年頭にあたり謹んで新年のごあいさつを申し上げます。
昨年は、世界的な経済の停滞感もあって、現状の政治、社会の状況に多くの人々が一種の閉塞感を感じ、過激な主張、タブー視されていることへの挑戦、過去の価値観に囚われない発想を短いメッセージに込めて発信した人物に注目が集まった年だったように思えます。言い換えれば確立された権威を一蹴する快感を吹き込んでくれる人物をリーダーに選ぶ雰囲気を感じる年だったとも言えます。
あまりロジカルな理屈がある訳でなく、若干刹那(せつな)的な危うさを孕(はら)んだ危険性に賭ける、あるいは賭けたくなる流れが多くの人々の心の底流にあったような気がします。
昨年末のボーナス支給時のアンケート調査では、お金の使い道のトップはやはり将来に備えての貯蓄と答えています。もっと驚いたことは金融機関に預けず現金で持つ割合が徐々に増えていることです。将来に対する漠たる不安がそうさせているとも言えます。
政府の景気浮揚策として賃金を上昇させ、収入を増加させようとしているものの、医療、介護などの社会保障費負担額が増え、支給開始年齢が少し遅くなり、あまり当てになりそうもない年金が景気浮揚策の効果をメンタル的に打ち消しています。そして、消費行動を抑制しているように思われます。まさに負のスパイラルと言えます。
かつてある官僚が唱えた、医療は消費であるとの医療費亡国論がいまだに背後霊のように社会保障に関する財政論議に影を落としています。社会保障への投資、制度拡充は成長戦略の大きな柱となり、老後への不安解消は消費活動を惹起(じゃっき)し、手元の現金が市中に出回るはずです。
この負から正のスパイラルへの転換の原動力に我々の医療現場で言えば地域医療構想、地域包括ケアシステムの推進がその原動力になりうるのか、また国民皆保険制度、かかりつけ医制度のような医療、社会保障分野のレガシーになりうるのかが問われる試練の一年になりそうです。
皆さまのご活躍、ご協力をお願い申し上げます。