九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

「救急車を断らない」地域完結型の医療の充実を

獨協医科大学 日光医療センター安 隆則 病院長(やす・たかのり)1986年秋田大学医学部卒業。米カリフォルニア大学サンディエゴ校留学、琉球大学大学院医学研究科循環器・腎臓・神経内科学准教授、獨協医科大学日光医療センター副院長などを経て、2019年から現職。同心臓・血管・腎臓内科主任教授兼任。  獨協医科大学日光医療センターは、2006年開院。急性期医療、高度医療、リハビリテーションを中心に、地域医療支援病院としてさまざまな取り組みを行っている。そのかじ取りを担う安隆則病院長の目指す医療とは。 ―「救急車を断らない病院」を実現されています。  月に約150台、年間2000台ほどの救急車を受け入れています。救急対応は、昼間はファーストコール、セカンドコール、サードコールまでローテーションを決めており、夜間は内科、外科の医師を1人ずつ配置しています。  救急部の部長を兼ねていた副院長時代の2018年に、救急車を断らないための「見える化」を実施しました。救急車の受け入れ件数、患者さんの様子、電話対応、受け入れを断った場合はその理由なども含めて、毎日院内に配信。それにより、理由なく救急車を断ることができなくなります。 特に当直勤務を任された若い医師たちは、患者さんへの対応について、翌朝すぐに先輩医師に相談し始めるなど、この取り組みによって全員のモチベーションに変化が生まれました。 その結果、応需率は格段にアップ。「見える化」の効果は極めて大きかったと考えています。 この救急の「見える化」の実績をさらに広げたいと、病院長に就任した2019年には各病棟の病床稼働率の「見える化」にも着手。救急もあるので、基本的に病床稼働率は90〜95%程度と指示しました。こちらも常に、この数字の範囲で推移しており、成功しています。 ―「地域完結型医療」の取り組みは。  急性期から慢性期まで「切れ目のない医療」を展開するために、一つの病院だけでなく、地域全体で取り組みたいと考えています。 まず当院では、患者さんが寝たきりにならないよう、急性期の段階からリハビリテーションや食事指導を取り入れるようにしています。 例えば、心不全の患者さんに対しては、塩分の摂取量を守ること、運動を定期的にする習慣づくりなどを指導。その後、地域のかかりつけの先生にお戻ししてからも数カ月に一度、当院に通っていただく「二重の主治医」とも言える体制を整えています。 日光市は人口減少が進んでおり、病院同士が協力していかないと地域医療が立ち行かなくなります。そこで、日光市や市内にある多くの医療機関がさまざまな協議を重ね、2019年4月、地域医療連携推進法人「日光ヘルスケアネット」を発足させました。 参加医療機関で医療機能の分担を進め、患者さんの入退院の適正化や、在宅医療の充実化を図っていこうと仕組みづくりを進めています。これらの取り組みがスムーズに動くことで、「地域完結型」の医療が実現できるのではないかと考えています。 ―さらなる取り組みは。  当院は研修施設として、セミナーを多数開催。地域の開業医の先生方にも参加を呼びかけています。 2019年からは、それまで院内対象だった病理医と臨床医による議論の場「CPC(臨床病理検討会)」を院外の先生にも開放しました。院内の医師たちの刺激にもなっており、地域医療の充実と質向上につなげたいと考えています。 もう一つ大きな目標に「日本・アジアの人を〝とりこ〟にする医療サービスの提供」を考えています。学生時代にカンボジアにボランティアに行った経験があり、いつか力になりたいと思っていました。 さまざまな交流はすでに始めており、インドネシアや中国から医師が見学に来ています。観光客対象のインバウンドに限らず門戸を開き、「ここで治療を受けたい」と思っていただけるような質の高い医療とサービスを展開したいと思います。 獨協医科大学 日光医療センター栃木県日光市高徳632☎0288―76―1515(代表)https://www.dokkyomed.ac.jp/nmc/

