九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

高度医療機能をさらに高め札幌医療圏のニーズに対応

市立札幌病院向井 正也 院長(むかい・まさや)1981年北海道大学医学部卒業、同附属病院(現:北海道大学病院)第二内科入局、米ニューヨーク州立大学留学などを経て、1997年市立札幌病院入職、2019年から現職。  2019年末に東京五輪マラソンの札幌開催コースが決まり、年明けの市内は慌ただしさを増している。コースの注目ポイントの一つが北海道大学ポプラ並木。選手が疾走するその並木にほど近い場所に建つのが市立札幌病院だ。2019年、開設150年を迎えた節目の年に就任した向井正也院長に、現状と今後の目標を語ってもらった。 ―開設当初の様子は。  1869年(明治2)年、札幌開拓のため隣接の小樽市銭函に設置された仮役場の片隅に設けられた小さな診療所がスタート。翌年、市内の官舎に仮病院が置かれ、千葉県出身の医師、斎藤龍安が着任、診療に当たりました。病院らしい本格的な建物の建設は20年後。外国人医師のグリム院長自らが設計し、その瀟洒(しょうしゃ)な外観デザインは評判となりました。市外から見学に訪れる人が少なくなかったと言われます。残念ながら建物は大正時代に焼失しました。 ―現在の建物は。  1995年の竣工です。敷地面積約4万3800平方㍍、延べ床面積約6万4500平方㍍、地下2階、地上10階、病床数672、屋上にヘリポートを設置しています。道央圏の3次救急の中核を担う救命救急センターを中心とする急性期医療をはじめ、総合周産期母子医療、精神医療などを提供。33の診療科を擁する基幹総合病院として、ほかの医療機関などからの受け入れ要請を断らない医療の実践を使命にしています。 1日平均患者数は外来約1600人、入院約550人。ベッド稼働率は一般病床では90%前後で推移。また災害拠点病院として72時間、電力供給可能な大型の非常用発電機を備えています。2018年、最大震度7を記録した北海道胆振東部地震では、札幌を含む道内広域でブラックアウトが発生しましたが、当院は3日間、診療をフルに行いました。 ―現在の取り組みを教えてください。  2013年に承認された地域医療支援病院の取り組みに力を入れています。 具体的には、2018年度の当院の紹介率82%、逆紹介率109%と高い比率になったのをはじめ、救命救急や周産期母子など各センターを中心とする24時間体制の救急医療の一層の強化。さらに、MRIやCTなど多数の検査受託、かかりつけ医と当院の医師が共同で診療に当たる開放型病床の運用、各種症例検討会や講演会の多数開催など、各種の取り組みを行っています。 北海道の全人口の4割を超える道民が暮らす札幌医療圏の人口増加は、今後数年でピークを迎え、以降は徐々に人口が減少し、2045年にはピーク時に比べ10%以上少なくなると予測されています。 一方、高齢者率は伸び続け医療需要が増加すると見込まれています。こうした変化への対応が今から求められています。 ―具体的な対応策は。  救急医療に対するニーズが特に増加すると見られており、高度急性期機能を高める取り組みが必要です。これを踏まえ、2019年度から実施の「市立札幌病院中期経営計画」の基本目標の一つに、医療を担う人材育成および先進医療への貢献を掲げています。 市民の期待に応える医療を継続的に提供するには、将来の医療を担う若い人材、多様な人材の育成が欠かせません。またゲノム医療、再生医療、AI医療など先進医療の動向を注視し、市民に還元できるよう適切に対応していくことも重要です。 人材育成は研修医のみならず専門医を含め、関連大学から各部門への実習生の積極的な受け入れを実施します。先進医療については、札幌市が取り組む医療関連産業集積事業に協力し、大学病院や研究機関と連携して適応患者の紹介推進など、新規の取り組みを行っていきます。 市立札幌病院札幌市中央区北11条西13―1―1☎011―726―2211(代表)https://www.city.sapporo.jp/hospital/

