九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

高知県看護協会 会長 藤原 房子

 新年、あけましておめでとうございます。皆さま方には、健やかに新年をお迎えのこととお喜びを申し上げます。 2019年は、平成から令和へと、新たな時代のスタートの年でした。各地で豪雨、台風による甚大な被害が発生し、改めて自然災害の恐怖を感じるとともに、平時からの備えの大切さも実感しました。被災された皆さまに心よりお見舞いを申し上げます。 2019年のラグビーワールドカップでは、日本代表チームがベスト8になるという快挙を成し遂げました。チームのスローガンである「one team」が2019年流行語大賞に選ばれたのも記憶に新しいところです。 このラグビー日本代表チームは、国や地域が異なる者が共通の目標に向かって努力を重ねることで結果につながるということを私たちに教えてくれました。医療に携わる者には、多職種が連携・協働して患者さんやご家族にとって最善の医療・看護を提供することが求められています。 さて、わが国では、人口構造が変化し、超高齢少子社会に突入しています。今後、一人暮らし高齢者、高齢者夫婦世帯、認知症の増加など複雑な状況にある療養者の急増が見込まれる一方で、医療・介護の担い手不足も大きな課題となっています。高知県は、人口自然減が全国より15年、高齢化は10年先行して進んでおり、人口が70万人を下回りました。このような背景の中、当協会では医療と介護の連携による地域包括ケアシステムの構築を重点事業に掲げ取り組んでいるところです。 その一つとして多職種事例検討会を各地区支部において開催し、病院から地域につなぐための支援や療養しながら地域で暮らしていくための支援など、活発な討議がされています。事例検討会を通して顔の見える関係から、関係者間のネットワークづくりに発展できるよう今後も引き続き取り組んでいきたいと考えています。  また、高知県では近い将来、必ず起こるとされる南海トラフ巨大地震への備えも喫緊の課題です。当協会では、災害発生時、所属機関に着任できない場合に、地元の救護病院や救護所などで活動する「地域災害支援ナース」の養成を2013年度から開始し、7年となりました。 これまでに522人が「地域災害支援ナース」として登録しています。2019年度から新たに福祉保健所や市町村と、その地域に居住する「地域災害支援ナース」の名簿を共有する仕組みをつくりました。今後も災害時に備えた実践的な取り組みを強化していきたいと考えています。 関係機関の皆さまにおかれまして、今年も引き続き、ご支援・ご協力を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

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新潟大学医歯学総合病院 病院長 冨田 善彦

 明けましておめでとうございます。皆さまにおかれましては、健やかに新年をお迎えになられたこととお喜び申し上げます。 新たな時代の幕開けとなった2019年は、令和となった後の8カ月間でも、実にさまざまなできごとがありました。 まず、台風19号による信越、関東、東北の豪雨被害が挙げられます。被災された皆さまにおかれましては、いまだ、再建の途上と伺います。心からお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復興をお祈り申し上げます。 2019年、米タイム誌の「パーソン・オブ・ザ・イヤー」に、気候変動対策を訴える抗議活動が世界の若者に広がるきっかけを作ったスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(17歳)が選ばれました。彼女の主張は論理的で、共感できることも多くあります。個人的には20年以上前、家族でスウェーデンに留学した経験があり、彼女のような活動家が出ても驚きませんでしたが…。 私も60歳となり、物事を考えるときに、自分の任期(3年)や5〜10年先を考えるのが関の山で、20〜30年先となると、おろそかになりがちです。 2015年の国連サミットで採択され「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された2030年までの国際目標、持続可能な開発目標(SDGs)は、わが国でも種々の産業界で意識されてきました。 病院も、ゴール3「保健」はもちろん、5「ジェンダー」、6「水、衛生」9「イノベーション他」など、地球規模で貢献できる部分があると思いますし、そういった取り組みをしていきたいと思います。 と、大きなことを書きましたが、目の前には病院のスタッフの処遇の適正化、働き方改革への対応がありますし、一方では人件費比率の増加と高額薬品、医療器材の費用増があり、これを放置すれば基礎収支の自然悪化により、たちまち運営危機に陥る状況にあります。 また、地方の大学病院には、3次救急の使命があり、特定機能病院の機能を維持、発展させながら地域医療を支える診療応援の機能維持が要求されます。さらに、アカデミックとして新規医療技術開発や産学連携の使命も担わなければならないわけで、こう書きますと、軽いめまいを覚えます。 しかし、2019年4月に病院長に就任し、9カ月間仕事をして感じたのは(手前味噌ですが)当院のスタッフは控えめ(奥ゆかしい)ですが、能力は素晴らしいものがあるということです。これまでに、さまざまな改善を行ってくれています。  2020年も、新潟大学医歯学総合病院はさらに皆さまに頼りにされる、いろいろな意味で魅力的な病院を目指していきたいと思います、どうぞよろしくお願いいたします。