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NICU再開、診療科増設地域 ニーズに応える病院に

独立行政法人国立病院機構 西埼玉中央病院小村 伸朗 院長(おむら・のぶお)1988年東京慈恵会医科大学医学部卒業。同附属病院消化管外科診療部長、西埼玉中央病院統括診療部長、同副院長などを経て、2018年から現職。東京慈恵会医科大学外科学講座客員教授兼任。  西埼玉中央病院は、診療科目の充実を目指している。周産期医療では、2018年に新生児集中治療管理室(NICU)を再開した。小村伸朗院長が目指す病院は、地域が必要としている医療の提供。地域医療支援病院として、地域の医療機関との連携の強化に力を入れている。 ―病院の特徴は。  質の高い医療の提供を目指し、当院で診断・治療・フォローアップまでを担うことのできる「自己完結型医療」を目指しています。 外科領域においては、私の専門である消化器外科を中心に、高度な手術にも対応。就任以前は腹腔鏡の手術はあまり行われていなかったのですが、今は胃がんや大腸がん、胆石などの手術に導入しました。日本内視鏡外科学会の技術認定医も常勤で2人、非常勤で2人在籍しています。 さらに、診療科の充実を目指しています。耳鼻咽喉科は入院設備を有し、手術件数も順調に伸びています。ここ数年の動きとしては、呼吸器内科、精神科を常設。2019年10月から泌尿器科も医師が3人になりました。今後、高齢の患者さんが増えることを考え、呼吸器内科、整形外科、泌尿器科は、さらなる拡充を図っていきます。 ―NICUを再開しました。  この地域は産科、小児科のニーズが高いこともあり、一時休止していたNICUを、2018年7月、6年ぶりに再開しました。病床数は3床、新生児科医は1人の体制です。 再開当初は35週1800グラムまでの受け入れから開始。最終的には、32週1500㌘までの受け入れを目指しています。また、周産期で難しい呼吸管理のトレーニングも順調に進み、NICUが軌道に乗ってきたことで、産婦人科で制限していた双胎妊娠の受け入れも再開しました。 所沢市内でNICUがあるのは当院のみ。その他、防衛医科大学校病院に未熟児室があります。地域の産科病院に、定期会議などを通じて、当院のNICUを紹介。地域の周産期医療に貢献できるよう努め、将来は、6床まで増床したいと考えています。 周産期医療は、診療報酬上、経営的には不採算部門に挙げられることの多い領域です。しかし、将来を担う子どもたちを守ることも国立病院機構のあるべき姿と捉え、整えていきたいと思っています。 ―地域医療支援病院としての役割は。  地域の医療機関と連携し、地域医療の一翼を担いたいと思っています。そこで院長、各科部長、そして地域医療支援室のスタッフで、地域の医療機関に出向き、顔の見える関係をつくるよう心掛けています。その成果の一つとして、最近では、紹介率80%、逆紹介率65%に達しています。 紹介いただいた患者さんに関しては、しっかり情報をお伝えしています。入院が長期になる場合には、数回にわたって連絡をします。外科であれば、手術した時、退院した時、病理結果が出た時など。「この病院に送って大丈夫」と思っていただきたいですね。 救急医療については、4~5人の当直体制を整え「断らない救急」に取り組んでいます。その結果、救急の応需率は年々上昇。ただし、小児科は人員が不足しているので、2次救急のみの対応です。 病院経営は簡単ではありませんが、黒字化できたら職員に還元したいと思っています。患者さんに気持ち良く接するためには、職員の職場環境をより良いものにしていく必要があります。 職員が「ここで働いて良かった」と思える病院とは、自分の家族が病気になった時に、「ここで治療を受けさせたい」と思える病院だと考えています。黒字経営を実現し、職員が幸せになることが、結果として患者さんのためになると信じています。 独立行政法人国立病院機構 西埼玉中央病院埼玉県所沢市若狭2―1671 ☎04―2948―1111(代表)https://nishisaitamachuo.hosp.go.jp/

