第22回日本アルコール看護研究会が2月24日と25日の2日、福岡国際会議場で開催され、300人が参加した=写真。
会長あいさつで世良守行会長(慈友クリニック)は、「毎日ブラックアウト(アルコール摂取による記憶の欠落)の人が何人もいる。アンケートでは1年以上ブラックアウトの人が2割以上いた。40年も記憶のない人や、なぜ離婚されたかを覚えていない人もいる。実際には8割くらいが1年以上ブラックアウトだと思うが、その事実を恥ずかしくて言えない。彼らは成長していないから、酒を飲まなければ普通の人だという認識は間違っている。彼らは健常者の中に飛び込んでもうまく行かない。だから自助グループが絶対に必要。臨床の場でアルコール依存症の人に裏切られて不信感を持つ職員は多いが、それを乗り越えてほしい」と訴えた。
さらに川上春実大会長(雁の巣病院)は、「看護者がアルコール看護にどのように向き合うかを考えたい。アルコール問題は本人だけでなく家族や周囲に多大なる問題を抱えている。アルコール医療を進めていく中で、看護者としての戸惑いをどのようにして乗り切っていくか。その思いを共有したい」と話した。
特別講演で日本赤十字九州国際看護大学の石橋通江教授は「アルコール依存症の患者の特徴として、否認、他責、自己中心性がある。看護者に陰性感情をもたらす傾向が強く。その陰性感情をどのように乗り越えていくかが看護者の課題。医師の前ではもの言わぬ患者が、看護者を前にすると激変し、対応の一つひとつにクレームを付けて突き上げる。それはプライドを保つための防衛機制であり、自らの問題に直面させようとする看護者とのあいだに葛藤が生まれるのはある程度不可避」とし、看護者自身が自分の不甲斐なさに直面し、看護者としてのアイデンティティが揺るがされやすいと話した。しかしそのことを通じて、あるいは看護者が自分の過去の傷つき体験を見つめ直すことで、患者の良き理解者になりうる自分を発見し、併せて患者の変化と成長の可能性を信じられるようになり、内面的な成長によって看護師としての再生を遂げると、具体例をいくつも挙げた。
また、感情を率直に語り合える医師や看護師、コ・メディカルスタッフなど仲間からの支えや、職業的なモデルになる人々の存在といった環境要因も大切だと語った。