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高度急性期医療維持のため積極的な設備投資を

諏訪赤十字病院 梶川 昌二 病院長(かじかわ・しょうじ)1980年信州大学医学部卒業。同附属病院、長野県立木曽病院、諏訪赤十字病院副院長などを経て、2018年から現職。諏訪赤十字看護専門学校長兼任。  諏訪湖を臨む場所に建つ諏訪赤十字病院。長きにわたって、高度急性期医療を軸としながら災害医療や救命救急、周産期医療などに取り組んできた。今後の高齢化や人口動態を踏まえ、将来的な病院のあり方はどう変わるのか、現在の取り組みと展望を聞いた。 ─地域における役割は。  長野県の諏訪医療圏は、人口が19万人ほどです。地域がん診療連携拠点病院、地域医療支援病院などの認定を受け、地域の基幹病院としての役割を担っています。高度急性期医療においては、長野県のみならず、医療圏を越えて、幅広く対応している状況です。   これまでに設備投資も積極的に行ってきました。PET─CTやダビンチ、IMRT(強度変調放射線治療)などの最新装置を導入。鏡視下手術センター設置に続いて、2019年には手術室を二つ増やし、9室になりました。一つはTAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)に対応できるハイブリッド手術室、もう一つはロボット手術にも対応できる手術室になっています。   地域周産期母子医療センターでは、NICU(新生児集中治療室)、GCU(回復治療室)を備えています。少子化で産婦人科が縮小している中、この地域の周産期医療を担っていきたいと思います。 高額な投資が続いており、経営的には難しい状況が続いています。しかし、高度医療の充実を図るためには必要であると捉えています。材料費を見直すなど、ほかの部分を調整し、安定的な経営を目指していきたいと思います。 ─地域連携を強化されています。  諏訪医療圏の救命救急センターとして、24時間365日断らない医療を目指しています。中でも地域から期待されているのがドクターカーの運用です。諏訪市との運用協定を結ぶだけでなく、諏訪市や岡谷市、茅野市など6市町村で構成される諏訪広域連合と連携し、要請を受けて搬送しています。   近隣には中央道や峠などがあって規模の大きな交通事故も発生するため、そのような際には一人でも多くの患者さんが助かるよう、全力を注いでいます。   さらに、地域の医療機関との連携を進めています。現在は紹介率が100%弱、逆紹介率が100%超の状況で、かかりつけ医との連携が欠かせません。   その中で、精神科の医師が充実している当院に期待が寄せられています。認知症疾患の医療センターの認定も受ける方向で準備をしており、地域包括ケアの中核として機能していければと考えています。   新たなエネルギーシステムも導入しました。2018年3月に管理棟を新築。その際、この地域特有の温泉熱を利用し、下水熱などの地熱を利用したエネルギーセンターを1階に設置。省エネルギー化も実現できました。 ─今後の展望について。  2019年9月、中央道「諏訪湖サービスエリア」へのスマートインターチェンジ設置が承認されました。完成すると当院へのアクセスが非常に良好になるため、救急搬送も含め、広域の医療に貢献できると思っています。   2022年度、当院は赤十字に移管して100周年となります。これから先の100年を目指した病院づくりをする必要があります。地方都市は、人口動態や経済状況の見通しが厳しいのが実情。この地域の活性化のためにも、当院が地域医療の中心的な役割を担えたらと願っています。   当院は、24時間の勤務体制で、年間の病床稼働率が96%以上あり、非常に忙しい職場になってしまっています。働き方改革の波も迫ってきています。職員がゆとりを持って充実した仕事ができるよう、少しでも職員満足度の高い病院づくりを進めていけたらと思っています。 諏訪赤十字病院長野県諏訪市湖岸通り5─11─50☎0266─52─6111(代表)http://www.suwa.jrc.or.jp/