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地域の医療ニーズに対応し、新病棟建設で病床を増減

独立行政法人国立病院機構 神奈川病院橋誥 壽律 院長(はしづめ・としのり)1984年慶應義塾大学医学部卒業。国立病院機構茨城東病院外科診療部長、国立病院機構神奈川病院統括診療部長、同副院長などを経て、2018年から現職。  1939年に傷病軍人神奈川療養所として開院し、一般診療、結核医療、重症心身障害児(者)医療の分野を担ってきた国立病院機構神奈川病院。現在、念願だった新病棟建設も着々と進んでいる。橋誥壽律院長に、地域における病院の役割や、今、話題となっている公立・公的病院のあり方などを聞いた。 ―公立・公的病院の再編統合について。  2019年9月に厚生労働省が公表した再編統合の検討が必要な424の公立・公的病院の一つに、当院が含まれていたことは、とても大きな出来事でした。職員も驚きましたが、患者さんや地域の方々にも、かなりのご心配をおかけしました。 しかし、よく話を聞いてみると、今回の再編統合の目的は、病床のダウンサイジング、地域全体での機能分化などを進め、地方の医療事情に合った病院運営をしていくこと。その目的に、きちんと対応していくことが、何よりも重要であると捉えました。 湘南西部医療圏は、今後、人口そのものは微減にとどまるものの、高齢者の割合が増えていくと言われています。そのことから、急性期病床よりも、今後は回復期病床が必要になってくると思われます。 当院は、2021年1月完成予定で新病棟建設工事を進めています。病床は地域のニーズに合わせてダウンサイジングします。急性期病床は140床から130床に、一方、利用者が増えることが見込まれる回復期病床は40床から50床に増床します。呼吸器科病床は結核の患者数が減っていることから、一つのフロアを呼吸器科と結核とで分けるユニット化を実現し、現在の50床から30床にと計画しています。 ―病院の建て替え工事が始まっています。  2019年の4月に、ようやく一般病棟の建て替えに着工できました。昭和40年代に建てられた病棟は、古さやスペースの狭さが懸念され、患者さんにもご迷惑をおかけしていました。2021年1月には新病棟が完成します。新病棟は、一般病棟だけでなく、手術室や中央材料室、リハビリテーション室も移転する予定です。 病院の建て替えは、3段階で進めています。最初は2014年の重症心身障害児(者)病棟で、患者さんの高齢化やニーズが拡大していることから100床から120床に増床しました。次が今回の新病棟の建設になります。最終的には、外来管理棟も建て替えを目指したいと思います。変わっていく時代のニーズに合った医療を、ハード面でも常に提供していきます。 ─地域医療における役割について。  秦野伊勢原地区において、唯一の地域医療支援病院です。その取り組みの一つとして、10年以上前から、「地域医療連携症例検討会」を年2回開催してきました。地域の医師、看護師、訪問看護師など100人ほどが集まり、紹介いただいた患者さんをどのように治療したかなど、症例をもとに意見交換し、相互理解に努めています。 政策医療である結核や重症心身障害児(者)医療の分野については、この領域 を担う医療機関が少なくなっていることもあり、今後も引き続き、当院の果たすべき役割の一つとして対応していきます。 一般診療においては、呼吸器の専門病院として、肺がんや非結核性抗酸菌症など、手術が必要であったり、治療が難しかったりする呼吸器疾患について、しっかりと取り組んでいきます。 時代が移りゆく中で最も大切なことは、あらゆる課題を客観的に見つめ、地域の医療ニーズを常に意識すること。そしてニーズの変化に合わせて医療機関も柔軟に変化していくことではないでしょうか。そして今後、それがますます求められていくだろうと感じています。 独立行政法人国立病院機構 神奈川病院神奈川県秦野市落合666―1☎0463―81―1771(代表)http://kanagawa-hosp.jp/