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院内託児所で子育て応援 介護医療院も開設

医療法人 碩済会木本 恵子 理事長(きもと・けいこ)1993年帝京大学医学部卒業、鹿児島大学医学部小児科学教室入局。鹿児島市医師会病院、熊本大学医学部附属病院(現:熊本大学病院)などを経て、1997年医療法人碩済会入職、2000年から現職。  姶良市と奄美大島で五つの医療・介護施設を持ち、地域密着型の医療を展開している。人材確保が難しい地域とされるが、院内託児所を開設して女性職員の定着率が向上したという。「患者さん第一の医療は働きやすい職場環境があってこそ」を貫いている。 ―「子育て応援企業」です。工夫されていることは。  働く環境を整えるための人材確保が非常に厳しいという現実があります。私も2児を抱えて仕事をしていたので、子育てをしながら働く大変さはよく分かります。女性看護師の場合、入職後4、5年して一人前になった頃に結婚、妊娠で辞めるというパターンが多いですね。 産休や育休の後に復帰してもらうには院内託児所が必要だと、2009年1月、鹿児島市本名町の吉田記念病院に託児所を開設。加治木記念病院には2012年に設置しました。吉田記念病院では4歳まで、加治木記念病院では就学前までの乳幼児それぞれ7、8人を預かっています。託児所は医療職、事務職に関係なく利用できます。 大島保養院は、精神科がなかった奄美大島南部に初代理事長の父が1967年に開院しました。奄美大島では子ども連れで働くのが当たり前だった時代で、開院時から託児施設があります。その託児所で育った子たちのうち十数人が、今は職員として働いています。 ―託児所開設の反響について聞かせてください。  ホームページや看護師紹介所で「託児所あり」を知って応募する人や産休後の復帰が増え、定着率が上がりました。 産休復帰後は子育てのために時短勤務を希望する人が多いため、夜勤に従事する人のやりくりに悩んでいます。「夜も子どもを預けられたら夜勤ができます」という職員もいるので、月に1、2回程度、夜間保育を可能にするための調整をしている最中です。 託児所を利用する人に安心して働いてもらうには、預かった子どもの安全を確保すること。託児所内の設備はすべて乳幼児仕様にしていて、事務長が毎日見回っています。 また、福利厚生の一環として職員休憩室の整備を考えています。医療と介護の現場で、患者さんをお世話するのは重労働で、ストレスもかかります。リセットする空間が重要です。職員が心身共に疲れていると、患者さんのためにもなりません。快適な休憩室に変えていく具体策を進めています。 ―特色のある医療とグループ内の連携は。  女性の予防医学が大切だと痛感しています。子宮がんや乳がんが増えているのに、女性は夫や子どもを優先して自分の健康管理を後回しにしがちです。両方のがん検診を同時に受けられたら受診者が増えるのではないかと考え、産婦人科のフィオーレ第一病院にマンモグラフィーを導入。子宮がんと乳がんをセットで検診できる仕組みをつくりました。乳がん検診の結果、必要があれば地域の専門医療機関と連携して、治療に当たっています。 グループ内の病院は領域も施設基準も異なるので、各病院の院長、事務長、看護部長が情報を共有して問題を解決しています。 ―新しい取り組みは。  超高齢社会を見据えて2019年10月、吉田記念病院を全面リニューアルし、2階部分90床を介護医療院に転換しました。2018年4月に法制化された施設で、長期的な医療と介護の両方が必要な高齢者を対象に、医療と生活施設の機能を提供しています。 桜島が見える、ゆったりとした談話室を設けて、ご家族との面会や趣味を楽しめるよう工夫しています。患者さんも職員も同じ地域の人々です。今後もその人々に何ができるかを常に考えて、地域に根差した医療に取り組んでいきます。 写真は吉田記念病院 医療法人 碩済会鹿児島県姶良市加治木町木田1394―4―2☎0995―62―2594(法人事務局)https://www.sekisaikai.jp/

