4月15日・16日岡山市で「日本在宅医学会地域フォーラム」開催
大会長としての思いは
岡山市内を中心に約200人の在宅療養を支える「ももたろう往診クリニック」。小森栄作院長は、4月15日(土)、16日(日)に岡山市内で開く「日本在宅医学会第2回地域フォーラム」で、大会長を務める。フォーラムの狙いなどを聞いた。
―フォーラムの概要を教えてください。
日本在宅医学会は「在宅医学を確立しよう」という呼びかけに多くの医師が賛同し、1994年にスタート。在宅医学をけん引する学会として活動を進めてきました。2012年に一般社団法人化し、現在、会員数は約1700人です。
今年6月には名古屋市で全国規模の「第29回日本在宅医学会大会」、つまり全国大会が開かれます。
昨年から、全国大会に先駆けて、地域フォーラムを持ち回りで行うことになりました。1回目の昨年は福井市。今年は岡山が会場となり、私が大会長を務めることになりました。
地域フォーラムでは、演題を募集して発表する全国大会と違って、演題発表は予定していません。全国大会ではできない企画や地域の特色を生かした企画など新しいことを試みています。
ほぼ1年前から準備を進めてきました。昨年は約600人の参加がありましたので、今年は、それ以上の来場を目指しています。
―みどころなどは。
今回のテーマは「みんなで支える在宅医療〜多職種協働で地域力を高めよう〜」としました。
在宅医療を支えるためには、多職種の関わりが大事です。プログラム自体もどんな職種の方であっても役に立つような内容を心掛けました。医師や看護師に限らず理学療法士やソーシャルワーカー、薬剤師、ケアマネジャーなど、幅広い職種の人に参加してほしいと思っています。
基調講演の講師は、IT業界でも注目を集めているサイボウズ社の青野慶久代表取締役社長です。青野社長は、ご自身が育児休暇を取得するなど話題を呼んだ方で、私も、同社の働き方改革に興味がありました。
プレミアムフライデーがスタートするなど、働き方について考える機会が多くなっていますが、医療福祉業界は特に介護職の離職率が高く、人材確保に苦労しています。この講演が介護事業に関わっている方にヒントになるのでは、と期待しています。
もちろん、グループウェアを使って、効率的に仕事を進める工夫についても話が聞けるのではないかと思います。
シンポジウムは、在宅に関わるさまざまな職種というつながりで企画しました。摂食嚥下(えんげ)に関わる歯科医、在宅療養をさらに広げて街作りから考えている会社、おむつフィッターという資格で排泄全般に関わる情報発信をする団体の方、そして亡くなった方の遺品や自宅を整理する遺品整理士の方、などいろんな角度からそれぞれの立場で話をしてくださいます。
在宅医療に日々関わっているかたの明日からの仕事にすぐに役立つようなテーマを中心に考えています。フォーラムを通して、在宅に関わるみんなの知識力、技術力を底上げできればと思っています。
―クリニックについて教えてください。
2010年4月に、訪問診療に特化したクリニックを開設しました。
呼吸器外科の専門医として長年、病院に勤務してきましたが、術後、自宅に戻りたいと願う患者さんの受け皿がないと感じていました。患者さんの
「家に帰って過ごしたい」という最後の願いを、支えたいと思います。
現在、施設へ出向いての診療もありますが、多くは自宅への訪問診療です。
神経難病、がんの終末期など、患者さんの疾患もさまざまですし、高齢世帯や独居が増えているのも最近の傾向です。
在宅の現場では、多職種の人間が関わりながら、患者さんや家族を支えます。はじめは、「治すことを目的としている医療」に長年関わってきたため、「支えること」を目的とするアプローチに切り替えることに戸惑うこともありました。今はその双方の視点を持って患者さんを支えられたらと思っています。