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医師、職員が安心して働ける病院を目指して

医療法人南嶺会 勝連病院 松原 卓也 理事長・院長(まつはら・たくや)1987年杏林大学医学部卒業。四倉病院精神科、高月病院精神科、勝連病院精神科指定医を経て、2012年同院長、2013年から現職。  豊かな自然に囲まれた沖縄本島南部の糸満市にある勝連病院。認知症を中心とする高齢者の精神疾患に対するケア、身体的疾病との合併症に対応すべく、精神科医と内科医が連携しながら、手厚い医療を提供している。 ―病院の沿革と現況は。  沖縄が本土に復帰して間もない1978年に、初代理事長の勝連昭夫先生が「勝連老人病院」として創立されました。創立当初から高齢社会を見据え、「地域の高齢者の精神科医療を提供する」ことをモットーに、高齢者の精神科医療に不可欠な認知症の治療を行ってきました。現在は510床。認知症治療病棟、精神科病棟、特殊疾患病棟、精神療養病棟の9病棟があり、それぞれ患者さんに合わせた治療に当たっています。 患者さん1人に対して、精神科医と内科医計2人の医師が主治医となる体制を整えています。当院は病床数が多いこともあり、医師数を多く確保できることによるスケールメリットだと感じています。 近隣のクリニックや一般病院との連携も大切にしています。2017年からは、沖縄県の地域医療支援病院として承認を受けている豊見城中央病院との連携を開始し、精神科リエゾンとして医師を派遣しています。 精神的な疾患が重い患者さんは当院に転院していただく、合併症のある患者さんは豊見城中央病院の専門医に見ていただくなど、お互いにウインウインの関係を構築しています。 ―認知症など精神疾患治療の取り組みは。  高齢化とともに認知症の患者は増加しており、全国でも社会的な問題となっています。2019年6月に「認知症施策推進大綱」がまとめられるなど、国の施策としても本格的に認知症の予防・対策が行われるようになりました。 当院ではご家庭や施設で対応が困難な方を対象にして、入院治療を行ってきました。専門医による治療とケアを行うとともに、認知症治療の経験が豊富なスタッフが回復期、維持期の作業療法・理学療法により早期退院を支援しています。 リハビリテーション部には理学療法課と作業療法課の2部門があります。理学療法課では医師、看護師、理学療法士、介護スタッフが連携しながら患者さんに対しての訓練や指導を行い、身体機能の低下予防・改善に取り組んでいます。 作業療法課では認知症をはじめ、気分障害、アルコール依存症などの精神疾患の患者さんに対して、医師の指導のもとに作業療法士が最適な作業プログラムを計画・実施しています。 近年では医療の進歩と新しい治療薬の開発によって、以前に比べて精神疾患の重症患者は減少しています。「精神科を受診する」ことに対するハードルが低くなったこともあり、早期受診、早期治療によって、精神科の長期入院患者も減る傾向にあります。患者さんが心身共に健康で明るく、安らぎのある人生を過ごすためにも、地域の精神科医療を支えていく病院でありたいと考えています。 ―今後は。  2013年の2代目理事長就任以来、医師や看護師をはじめスタッフの皆さんが安心して仕事に専念できる環境づくりを心掛けてきました。おかげさまで、順調に人材が確保できている状況です。そのほとんどが地元出身であり、離職率も低く、長く勤めていただいています。 精神科医療では、医師やスタッフの心の安定が大切です。一人ひとりの得意分野を伸ばせるよう、適材適所の人員配置やシフトづくりを心掛けています。 職員のワークライフバランスの充実を図り、負担を軽減。不安を解決しながら、安心して長く働ける職場環境を整えていくことは、結果的に患者さんとそのご家族のためになると考えています。 医療法人南嶺会 勝連病院沖縄県糸満市真栄平1026☎098―997―3104(代表)https://katsuren-hp.jp/