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医師増員で巻き返しへ 地域包括ケア病棟も新設

富士宮市立病院佐藤 洋 病院長(さとう・ひろし)1985年浜松医科大学医学部卒業、同附属病院内科。静岡市立静岡病院、米ロヨラ大学シカゴ校生理学教室、浜松医科大学研修センターなどを経て、2018年から現職。  医師不足による整形外科閉鎖をきっかけに、2015年「富士宮市地域医療を守る市民の会」が発足。病院、市、医師会、市民が協働で地域医療の維持に取り組んできた。その間、病院は病床転換や医師獲得などの手だてを講じ、体制を立て直してきた。今後の展望は。 ―地域における役割や医療の現状は。  二次医療圏のエリアは、ここ富士宮市と富士市の2市。当院は市で唯一の総合病院であり、救急指定病院、地域医療支援病院です。人口13万人の富士宮市と、富士市北部の一部、山梨県峡南地区の患者さんを引き受けています。   数年前は医師の派遣が十分に得られず、2014年には整形外科が一時閉鎖に。2016年には小児科、2017年には泌尿器科の常勤医師がゼロになりました。   最近では大学からの医師派遣が回復し、整形外科は医師4人体制に。2019年10月には病棟も復活しました。   同じく昨年10月、京都府立医科大学から常勤医が派遣され、泌尿器科も再開。当院には前立腺がん治療に力を発揮する高精度放射線治療装置トモセラピーがあり、これも再び活用できそうです。   小児科もこの春に増員予定で、5人体制になる計画です。人材確保に奔走してきたのが、やっと形になってきました。   研修医も4月に5人、入ります。当院の研修医は一般採用と同じ扱いです。給与体系がしっかりしており、場所柄も良いため、毎回定員に対してフルマッチを実現できています。 ―地域包括ケア病棟を新設。背景と展望は。  整形外科の閉鎖後、病棟が空きましたので、その有効利用のために地域包括ケア病棟にシフトしました。   5年が経過し、整形外科病棟の再開に合わせる形で昨年10月、30床の新病棟をオープン。今のところ、8~9割の稼働率です。   新病棟1階にある地域医療連携室を介し、院内急性期病床からのポストアキュートが「3分の1」、整形外科のリハビリ対応が「3分の1」、院外からのサブアキュートが「3分の1」の割合で運用できればと考えています。レスパイト入院の問い合わせもいただいていますので、対応していければと考えています。   富士宮市で地域包括ケア病棟を持つのは当院だけです。地域包括支援センターは6カ所あるのですが、回復期医療に十分に応えられているとは言えません。サブアキュートの患者さんをもっと積極的に受け入れたいものの、問題はやはりここでも人材不足。現在は脳神経外科と内科の医師を中心に運営していますが、本来は病院総合医を1人でも確保したい。ただ、なかなか難しいのが現状です。 ―今後の見通しについて聞かせてください。  まずは、急性期病院としての役割をしっかりと果たすこと。骨折などで夜間に救急車を呼ぶと静岡や御殿場まで搬送されるため、朝まで我慢される方や、手術のために搬送先からこちらに戻る方もいる。心苦しい限りですが、整形外科ではようやく昨年11月から夜10時まで受け入れ可能になりました。少しでも改善できるよう、考えていきたいと思います。   そして、経営改善も大きなテーマです。新病棟建設や電子カルテ導入などの先行投資が膨らんだことで、財政的にかなり厳しい状況です。診療体制は徐々に整ってきましたので、なんとか収益を増やしたいところ。需要に応じて地域包括ケア病棟の病床数を増やすなど、新たな展開も考えていくつもりです。   当院が得意とするのは、消化器系の腹腔鏡手術や肝炎治療。さらには循環器内科、腎臓内科なども強みです。これらを生かしつつ、より頼りにされる病院にしていきたいですね。 富士宮市立病院静岡県富士宮市錦町3―1 ☎0544―27―3151(代表) https://fujinomiya-hp.jp/