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子どもの成長を見守る小児科医の魅力を伝えたい

佐賀大学医学部小児科学松尾 宗明 教授(まつお・むねあき)1985年佐賀医科大学医学部(現:佐賀大学医学部)卒業。佐賀県立病院好生館(現:佐賀県医療センター好生館)、米ケンタッキー大学留学、佐賀大学医学部附属病院小児科などを経て、2014年から現職。  子どもたちの総合診療医である小児科医。子どもやその家族に寄り添う小児科医の魅力を伝え、この道を目指す人材を育てたいと語る佐賀大学医学部小児科学の松尾宗明教授。人材育成や今後の取り組みについて聞いた。 ―小児科医にとって大切なことは。  患者であるお子さんだけを診るのではなく、その家族を含めて、いろいろなことに配慮して診療することが大切だと思います。 例えば、一人っ子だったり、きょうだいがいたり、あるいは両親のどちらかがいなかったりなど、子どもたちの置かれる立場は一人ひとり異なります。学生には、子どもだけでなく、家族ともきちんとコミュニケーションを取ることの必要性を伝えるようにしています。 患者であるお子さんは、自分の言葉で訴えられないケースが多くあります。身体的なことだけでなく、精神的なことまで含めて、小児科医が感じ取らなければ成り立たないのです。若い小児科医には、一つ一つの経験を大切にして、その後の診療に生かしてほしいと思います。 ただ、経験だけに頼るのも危険です。他の診療でも言えることですが、病気は治ったとしても、実はたまたま結果として良かっただけというケースも少なくありません。自分が行った治療方法に対して、何が良かったのか、冷静に客観的に評価する姿勢を持ち続けてほしいと思います。 小児科医は子どもの総合診療医。さまざまな領域の知識を広く身につけておく必要があります。さらに、自分の守備範囲はどのぐらいで、どこから専門医に診てもらうのかを知っておくことも大切です。 ―小児科医の魅力は。  患者であるお子さんやそのご家族の成長の過程を時系列で見られることです。診療中、ワアワア泣いていたお子さんが中学生、高校生になって落ち着いてきて、しっかりした大人に成長していく。そんな過程を見ると本当にうれしい。「先生に診てもらったことがあるんですけど」と、患者さんが大人になって自分の子どもを連れて来られることもよくあります。 自分が診た患者が医学生になり、医師や医学研究者になったという話を仲間の小児科医から聞いたことがあります。そこまでいくと医師冥利(みょうり)に尽きますね。 学生の中には、子どもの頃にぜんそくやアレルギーなどで病院に掛かったことのある人も多い。そういった学生のモチベーションは高いものがあります。 医学部の学生は、入学時、小児科医志望が結構多い。しかし、卒業時になると減ってしまいます。大学でさまざまな分野を学ぶうちに、それまで知らなかった他の診療科の魅力を知っていくのでしょう。小児科の魅力も、もっと学生に伝えることが、私の役割だと思います。 ―地域における取り組みについて。  小児疾患の予防啓発に力を入れています。例えば、佐賀県内の産科の先生たちに協力していただき、酸素モニターを使って心臓病スクリーニングを実施しました。 赤ちゃんの心疾患をいち早く見つけ、治療にこぎつけることが目的です。同じように難聴などを起こしやすい先天性サイトメガロウイルス感染症のスクリーニングも始めました。 また小児の在宅医療の仕組みづくりにも関わっています。小児科の先生は忙しいために、要望が多い在宅医療にまでなかなか手が回らないのが現状です。 そこで一般の在宅医療をされている内科医や訪問看護師に小児の医療的ケアもお願いできるよう、小児在宅医療研修会を3カ月に一度のペースで開いています。まだ取り組み始めて1年強ですが、小児の在宅医療のネットワークが広がればと願っています。 佐賀大学医学部小児科学佐賀市鍋島5―1―1☎0952―31―6511(代表)http://www.pediatrics.med.saga-u.ac.jp/