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保健・医療施設の機能集約 地域医療をトータルで提供

独立行政法人国立病院機構 大阪南医療センター齊藤 正伸 院長(さいとう・まさのぶ)1979年奈良県立医科大学医学部医学科卒業。大阪厚生年金病院(現:JCHO大阪病院)整形外科部長、大阪大学医学部整形外科講師、大阪南医療センター副院長などを経て、2016年から現職。  大阪府の南河内医療圏の地域医療支援病院である大阪南医療センター。同医療圏にある近畿大学病院の移転計画を見据え、今後は行政と連携し、休日急病診療所や保健センターなどの機能を集約。さらなる地域医療の充実に向けて、齊藤正伸院長に話を聞いた。 ―地域における役割は。  1945年に国立大阪病院として創設され、2004年に独立行政法人へ移行。南河内医療圏における地域医療支援病院として、長年、地域の方々に医療を提供してきました。 同じ医療圏にある近畿大学病院が、近く堺市に移転し、医療圏も変わってしまうため、南河内医療圏における当院の役割はさらに、大きくなると考えています。 災害時の対応も含め、急性期医療についてはこれまで以上に強化すべく、2019年4月に救急科を新設しました。救急の患者さんに対して各科の医師が交代で診察に当たっていましたが、専門の常勤医師を2人配置。より多くの患者さんに対応できるよう、今後も増員していく予定です。 近隣施設からの紹介率が増加していますが、在院日数を10日ほどにコントロールすることで、ベッド数は470床から430床に減少。空いたベッドを活用して、人工透析のための「血液浄化センター」を2018年に開設しました。 これにより、これまで入院のみが対象であった透析が、外来でも可能となりました。水や電気の確保に考慮し、近年増加している地震や台風などの非常時でも透析の患者さんを受け入れられる態勢を整えています。 ―行政と連携した取り組みが計画されています。  1次救急医療体制の充実を目的に、河内長野市と連携し、乳幼児健診センター、休日急病診療所、保健センターの機能を集約。それらが一体となった施設を、2021年4月に当院の敷地内に移転します。これにより2次医療機関である当院との連携が図られ、医療をトータルに提供できる体制が整います。 同じく当院に隣接した敷地内に、以前から病病連携を進めていた医療法人敬任会岡記念病院が、建物の老朽化に伴い新築移転してきます。 当院では急性期・救急医療を提供。地域包括ケア病床を有し、急性期から慢性期まで幅広く医療を提供できる岡記念病院とお互いに協力し、地域医療に貢献できるようになります。  現在、地域がん診療連携拠点病院の指定を受けていますが、さらにがんゲノム医療連携病院に参加できるよう準備をしているところです。この地域において、急性期医療をメインに、専門領域でも質の高い医療を提供し、地域の方々の健康と安心を支えていくことのできる病院を目指しています。 ―今後の課題は。  医療を取り巻く環境は、厳しいものがあります。このままでは医療費増で財政が破綻するのではないでしょうか。働き方改革を進めようとすれば、患者さんに無理を強いる部分が出てくるはずです。軽症の風邪や捻挫程度なら健康保険でカバーしないなど大胆な考え方が必要かもしれません。 医師の人材不足は今後の課題の一つと言えます。当院でも眼科、耳鼻科、心療内科は非常勤の方に来ていただいているのが現状です。 まずは、働きやすい病院を目指すこと。医師の時間外労働規制が適用される2024年に向け、当直明けの休みを取り入れていくなど、積極的に取り組んでいきたいと思います。 女性医師の数も増えています。以前から、勤務日数の調整や時短勤務制度などを導入。一人ひとりの希望やライフスタイルに合わせて働ける柔軟な勤務形態も取り入れています。 働き方改革を実現するにはまだまだ人材が必要ですが、今できることを積み重ねていくことが、大切ではないかと考えています。 独立行政法人国立病院機構 大阪南医療センター大阪府河内長野市木戸東町2―1☎0721―53―5761(代表)https://osakaminami.hosp.go.jp/

