医療法人 貝塚病院 院長 川口信三
庄司哲也理事長から聞いた再建の苦労話を2013年1月号に載せた。そのとき貝塚病院に残った医師の1人が川口信三医師(当時)だった。「自分はあちこち動くタイプではないから」と言って笑った。
私は、柳川で開業している父親が忙しく働き、患者から信頼されている姿を見て、自然と医師を目指すようになりました。柳川の医院は兄が継いでいます。
平成24年10月に院長になって、まず手がけたのは挨拶の徹底でした。
病院の表と裏の出入り口2か所に毎朝1人ずつ交代で立ってもらい、挨拶を始めました。初めは恥ずかしがったり、嫌々ながらやっていましたが、徐々に抵抗がなくなりました。顔を合わせれば挨拶をすることに、当院を訪れた方々から「挨拶されると元気が伝わって気持ちいい」と言われるようになりました。今は部署ごとの研究会やTQM活動なども進めています。
26年度の診療報酬改定で現場がどう変わるか情報を集めているところです。幸いにも当院は在宅診療に早くから取り組んでいますので、強みにな
―院長として訴えたいこと。
外来、入院はもちろん訪問看護も訪問診療もできますし、必要な患者さんは大学などの大きな病院にも紹介します。医療に関わることならどんなことでも気軽に相談してほしい。
―サ高住『香住ケ丘・杜の家』を建設中ですね。
当院関連法人が建設し、当院が全面的にバックアップします。高齢化が進む中で在宅医療の受け皿として必要な施設でしょうね。予防を中心とした余生の送り方としての選択肢の一つです。診療所も併設しますが、周辺地域の方を診るわけではありません。
―医師として大切なことは。
私自身『病気を診る前に人を診よ』ということを信念としています。人としてちゃんと診なさいという意味です。疾患やデータだけに関心を示す医師も多く、ここはなか
―病気だけ診る医師と、人として見る医師の違いは?
一番は医師としての姿勢と教育された環境なんでしょうけどね。スペシャリストであっても、トータルで診られるホームドクター的な考え方の医師と、興味があるところしか診ない医師がいます。専門以外の病気が関わってくると解らないふりをして、他の病院に聞いてくださいというような医師です。
1人の人間にはいろんな病気がくっついていることもありますから、私はできるだけ患者さんからいろいろ話を聞くようにしています。
患者さんを「上から目線」で対応しますと、相手の言葉をさえぎってしまい、言いたいことや症状も聞けません。できるだけ話を聞くことが大
それで私の外来はどうしても長くなってしまうので、特に午後から来られる方は話好きの人が集まっているんです。午前中は予約と新患で忙しくて時間的にタイトですからね。
自分のこと以外もいろいろ話をして帰って行く人の中には、薬で治すというよりも、おしゃべりして聞いてもらうだけで満足して帰る人が結構いるんです。話したくても話し相手がいなかったり言いたくても我慢している人は、できるだけ聞いてあげることが一番の薬になると思います。言いたいことを言ってしまったら、それだけでかなり楽になりますからね。そこに治療へのヒントが見つかることもあります。
ほかの病院から来た患者さんで、医師から何も聞いていないといわれる方や、検査はしたがどうだったかなど知らない方がずいぶんおられます。
自分の病気について理解できていないのか、説明されてもうまく伝わらないのか、薬だけもらってきた人もいます。だからこちらはその薬を見て判断することになります。患者さんに分かるように説明できる能力も大切ですね。なるべく専門用語を使わずに。