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円滑なチーム医療で高度な診療を

熊本大学大学院生命科学研究部 乳腺・内分泌外科学講座山本 豊 准教授(やまもと・ゆたか)1991年宮崎医科大学(現:宮崎大学)医学部卒業。米ロズウェルパークがん研究所留学、熊本大学医学部附属病院(現:熊本大学病院)高度医療開発センター乳癌(がん)分子標的治療学寄附講座特任准教授などを経て、2015年から現職。  患者が増加している乳がんをはじめとする乳腺診療全般、そして甲状腺・副甲状腺の外科的治療を行っている熊本大学乳腺・内分泌外科。いかにしてスペシャリストの育成に取り組んでいるのか。熊本大学大学院生命科学研究部乳腺・内分泌外科学講座の山本豊氏に聞いた。 ―乳がんに対しての診療方針は。  最近は、乳がん一つにしても、原因や必要とされる医療、患者さんのニーズが非常に複雑化しています。いくつかのチームが、症例ごとに協力し合いながら対応しています。 例えば、遺伝性乳がんの場合には、医師だけで対応するのではなく、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーなどでつくる「家族性腫瘍診療相談チーム」と一緒になって当たることになっています。 患者さんやそのご家族の取り巻く環境を考慮しながら、遺伝子検査をすすめるべきなのか、若い方で今後の妊娠や出産を希望する場合どのような解決方法があるのか。話し合いながら決めていくことになります。 熊本大学には、他にも緩和ケアのためのチームなどがあります。これらのチームは重なり合っており、私たちが橋渡し役となって、何かあれば即時に協力し合う形になっています。患者さんに適切な医療を提供するために、何をするべきか。お互いにコミュニケーションを取って、それぞれの役割をきちんと果たしていく。それが本質ではないかと思います。 ―熊本県の現状は。乳がん治療の今後についても教えてください。  人材不足が課題です。熊本県では、患者さんの数に対して、その診療に当たる医師が不足しています。しかも専門医の資格を持つ医師の年齢層が上がってきていることも問題になりつつあります。若い人たちに、この分野に興味を持ってもらえるよう努力しなければと感じています。 乳がんの治療成績は、全体として良くなっています。しかしながら、現在の標準治療では十分な効果が得られない方もいます。治療の効果が得られやすい人、得られにくい人の違いについて原因を調べ、治療法改善のために、これまでの患者さんから提供していただいた豊富なデータと腫瘍や血液などの検体を用いて研究を進めています。 また、乳がんの早期発見についても、乳がんにかかりやすい人、かかりにくい人には特徴があります。乳がんのかかりやすさには遺伝的な要因に加え、生活習慣や環境も大きな影響があります。一律に2年に一度のマンモグラフィー検査を受けなくても、乳がんのかかりやすさに応じた検診の仕方や新しい精度の高い検診方法を開発したいと考えています。 ―最後に教室の人材育成の特徴は。  乳腺と甲状腺などの内分泌臓器の外科治療に特化した分野です。 乳腺・内分泌外科は、ベースは外科になります。この分野での専門医を目指す場合のカリキュラムとしては、まず外科医としてのトレーニングを経て、サブスペシャルティとして専門医のコースを選択する流れになっています。 外科専門医、乳腺専門医、内分泌外科専門医、がん治療認定医などの資格取得が可能です。現在、教室に在籍し、実働している医師は6人。全員がいずれかの資格を取得しています。 熊本大学は、乳腺や甲状腺に対して熱心に取り組んでおり、学生にもこの分野に関して、多くの講義の時間を設けて教育しています。 地域の関連病院とも連携しながら、専門医を育てること。それが大学の役割です。乳腺・内分泌分野について、研究も含めて深く学べる環境があることは、熊本大学の強みの一つだと思います。 熊本大学大学院生命科学研究部 乳腺・内分泌外科学講座熊本市中央区本荘1―1―1☎096─344─2111(代表)http://www2.kuh.kumamoto-u.ac.jp/breast/