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「働き方」を模索しつつ意欲的に急性期を追求

市立奈良病院矢島 弘嗣 院長(やじま・ひろし)1979年奈良県立医科大学医学部卒業。米ハートフォード病院留学、市立奈良病院副院長兼四肢外傷センター長、奈良県立医科大学臨床教授などを経て、2015年から現職。  奈良市が開設し、公益社団法人地域医療振興協会が運営する公設民営病院。公的役割と民間マインドを兼ね備える病院として存在感を示している。2015年から病院運営を担う矢島弘嗣院長が描く病院像とは。 ―地域での役割や、救急医療の現状について。  奈良県には五つの医療圏があり、奈良市は単一で奈良医療圏。ここは割とすみ分けができている地域です。3次救急は県の拠点である奈良県総合医療センター(県総)が対応。2次救急は、市の南北を走る24号線より西は県総、東は当院で担当することが多いですね。地域の私立病院は、急性期から回復期まで法人内で完結できる存在として役割を果たしています。  当院の特長は、総合診療科。コモンディジーズの診断・治療だけでなく、ERの機能も持ち、救急搬送の初期対応に当たります。専門医は10人ほどですが、専攻医や研修医のアシストも整えて、受け入れを強化しています。 ―黒字経営を続けているそうです。強みや、今後力を入れたい分野は。  公的病院として採算が取りにくい部門を担う分、利益を出す科でカバーすることが不可欠です。  まずは、整形外科と外科、消化器内科はしっかり人員を確保して集中的にやる。整形には人工関節センターや四肢外傷センターがありますが、最も患者さんが多い脊椎の需要を満たすために、脊椎センターもつくりたいと考えています。外科はロボットの導入を検討中。準備して2020年度中には入れたいですね。  再建形成外科とも標榜する形成外科も強みです。研修の基幹施設として人材育成にも取り組んでいます。常勤医は2020年春で4人になる予定です。乳房や頭頸部に腕を振るえるので、乳腺外科や耳鼻いんこう科は助かっていますね。  放射線科には高度な機械があるものの常勤は1人。もう1人いれば強度変調放射線治療(IMRT)や頭頸部がんにも対応できるので、ぜひ補完したい。  あと足りないのは血液内科ですね。緩和ケア病床は8床。チームで、がん医療をサポートしています。  最終的に全部はできませんので、得意な分野をいくつか持って助け合えばいい。奈良市民は大阪の病院に行くことが多かったのですが、県総と当院でカバーすれば県外へ出る人は減ります。  2019年12月、ようやく地域医療支援病院に指定されたところです。今後は開業医への受診が進み、外来の数は減るでしょう。その分、高度医療に力を発揮したいですね。 ―働き方改革への考えは。  地域医療構想と働き方改革、専門研修におけるシーリング。厚労省がこの三つを同時にやろうとする意味が、ようやく分かってきました。働き方改革を本格的に進めるには医師の数が必要で、それには急性期を集約するしかない。医師が100人以上いる病院は責任を持って救急を全部取る、そうでない病院は回復期を担う、というすみ分けが進むのではないでしょうか。 救急医療にとって働き方改革は足かせになりかねませんが、幸い当院は総合診療科がERを担っていますし、350床に対して常勤は約120人、研修医も16人いる。今後も急性期に対するニーズをすくい取る方向性は変わりません。  医師の働き方改革については、ワーキンググループが発足したばかり。副院長を筆頭に研修医、専攻医、医長、部長、私も入って、半年から1年かけて練る予定です。 どうすれば今の給料を維持できるのか、サービスの質を下げずに効率化できるのか。それぞれが、わがこととして考えないと意味がありません。本格的に取り組めるよう、医師が多いメリットを生かしつつ、患者さんへの理解も促しながら進めていきます。 市立奈良病院奈良市東紀寺町1―50―1☎0742―24―1251(代表)http://www.nara-jadecom.jp/

