熊本の地域医療を守る仕事

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医療法人社団愛育会福田病院 理事長 福田 稠

路面電車の最寄駅から「あんたがたどこさ」が流れる古い町並みに愛育会の福田病院はある。1月20日号で紹介した熊本医療センターとは、県立高校を挟んだ位置関係にあり、以前は熊本城のお堀だった場所らしい。最寄り駅が「洗馬橋」という名であるのもこのためだ。一般96床、新生児65床。計161床。産婦人科としては異例の病床数だ。病棟全体がホテルのような作りで、プールやマタニティビクス、エステティックを楽しめるだけでなく、レストランやバー、茶室などを備え付けている。

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【Profile】
1973 年久留米大学医学部卒業。
1979 年に熊本大学医学部大学院医学研究科を終了後、国立熊本病院勤務を経て1981 年より福田病院院長、1985 年より医療法人社団愛育会福田病院理事長。
医学博士。2004 年より2010 年まで熊本市医師会長3期。
2010 年熊本県医師会長就任。2012 年日本医師会理事就任。

―医師の家系だとか。

1701年から医業をやっており、私で9代目です。初代は長崎留学から帰ってきて、細川藩のご典医になりました。3代目のころ松橋に移ったようです。五代目あたりのころはそこで開いた医塾が賑わっていまして、緒方正規(衛生学者・細菌学者=東京帝国大学医科大学学長)や浜田玄達(産婦人科医=東京帝国大学医科大学学長)も出身者です。

産婦人科を始めたのは先々代の祖父令寿で、海外留学から熊本へ帰国したのち、1907年(明治40年)に軍医部長の家で開院しました。産婦人科がまだ珍しかったころです。その後、1926年(大正15年)に、今の場所に移ったようです。元々隣の県立高校の敷地には、古城医学校というのがあったんですよ。

―マンスフェルトが医学を教えたところですね。

そう。私の祖父の父が、そのマンスフェルトの弟子でした。そして熊本医学校の隣に、ジェーンズが教えた熊本洋学校というものがあった。私の祖父はそのジェーンズの孫弟子に当たる。だから祖父はここに病院を作ったわけです。若き日の北里柴三郎たちがこの辺を歩いたかと思うと、ロマンがありますね。

終戦後は病院分娩に移行してきた時代です。ベビーブームもあり、多くの人が産婦人科医を開業しました。その、産婦人科が変わる激動の時代を生きてきたのが先代である父、正捷でした。大変な苦労だったと思います。

私が先代から受け継いだ時は36床の病院でした。

家業だという理由で産婦人科医になりましたが、やってみると楽しかった。子供はかわいいですしね。しかし他科も含めて大病院指向が強まっており、開業医を継ぐというのは難しいように思えました。またお産は安全だと思われていることもあり、当時から医事紛争も多かった。ですが、医療の質を担保して、魅力的な病院を作れるならば、何とかやっていけるだろうと思いました。今では年間に3千400人くらい生まれますかねえ。日本では一番多いと思います。

―小児科は先生の代からですか。

はい。今では産科自体が高度化して、周産期母子医療センターでないと入院させられない妊婦さんも増えています。そういう理由で当院ではNICU(新生児特定集中治療室)を持っていて、小児科医は10人ほど勤務しています。NICUというと呼吸器というイメージがありますが、そこに盲点があって、循環器や消化器なんかも必要なんです。多岐に渡る専門の医師が必要なわけですが、そのような貴重な人材を生かすために小児科を始めました。NICUとGCU以外に入院施設は持っていませんが、小さい子は診ていますよ。

現在熊大に新生児学寄附講座というものを作っていまして、その関係で熊大や市民病院と連携が取れるようになりました。今熊本県内では我々3か所のNICUが連携して、量的な意味での県外搬送に頼らなくなっています。九州新幹線を使った搬送などもやっていますよ。自分の病院も大切ですが、熊本県内の医療が発展することが私にはうれしいですね。そして、良い産婦人科医にたくさん育って欲しいですね。

―熊本県医師会の会長をされていますね。

これは「熊本県の地域医療をどうやって守るか」という仕事です。

日本の医療は世界一だと言われています。周産期死亡率や乳児死亡率を見ても、極めて低い。その世界一の医療というのは、健康保険のシステムと医療供給のシステムの2本柱によって成り立っています。しかし今、この両方の柱が蝕まれつつあるわけです。

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病院には史料価値の高い明治期の器具も展示してある。上は、先々代がイギリスエディンバラ大学に留学していた頃のノートと卒業証書。

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一つは混合診療やTPPによって、国民皆保健を壊そうという動きです。混合診療では医療の質に大きな貧富の差を作ってしまいますから、賛成ができません。

サプライの方を見ても、看護師不足や医師偏在は大きな問題です。健康保険証があっても医療機関がなければ役に立ちません。公衆電話がない場所でテレホンカードを持っているようなものです。例えば医療ツーリズムなんかで外国の方が医療を買い、外貨を落とすということになった場合、医師の都市部偏重は加速するでしょう。医療資源が余っている時こそ、そういうことができるわけで、足りない今やることではないと考えています。

医療の提供は公平であらねばなりません。しかし医療機関の経営は効率的でなければなりません。高度な医療を求める人が増えた今、医療者の多くはその狭間で、より良い方法を探して悩んでいるわけです。しかしその実情を分かっていない人が外から「資本主義の原則に則って」なんて言い、医療を崩壊させようとしています。それは良くないですよね。日本国民の、この問題への意識の低さが問題だと思います。

―熊本県の医療連携の質は高いと聞きます。

「わさもん」と言うのですが、熊本には新しいもの好きが多い。だから先生一人一人にチャレンジ精神があって、地域の医療を支えていられるのだと思います。私も「わさもん」ですよ(笑)。


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