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訪問看護の充実を視野に

高岡市民病院藪下 和久 院長(やぶした・かずひさ)1983年金沢大学医学部卒業、1990年同大学院卒業。富山県立中央病院、高岡市民病院外科などを経て、2019年から現職。  少子高齢化や働き方改革などが進む中で、自治体病院は、どうあるべきなのか。急性期病院の役割を担いつつも、訪問看護の充実を視野に入れる高岡市民病院の藪下和久院長に、話を聞いた。 地域包括ケアの旗振り役  当院は富山県の高岡市、射水市、氷見市の計3市、人口約30万人をカバーする2次救急病院です。また、高岡市が運営する自治体病院でもあります。 医療圏全体で、少子高齢化、人口減少が進んでいます。家族のあり方が変化し、核家族化が進んだ影響で、老夫婦だけの世帯、高齢独居の患者さんもかなり増えてきています。 これまで取り組んできた急性期医療をベースにしながらも、今後は地域包括ケアシステムが地域にとって重要になってくることを、つくづく実感しているところです。例えば食事の提供一つを見ても、かつて家族内で行っていたことを、地域で見守るような仕組みが必要になってきています。 退院後の訪問看護や、介護へのスムーズな移行のお手伝いができたらと考えています。われわれは自治体病院ですので、市民のためになることを行っていきたい。地域包括ケアシステム構築の旗振り役になっていけたらと考えています。 必要とされる訪問看護  地域包括ケアシステムが必要不可欠になりつつある中、今後は訪問看護を充実させたいと思っています。病院内に訪問看護専門のステーションを設立するという構想もあります。 他の病院に訪問看護の状況を聞くと、どこも患者さんの高齢化とともに業務が複雑化していました。以前までは老衰などの患者さんが多数だったのに対し、今はがんの手術後や、心臓・脳血管障害の治療後など、症状や状態もさまざまです。看護師にも専門的なスキルが必要となっています。 当院には、急性期医療に対応すべく、研修を経た有資格の看護師が多く在籍しています。専門性の高い訪問看護を実現することで、地域に貢献できればと思います。 職員全員で取り組む  高い水準の急性期医療を提供するために、2019年9月には、内視鏡下手術支援ロボット「ダビンチ」を導入しました。同年12月から泌尿器科の前立腺全摘術と産婦人科の子宮全摘術でロボット手術を開始しました。これまでの放射線治療や化学療法と組み合わせて、より充実したがん診療体制を構築していきます。 訪問看護に取り組む上で、より重要なのが医師・看護師などのマンパワー。特に医師数の充実は急務です。病院長として、医師の確保に努めるべく、近隣の大学病院との折衝、連携を図っているところです。 病院が位置する高岡医療圏では、以前から当院を含む3病院で救急対応の輪番制を取り入れています。当番日以外はよほどのことがない限り、緊急出動になることはありません。働き方改革が推進されていることもあり、この制度に非常に助けられています。しかし、医師の在籍数がこれ以上減ってしまうと、この制度が成り立ちません。 働き方改革を推進するには、タスクシェアリングの導入も必要になってくるでしょう。例えば、看護師が専門性を高め医師の業務をアシストできるようにするなど、メディカルスタッフの技術向上も検討すべき時代になっています。 研修医も多く受け入れたいと思っています。魅力的な研修ができるよう、担当委員会にて研修プログラムの見直しや、住環境の整備を行っています。 職員全員の力を合わせて、自治体病院として、しっかりと地域医療貢献ができるよう、今後も尽力していきます。 高岡市民病院富山県高岡市宝町4―1☎0766─23─0204(代表)https://www.med-takaoka.jp/