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新外来棟の運用開始2020年9月に全面完成

独立行政法人国立病院機構 旭川医療センター北海道旭川市花咲町7─4048 ☎0166─51─3161(代表)https://asahikawa.hosp.go.jp/  旭川医療センターは、1901年に旧陸軍第七師団の衛戍(えいじゅ)病院として創設され、以降、北海道旭川市で地域医療と政策医療を担っている。外来棟建物の老朽化に伴い、2017年に建て替え工事を開始。2020年1月に新外来管理診療棟での診療がスタートした。旭川医療センターの西村英夫院長に、話を聞いた。 ◎救急センターを拡充二つの診療科を開設  川医療センターは2010年に病院名を道北病院から変更した。以降、国立病院機構の使命である政策医療を担うことに加え、急性期医療に注力してきた。救急車による搬入件数は、最近は900件を超えている。 運用を開始した新外来管理診療棟は地上4階建てで、1階の救急センターは、処置室や化学療法室を備え、従来よりも拡大された。4階には、医療教室や講演会などを開催できる大会議室も新たに設置。大会議室は、災害発生時には避難所として利用することも可能だ。 一度に2台の救急車を受け入れることができる救急センター   1階は外来診療室を増やしたほか、診察室、採血・中央処置室、各種検査室、放射線治療室などを設置。外来患者の動線を集約した。患者の2~3割が車いすを利用し、エスカレーターを利用できないことから、エレベーターがあれば十分と判断。エスカレーターを設置していない。 新外来管理診療棟の運用開始に合わせて、最新の機材や設備がそろった泌尿器科を開設した。また、今後、内視鏡外科の開設も予定しており、より専門性の高い内視鏡手術にも対応していくという。 西村院長は「新しい外来棟を建設し、設備を拡充したということは、ここ旭川市花咲地区で、これからも医療を継続していくと宣言したようなものです。地域住民の皆さんには、これからも安心して医療を受けていただきたい」と語る。 ◎建て替え工事は進行中2020年9月に完了予定  新外来管理診療棟の敷地面積は、旧外来棟よりも広くとられている。建物中央部には光を取り入れる「光庭(こうてい)」が設けられ、院内には明るく開放的な雰囲気がある。来院した人に快適に過ごしてもらいたいという思いが、建物の設計に込められている。 現在は、正面玄関や売店などの建設、駐車場や庭などの外構工事、既存建物の解体工事が進行中。2020年9月には全ての工事が終了し、新しい建物での旭川医療センターがスタートする。 ◎地域住民に寄り添う医療を提供する  旭川市の高齢化率は33・5%(2020年1月1日現在)。しかも、同センター周辺は、かつて新興住宅地として開発された場所であるため、近年、住民の高齢化が一斉に進み、介護のニ ーズが急激に高まってきている。 「2018年に地域包括ケア病棟を開設し、在宅・生活復帰に向けた支援、在宅療養中の患者や介護施設入居者の緊急時の受け入れを行っています。近隣の医療機関と連携し、患者さんの緊急時に対応できる体制を確保しています」 旭川医療センターは、地域医療支援病院の認可を受け、在宅療養後方支援病院の届け出をしている。 「目指しているのは、この地域で人生を終えるときに、ここに旭川医療センターがあってよかったと思ってもらえる病院です」 西村英夫院長  緩和ケアを希望するがん患者を支えていくために、医師による訪問診療をすでに始めており、訪問看護ステーションを設置することも検討中だ。 地域住民との交流にも積極的だ。脳神経内科の病気について解説する「地域住民セミナー」を定期的に開催。医療機器の体験コーナ ーや健康相談コーナー、ステージイベントなどを実施する「健康まつり」も建て替え工事が始まるまでは年1回開いてきた。2020年はこの健康まつりが復活する予定だ。

