年頭所感

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日本医師会会長 横倉 義武

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 明けましておめでとうございます。皆様におかれましては健やかに新年をお迎えになられたこととお慶び申し上げます。

 昨年は各地で天候不順が続き、土砂災害や洪水、さらには火山噴火等、各地でさまざまな災害が発生致し、今後の支援、被災された方々への医療提供体制のあり方について更なる検討が必要であると強く感じさせられた一年でありました。折しも昨年8月1日、日本医師会は災害対策基本法上の「指定公共機関」の指定を受けました。今後、国・地方の防災行政における医療の位置づけの向上を図るとともに、災害医療コーディネート研修やJMAT体制の整備など大災害への備えについて強力に推進して参りたいと思います。

 明るい話題としては昨年10月、ノーベル物理学賞に3名の日本人科学者が選ばれました。今日、われわれが身近に接する電化製品を見るにつけ、青色LEDの発明とその実用化がどれほど素晴らしく、どれほど国民を勇気づけ、日本人としての自信と誇りをよみがえらせたか、言葉では言い尽くせないほどの受賞だったと言えます。

 同じ月に東海道新幹線が開業50年を迎えました。これまでの乗客数は延べ56億人に上るとのことで、私も頻繁に利用する一人です。戦後、正にわが国の高度経済成長を牽引してきた代表の一つであると思います。

 高度経済成長を牽引してきたものとして、われわれ医療関係者が真っ先に思い浮かべるのは、これより3年早く50年を迎えた国民皆保険(昭和36年制定)と呼ばれる公的医療保険制度です。戦後日本の、まだ発展途上であった昭和36年に、生活のインフラ整備のための相互扶助による保険制度として確立され、その後わが国は世界一の長寿国となり、2000年にWHOが発表した世界各国における医療制度の比較では、健康寿命においても世界一になりました。これは日本の公的医療保険制度が極めて優れている証と言えるでしょう。

 昨年、私が参加しましたアジア大洋州医師会連合(CMAAO)の会議では、蔓延している多剤耐性結核の対策が大きな問題となりました。これには、日本のように国民皆保険体制が確立されていない状況も、その背景にあるのではないかと思っております。また、医療関係者に対する暴力が増えており、これに対し医師側はストライキ等の措置で対抗しているとの報告もありました。

 現在、わが国の医療界は、団塊の世代が75歳以上となる2025年に向け、地域の特性に応じた地域包括ケアの推進が求められております。本年4月には改正医療法に基づき、地域ごとに地域医療構想が策定されることになりますが、その前段階として地域医療構想策定のためのガイドラインづくりの協議が進んでいるところであります。地域医療構想はこのガイドラインが一つの指標となって策定されることになりますが、国が作成した一律のガイドラインのみに頼って策定されるべきではありません。各地域の実情に基づいた地域医療構想であることが肝要であると思います。

 その一方で、わが国の債務は1千兆円を超え、経済成長は伸び悩み、将来的に労働力人口の減少が見込まれています。これに加え、社会保障費は高齢化の進展に伴い、医療、介護等を中心に更なる増加が予想され、国家財政上の大きな課題となっております。今後も財政を緊縮しようとする立場から、規制改革や成長戦略の名の下に、公的医療保険給付の範囲を狭める圧力が続いていくものと思われます。

 しかし、いかなる改革が行われようとも、医療という行為において忘れてならないのは「健康と安全」であり、これを守るためには適切な規制が必要となります。実際、医療における規制のほとんどは人の生命と健康を守るためです。規制改革の名の下に、この社会保障の大きな柱である医療を市場原理に基づく自由競争に委ねるべきではありません。ひとたび自由競争に委ねれば、その安全性と平等性が揺らぎ、わが国の国民皆保険は崩壊の一途をたどることになります。

 こうした厳しい社会経済情勢の中で、必要とする医療が過不足なく受けられる社会を構築していくためには「かかりつけ医」を中心に地域の医師会と行政が主体となり、地域の実情を反映した、地域に即した形での「まちづくり」を進めていくことが何よりも重要です。その上で、健康寿命を延伸させる等、時代に即した改革を進めながら、国民皆保険を堅持していかなければなりません。

 日本医師会は医師を代表する唯一の団体であり、決して医師の利益だけを追求する団体ではありません。「国民と共に歩む専門家集団」として、世界に冠たるわが国の国民皆保険を堅持し、国民の視点に立った多角的な活動によって、真に国民に求められる医療提供体制の実現に向けて、本年も執行部一丸となって対応して参ります。国民の皆様方の深いご理解と格段のご支援を賜りますようお願い申し上げます。

 新年が皆様にとりまして、希望に満ちた明るい年となりますことをご祈念申し上げ、年頭のごあいさつといたします。


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