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治療も経営も明るい未来像を描きながら

杉田玄白記念 公立小浜病院谷澤 昭彦 病院長(たにざわ・あきひこ)1979年京都大学医学部卒業。米国立がん研究所(NCI)留学、京都大学医学部附属病院小児科、福井大学医学部小児科勤務などを経て、2019年から現職。  小児科医として大切にしてきた「対話」。新しい病院においても、職員との対話を重視しながら、初めての病院経営に取り組んでいる。2019年4月、公立小浜病院に着任した谷澤昭彦氏に、小児科医としての歩み、これから病院経営について聞いた。 小児科医の視線で  「先天的な病気のために、生活に困難が生じる子どもたちの状況を少しでも良くしたい」。それが、谷澤病院長が小児科医を志した理由だ。外科よりは内科を選び、常に患者に寄り添い、研究に取り組む姿勢が、自分に向いていると感じた。 「小さい頃から治療を受け続けている患者さんが、小学生になり、成人式を迎える、結婚して子どもができる。病気がありながらも成長し、普通に暮らしているのを見ることが何よりの幸せですね」 専門は、小児血液疾患と小児がん。難しい症例が多く、治療には困難な場面も少なくない。 「子どもたちに泣かれると治療になりません。怖がられても問題ですし、お父さんやお母さんとの関係も重要です。常に、良好なコミュニケーションをとることを大切にしています」 深刻な病名を聞くだけで、家族が精神的に不安定になることも多い。ちょっとした言葉のかけ違いでさらに不安が増し、厳しい言葉が返ってくるような場合もある。両親だけでなく、さまざまな家庭の事情を考慮しながら丁寧に説明し、理解を得ることが必要なのだという。 「子どもの患者さんと話す時は目線を同じ高さにします。相手が座っていれば横に座る、しゃがむような時もあります。不安を取り除き、まずは仲良くなることを大切にしています」 まずは対話から  病院長就任に当たって、それまで勤務経験がない病院から声が掛かったことに驚いた。 「職員の皆さんが当たり前に使っている財務用語が分からないことも(笑)。突然、何か新しいことを始めるというよりも、これまで病院が掲げてきた方針、以前から働いている職員の皆さんの意見を大切に、協力していきたいと思いました」 就任後、医師、看護師、検査部など各部署のリーダー一人ずつと院長室で面談。各部署や個人が抱えている問題や要望を、ヒアリングすることから始めた。要望で最も多かったのは、人手が足りていないことと、古くなっている機器を新しくしたいといった声だった。 しかし、人材を確保するといっても、経営面から考えると、そう簡単にはいかない。 「病院経営は私自身にとって初めての領域。皆さんの要望をかなえたい思いはあるものの、すべては難しい。さらに、高齢化や人口減少などによって、患者さんのニーズも変化しています。これらの問題に取り組むために、どのような方法を選択し、病院の将来像を描いていくのか。今はまだ現状把握を続けている段階ですが、今後の私に与えられている最大の任務です」 公立小浜病院には救命救急センターと、多くの診療科がそろっており、地元住民から頼りにされている存在だ。その信頼に応えるためにも、今後の取り組みが期待される。 故郷の風景と重ね合わせて  「私は香川県高松市の出身です。ここ小浜の風景は瀬戸内海沿いの風景に似て、親近感がある。美しい海も山もあり好きな街です。今後も医療の現場は変化していくと思いますが、時代の流れに合わせながら、ずっとこの街の皆さんから頼りにされる病院であるよう努力していきます」 これまで小さき命と目線を合わせて向き合ってきた谷澤病院長。今後も、患者や職員と目線を合わせ、地域の医療に貢献していく。 杉田玄白記念 公立小浜病院福井県小浜市大手町2―2 ☎0770─52─0990(代表)http://www.obamahp-wakasa.jp/hospital/