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福岡歯科大学医科歯科総合病院 病院長 阿南 壽

 新年あけましておめでとうございます。本年がすばらしい1年になりますよう心からお祈り申し上げます。また2019年、相次ぐ台風の襲来により被害に遭われた皆さまに衷心よりお見舞い申し上げます。 皆さまが一日も早く平穏な生活を取り戻されますよう心よりお祈り申し上げます。 さて現在、本院は23の医科診療科と12の専門歯科を含む四つの歯科診療科からなる総合病院として、地域の方々にご利用いただいております。さらに、地域医療への貢献を目的として、2017年10月に訪問歯科センター、11月に内視鏡センターを開設いたしました。 本院の特色は、「医科と歯科の緊密な連携」です。口腔の疾患や治療は全身の状態と相互に密接に関連しています。安心安全な医療をお届けするためには、歯科から医科へ、医科から歯科への双方向の連携が大切です。 その点、本院は歯科医師と医師との連携が密で、多職種による連携が円滑に行える最適な環境にあります。例えば、高齢者歯科による「お口の汚れと誤嚥(ごえん)性肺炎に関するわかりやすい説明とその対処法」や耳鼻咽喉科による「嚥下(えんげ)内視鏡検査や嚥下造影検査を基にした食事指導、リハビリテーション、手術法の選択」は、本院の特徴となっています。その発展型として、2019年10月に摂食嚥下・言語センター(ことばと飲み込みのケアセンター)が設置されました。 一方、2030年までを見据え、国連サミットでSDGs(持続可能な開発目標)が採択されました。また、SDGsはわが国においても、国家戦略の主軸に据えられたことが政府から発表されています。その17ある目標の一つに、「すべての人に健康と福祉を」という目標が掲げられています。 すべての人々が、それぞれの年代にあった、健康で満たされた状態(well-being)であることが望まれています。そのような流れの中で、2019年、水田祥代理事長のリーダーシップのもと、新病院の建設が開始されました。新病院は免震構造で、延べ床面積が現在の病院の約1・5倍となる予定で、今年の秋に新しく生まれ変わります。 これからもより機能的な地域医療支援病院として、「かむことから、要介護阻止へ、口腔の健康から、誤嚥性肺炎ゼロに」を目標として、地域の皆さまに信頼され、地域に貢献できる病院を目指す所存でございます。 本年もどうぞよろしくご指導、ご鞭撻のほどお願い申し上げます。