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地域の中核病院として災害・救急医療を強化

いわき市医療センター福島県いわき市内郷御厩町久世原16 ☎0246―26―3151(代表)http://iwaki-city-medical-center.jp/  1950年の開院以来、いわき医療圏の中核病院として地域の医療を守り続けてきた、いわき市立総合磐城共立病院。2018年12月25日に「いわき市医療センター」と改称し、新たなスタートを切った。そこには災害・救急医療における最新設備がそろっている。 ◎東日本大震災を機に災害に強い病院へ ホスピタルストリートには医療ガスが配管され、災害時の対応が可能に   施設の老朽化や耐震性の問題などにより、新病院の建設計画に着手したのは2010年。順調に計画が進んでいたとき、東日本大震災が発生した。新谷史明いわき市病院事業管理者兼いわき市医療センター院長が当時を回想する。 「建物の被害はほとんどなかったのですが、ほぼすべての入院患者さんを屋外にいったん退避させました。そして、落ち着いた後に戻っていただこうと考えていたところ、多くの人が不安で戻りたくないと訴えたのです。この経験から、誰もが安心して避難できる免震構造で、災害時も病院機能を持続可能な施設が必要だと強く感じました」 その後、再び計画が動き出し、2016年2月、新病院の建設に着工。そして2018年12月に地上13階建て、屋上ヘリポートを備えた「いわき市医療センター」が開院した。 新病院は、免震構造を採用。インフラが遮断された場合でも、72時間以上の医療活動が可能となる自家発電や貯水槽などを完備。講堂やホスピタルストリートに医療ガスの配管を設置。駐車場の一部には簡易トイレ用のマンホールが用意されている。 また、エネルギーの供給設備を一括して運転・管理する会社と契約することで、エネルギーの安定供給と省エネ・省コストを実現した。 ◎スムーズな動線と横断的な総合医局制度  新病院のフロア構造を考える際、新谷院長がこだわったのは「動線」だ。以前の施設は増築を重ねた影響により、使い勝手があまり良くなかったという。 その教訓を踏まえ、新病院には全体で計17基のエレベーターを配置。医師やスタッフがどこにでもスムーズに移動できる構造となった。加えて、診療科の医局についても、新谷院長の考えが取り入れられている。 「以前は各科の医局が離れた場所にあり、こちらの動線も気になっていました。診療の相談にも煩雑な手続きが必要で、各診療科の医師のいわゆる横のつながりが希薄だったのです。そのため、全ての医師が一堂に会して顔を合わせるように『総合医局制度』を導入。プライバシーに配慮しつつ、コミュニケーションの場となる共有部分を多く取り入れています」 ◎「慈心妙手」を掲げ患者さん中心の病院に  いわき市医療センターでは、基本理念として「慈心妙手(じしんみょうしゅ)」を掲げている。 「相手を思いやる気持ちで患者さんに接し、優れた医療技術で診療・治療を行う」という意味だ。この理念は新病院の設備にも反映されている。「カフェを併設したラウンジ、コンビニエンスストアを設けるなど、患者さんのアメニティーに配慮しました」 また、利便性向上の一つとして「患者サポートセンター」を新設。「ここでは入退院支援、地域医療機関との連携、医療福祉相談などを一括で行っています。最新の医療機器を含め、これまで以上に患者さんに思いやりのある機能がそろったと思います」 新谷史明 いわき市病院事業管理者兼いわき市医療センター院長  少子高齢化や医師不足など、地方の医療機関が抱える課題は多い。地域医療構想に基づいた医療機能の役割が求められる中で、新谷院長はどのような未来を見据えているのだろうか。 「高度医療や災害・救急医療を推進しつつ、地域医療支援病院として各医療機関との協力体制をより強固にしたいと考えています。もちろん、地域の皆さんとのつながりも大切です。市民向けの健康講座などを通して、今後も地域の健康を守り続けます」

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