤救急車の受け入れ状況⑥待遇⑦専門医の施設認定状況⑧経営状況の各項目について質問し、配点に基づいて点数化します。配置希望があり、合計得点の高い医療機関から、赴任してもらうというわけです。

 この試みによって健全な競争が生まれ、各医療機関の医療レベルは向上し、待遇は大きく改善されてきていると思います。ただ待っているだけでは医師を確保することはできない。魅力ある職場にするには、自らが動かなければダメだという意識の変革をもたらしているようです。評価項目は今後も見直しを重ね、医療機関がよりレベルアップするための指標にしていく予定です。

 この4月には、いよいよ地域枠1期生が医療機関で働き始めます。ここに至るまでの準備は、2013年から毎年「地域医療を担う医師を地域で育てるためのワークショップ」を開くことで進めてきました。

 第1回は「卒後の身分と処遇」「キャリアプランと派遣する医療機関の条件」、第2回は「派遣する医療機関の条件」、第3回は「医師のライフイベント」「ローテーション」「突然の休職(病気など)」。

 そして4回目の昨年は「医師は専門医資格にどう向き合うか」でした。活発な討論をすることで、私たちが直面している課題を真剣に考え、また、若い医師を将来にわたって見守る心づもりが固まったのではないかと思います。

◎強固な関係性

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 一方、180の医療関連機関で構成するNPO法人岡山医師研修支援機構の活動については、私が2010年に理事長に就任して以降の7年間の活動を踏まえ、次の展開への構想を練っているところです。

 年に1回開いてきた病院合同説明会を中心としたイベント「マッチングプラザ」に加えて、病院見学に特化したプロジェクトをスタートさせようと計画しています。医療機関へのアンケートでもこうした取り組みへの要望が多かったこともあり、スムーズに見学先への就業につながる仕組みができたらと思っています。

 本機構の最大の成果としては、中小病院や在宅クリニックの院長、看護協会、行政、大学、法曹、マスコミなど多様な立場の方々が集まって意見を交わした地域医療部会の活動でしょう。強固な関係性を築くことができましたし、みな厳しい現状は認識しつつも、どの方からも未来に対して悲観的な意見は聞かれません。さまざまな県を訪れる中で確信が強まっていきましたが、岡山県ほど、しっかりと互いに話をできる環境はないのではないかと自負しています。

社会福祉法人 恩賜財団 済生会 支部岡山県済生会 岡山済生会総合病院
岡山市北区国体町2-25
TEL:086-252-2211(代表)
http://www.okayamasaiseikai.or.jp/

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