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地域と連携しながら強みを生かす病院へ

盛岡赤十字病院松田 壯正 院長(まつた・もりまさ)1976年岩手医科大学医学部卒業。盛岡市立病院、岩手医科大学医学部産婦人科学講座、盛岡赤十字病院副院長などを経て、2014年から現職。  盛岡医療圏における中核病院として2020年4月、開院100周年を迎える盛岡赤十字病院。災害救護や地域医療機関との連携を基本方針に掲げるほか、周産期医療にも積極的に取り組む。これらを陣頭で指揮する松田壯正院長に話を聞いた。 ―災害医療の体制についてお聞かせください。  赤十字病院として、災害医療・救護に取り組んでおり、1996年には岩手県基幹災害拠点病院に認定されました。救護方針を決定する災害コーディネーター、DMAT(災害派遣医療チーム)、dERU(移動型の仮設診療所)などを常時配置し、災害が発生した際は、即座に対応できる準備が整っています。 その活動は岩手県内にとどまらず、東日本大震災や熊本地震の被災地など全国各地で活躍しました。最近では、2019年10月に台風19号の被害を受けた宮城県丸森町へ、DMATを派遣しています。 ―地域医療機関との連携も大きな特徴ですね。  まず挙げられるのは、遠野市の公設助産院「ねっと・ゆりかご」との連携です。遠野市の出産数は年間200件ほどありますが、地元にはお産ができる医療機関がありません。 そこで市は2007年に助産院を開設し、周産期医療が充実している当院と嘱託医療機関契約を締結。インターネットを介し、胎児の情報などを共有するシステムがスタートしたのです。これにより、妊婦さんは遠くまで通院しなくとも専門的な検診を受けられるようになり、安心して出産を迎えることができるようになりました。 また、2016年に地域医療支援病院として認定されて以降、かかりつけ医や介護施設との連携を推進しています。「地域医療連携室」を設け、患者さんの紹介があった場合は30分以内に検査・診療方針などを決定。逆紹介も連携室が一括して対応するなどスムーズな調整を実現しました。 当院の患者さん自身が、かかりつけ医を探すことも可能です。病院入り口に設置したタッチパネル式のモニター「どこだ兵衛(べえ)」により、約90の連携医療機関の中から希望の施設を検索することができます。 地域医療連携では「在宅療養後方支援」も行っています。介護施設などと提携し、事前に在宅患者さんの情報を登録してもらうことで、緊急時には当院が速やかに対応するシステムです。現在は八つの施設、計195人の患者さんが登録されています。今後も、さらに数を増やしたいですね。 ―病院のその他の強みは。  産科や小児科などの周産期、外科、血液内科の入院患者さんが多く、中でも周産期は顕著です。当院における2018年度の出産件数は約780件で、岩手県全体の約10%を占めています。これは大きな強みですので、今後も周産期医療や産後ケアに積極的に取り組んでいきます。現在は通院型の産後デイケアを実施していますが、いずれは宿泊型の導入も視野に入れています。 さらに意欲ある職員たちも強みになっています。他病院での長期研修や内外での勉強会など、当院では積極的に職員のキャリアアップをサポートしており、資格を取得している看護師やスタッフが数多く在籍しています。彼らの存在は当院の基本方針の一つである「良質な医療の提供」に大きく貢献しています。 ―今後について。  人口減少や医師不足など、地方医療を取り巻く環境は厳しさを増しています。当院としても、医師や助産師の確保には苦労しているところです。しかし、だからと言って医療の質を落とすことはできません。 今後も地域の医療機関や行政と緊密に連携し、当院の持つ周産期医療などの強みを生かしながら、地域の皆さんの生命と健康を守っていきたいと思います。 盛岡赤十字病院盛岡市三本柳6地割1―1☎019―637―3111(代表)http://www.morioka.jrc.or.jp/

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職員同士の つながり強化 一丸となって改革を推進

町田市民病院 金崎 章 病院長(かねざき・あきら)1981年藤田保健衛生大学(現:藤田医科大学)医学部卒業。1987年東京慈恵会医科大学大学院修了。東京慈恵会医科大学第三病院などを経て、1988年町田市民病院。2019年から現職。  町田市民病院は町田市唯一の公的病院。1958年に開設し、地域の中核病院として2次救急医療、周産期医療などを担う。2018年には東京都による「地域医療支援病院」に指定。効率的な医療提供体制に貢献している。金崎章新病院長は「さらなる地域の信頼を得たい」と語る。 人と人の関わりを重視 同じ目線で対話したい  金崎病院長が町田市民病院に勤務しはじめたのは1988年。2009年からは副院長として病院を支えてきた。30年のうちに病院の規模も機能も拡大。病床数は倍増した。  歴史を見てきただけに「就任時は責任の重さから不安を感じた」が、同時に「やらなければ」と決心できたと明かす。そして今、副院長時代から考えていた「病棟再編」と「横連携の強化」に取り組んでいる。  「医療情勢が激変する中で生き残っていくには、医師だけでなく看護師、事務職員など病院スタッフが一丸となる必要がある」  例えば、入退院支援の専門チームを設置。患者一人一人の身体的、社会的、精神的不安に対応できるようになった。「まだまだ道半ばですが、職員同士がつながっているという手応えがある」と金崎病院長。  医師として大切にしてきたのは、患者と積極的に接すること。原点は「医師となって現場に出て『生き死に』に向き合った」ことにあるという。  「回復して退院する患者さん、残念ながら亡くなる患者さん─。一時期はそうした現実を見るのがつらくなってしまうこともありました。そんな中で、自分は患者とどう関わっていくことができるのか。そう考えるようになりました」  病院長となった今も、病床ではできるだけ患者の目線に近付こうと、いすに腰掛けて対話する。  「人と病気ではなく、人と人が接している感覚をお互いに持ちたいと思っているのです」 これからの在宅医療をどう支えていくか  患者の在宅医療に対する要望に応えようと、地域の医療機関との連携体制の強化にも努めている。ただ、厳しい現実に直面していることも理解している。  「現状の町田市の高齢化率は多摩地域の平均程度。ただ、増加傾向にあることを実感しています。在宅医療は、ご家族や近しい人のサポートがなければ継続していくことは難しい。また、老老介護なども問題化している。患者さんとご家族、それぞれの意思を尊重した医療を展開していくためには、さまざまな形での地域連携が求められます」  そして、がん患者の緩和ケアにも力を入れる。看取(みと)りではなく「緩和ケア病棟から退院する」ことを大切にする。  「チーム医療で患者さんとご家族の心と体のつらさを和らげていくことで、できる限り自分らしい時間を過ごしていただけるよう、支援に努めています」 市民の「信頼」を得られる病院へ  町田市民病院は「地域から必要とされ、信頼、満足される病院」を基本理念として掲げる。  「この理念を実現するためには、地域における役割分担を認識し、その機能を担っていくことが重要。医療レベルをさらに高めていきたい。例えば当院の34の診療科において、もっと横のつながりをつくる。コンパクトで効果的な医療を提供できる体制を目指します。患者さんも働く人も、自分たちの病院なんだと安心できる場所にしたい」  何でも経験してほしい、自ら学ぶことを大切にしてほしい。若手医師には、自身も心がけてきた姿勢を伝えている。「誰かから与えられるのを待っているだけではチャンスを逃してしまう。行動してこそ進歩があり、好機にも巡り会えるのだと思っています」 町田市民病院東京都町田市旭町2─15─41 ☎042─722─2230(代表)http://machida-city-hospital-tokyo.jp/