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産後ケアデイサービスに続き小児への訪問診療を開始

独立行政法人地域医療機能推進機構 大和郡山病院松村 正彦 院長(まつむら・まさひこ)1978年京都大学医学部卒業。同附属病院小児科、天理よろづ相談所病院などを経て、2013年奈良社会保険病院(現:大和郡山病院)入職、2017年から現職。  目指すのは「何かあれば診てもらおう」と頼りにされる〝かかりつけ病院〟。223床の規模ながら、大和郡山市の市民病院的な存在として根付いている。小児科医として子どもに寄り添いつつ、患者に温かいまなざしを向ける松村正彦院長に聞いた。 ―診療の現状や特色は。  消化器内科・外科を柱に、呼吸器や循環器などの専門内科診療、また眼科手術や泌尿器科手術も積極的に行ってきました。産婦人科と小児科においては、市内で唯一の入院施設。母と子のケアに注力しています。 1年前には、市が行う「産後ケア事業」の指定医療機関として母子受け入れを開始。赤ちゃんと個室でゆったり過ごしながら、助産師などの専門スタッフに気になることを相談できるデイサービスです。希望すれば誰でも利用可能。現在は日帰りのみですが、1泊2日のショートステイ型にも広げられないか、市と協議しているところです。 2019年4月には、小児科医による訪問診療を始めました。気管切開、人工呼吸器、経管栄養など医療ケアを必要とする子どもは全国に約1万8000人。県内には約160人と把握されています。このような医療的ケア児の家庭を月2回程度訪問し、気管カニューレ交換や予防接種などを行っています。大学病院に通院するにしても、ご家族の負担はかなり軽減されるでしょう。 訪問先は現在9軒。範囲を広げたいところですが、採算が取れないのが悩みの種。遠方になればなるほど、その間の病院業務に制約が出るジレンマもあります。しかし、子どもに障害があっても安心して一緒に暮らしたいという家族の思いを見捨てるわけにはいきません。踏ん張って継続したいですね。 ―大和郡山市は以前から病診連携が盛んだそうですね。  医師会を中心とする病診連携システムは1995年にスタート。今年で25年、四半世紀を迎えます。 2018年7月には市と医師会が主導して「在宅医療・介護関係者と病院関係者の連携マニュアル」を作成。当院の職員も協力しました。 開業医からの紹介はもちろん、看護師やケアマネジャーからの相談、受け入れがさらにスムーズになればと期待しています。これに連動して、5階にあった地域医療連携室を1階に移動。スタッフも増やして業務に当たっています。 ―社会保険病院からJCHO(地域医療機能推進機構)へ移行してまもなく6年になります。  機構のキャッチフレーズは「安心の地域医療を支えるJCHO」。われわれも「地域医療、地域包括ケアの要」として貢献していきたい。附属の訪問看護ステーションや地域包括ケア病棟も利用しつつ、切れ目のないサービスを実践します。 社会保険病院時代から力を入れているのが、保健予防活動。健康管理センターの運営以外にも、各分野の専門認定看護師が中心となって活動を続けています。 例えば、院内教室のほか、商店街の一角で「まちの保健室」と題した健康相談を月1回開催。感染管理認定看護師が保育園などで行う感染症対策の出前講座や、救急看護認定看護師による救急蘇生の講習会、皮膚・排せつケア認定看護師による褥瘡(じょくそう)予防の講習会なども続けています。地域の訪問看護ステーションの看護師やケアマネジャー向けの研修会も年6回開催。尿閉や誤嚥(ごえん)に関する実技は「現場ですぐに役立つ」という声をいただいています。 私が小児科医になったときに恩師から言われたのは、「アドボカシー(代弁者)たれ」という言葉。世の中が不安定になれば、子どもや高齢者にしわ寄せがいきがちです。社会に対し声を上げづらい人々の代弁者となる、そんな気概を持ち続けたいと思っています。 独立行政法人地域医療機能推進機構 大和郡山病院奈良県大和郡山市朝日町1―62☎0743―53―1111(代表)https://yamatokoriyama.jcho.go.jp/

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