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起こりつつある変化 向かうべき場所は?

豊川市民病院松本 隆 院長(まつもと・たかし)1982年名古屋市立大学医学部卒業。英ロンドン大学神経学研究所、名古屋市立大学病院、名鉄病院などを経て、2002年豊川市民病院入職。2019年から現職。  「足りないのは覚悟と自信、戦略です―」。4月の就任時に全職員に向けて所信表明。抱負と共にビジョンと具体策を打ち出した新院長の松本隆氏。目指すは「北欧国家型病院」の実現だ。どのような病院を、どんな方法でつくろうとしているのか。今後にかける思いを語ってもらった。 「高機能」「高収益」「高労働環境」を  新病院開設は2013年。旧病院は満床が続き、実に多忙だったと松本隆院長。心機一転で臨んだ新天地では2年で黒字へと転換した。だが「2017年から赤字に転落。ここ数年、病院がなんとなく目標を失っていた気がして、何とかしたいと思っていました」  複数の病院認定を取得する準備は整いつつあった。そこで、院長就任を機にこれらを一気に完遂。さらに「高機能」「高収益」「高労働環境」の「北欧国家型」の病院へと向かう意思を所信表明に込めた。「病院全体が一丸となってまた盛り上がっていきたい。それを伝えたかったのです」  「高機能」は立て続けに実現した。12月1日付けで念願の救命救急センターに指定。「3次救急を全うする覚悟です」  11月には地域医療支援病院にも認定された。「市内のほか新城市、豊橋市の先生方も連携登録医として多く登録してくださった。積極的に強みをアピールしたいですね」。さらに2020年度には、がん診療拠点病院(愛知県知事指定)を目指す計画もある。  「高収益」に関してもこれからのイメージは固まっている。「2020年5月に電子カルテを一新します。コストを抑え、診療報酬の状況についてしっかりと検証し、合理化を進めたい」。入退院調整にも引き続き力を入れていく。 若い医師を同じ目に遭わせない  「高労働環境」の実現については強い思い入れがあるという。  「ロンドン大学へ行ったときは衝撃でした。難しく、高い技術が求められる手術が、医師のQOLを保ちながら行われていたのです」  帰国後も働き詰めの日々が続き、講師時代に燃え尽きた。大学を離れ、市中病院に勤務していたところ、豊川市民病院の脳外科部長として誘われた。  「若い先生を同じ目に遭わせてはいけないと、主治医制とチーム医療の融合を図りました。医師4人で『月3日完全フリー』のルールを徹底して推進しました」  労働環境の改善と医療の質を両立した。なぜ、これまでできなかったのか。「問題は医師側の先入観にもあったと思います」。この例をベースに各科に応じた改善を喚起。消化器内科が夜間と週末は当番制になるなど変化が起こりつつある。  「県内で最も女性医師が働きやすい病院」も目標として掲げる。「女性医師のワーキンググループで働き方改革を検討中。2020年は医師、2021年は職員全体へ広げたいですね」 人が集まり幸せになる病院に  脳外科医になったきっかけは、シンプルにかっこいいなと憧れたからです」と振り返る松本院長。「人間の体をつかさどる脳は、一番難しい領域というイメージがあった。そこをダイレクトに触って治せるなんて、すごいなと」  実際に取り組んでみると想像以上に興味深く、自身の性格にも合っていたようだと話す。  院長職にも、同様の感慨を抱いているという。「やりがいは大きいですね。こうやって集中して取り組めるのは、職員の協力あってこそ。感謝しています」  人が好きだ。関わるすべての人が少しでも満足できる病院にしたいと願う。ホームページの院長あいさつを締めくくる言葉に、その思いが込められている。  「人が集まり、集まった人が幸せになる、そんな病院にしたい」 豊川市民病院愛知県豊川市八幡町野路23 ☎0533─86─1111(代表) https://www.toyokawa-ch-aichi.jp/

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国家公務員共済組合連合会 平塚共済病院 創立100周年

地域と共に歩んで100年 新病院建設にも意欲  1919(大正8)年に開院した平塚共済病院。神奈川県湘南西部地域の中でも、とりわけ人口の多い平塚市を中心に、周辺地域に暮らす人々の医療を支えてきた。100周年を迎えた平塚共済病院のこれまでの歩みと、今後病院が目指すべき存在意義について稲瀨直彦院長に聞いた。 ―平塚共済病院が開設された経緯は。  当院はもともと海軍火薬廠(しょう)の中にあった診療所が始まりです。当時は今のように地域の誰もが来るような病院ではなく、限られた人が利用するような小さな病院でした。  1945年7月に空襲で建物の3分の2が焼失し、昔の資料はほとんど残っていません。残念ながら顔写真がわからない歴代の院長先生もいらっしゃいます。戦争と共に歩んできた、歴史の深い病院であることがお分かりいただけると思います。  1945年10月に「平塚共済病院」へ名称を変え、一般市民の方を診療する病院へと変わりました。  平成に入ってからは、リハビリセンター、透析センターを拡張。さらに2002年には脳卒中センターと心臓センターを開設。地域内の循環器・脳の疾患に迅速に応えるため、24時間365日患者さんを受け入れる体制を整えました。  昨今では平塚市民病院との連携も強化しており、救急受け入れは年間5000件超。時代のニーズを捉え、「市民に開かれた身近な病院」として歩んできました。 ―地域の連携は。  行政やクリニックの先生方との連携はかなり取れていると思います。保健師さんや救急救命士さんと話をする機会も多いですし、病院主導で開催する「市民公開講座」も好評をいただいています。地域医療支援病院として承認をいただいている以上、「地域に質の高い医療で貢献する」という役割が求められています。  その一環として、「在宅医療・介護連携情報システム」(メディカルビッグネット)の運用を2020年の4月に開始する予定です。クリニックだけでなく、介護施設、慢性期病院とのさらなる連携強化が狙いです。  病状が落ち着いた患者さんの転院先をどこにするかは、中核病院であれば皆が抱えている課題です。  医療側と介護側が患者さんの情報を共有することによって、よりスムーズな入退院調整業務が図られ、患者さんにより質の高い医療を提供できる、と考えています。全国の病院のモデルとなれるように、積極的にこの課題に取り組んでいきたいですね。 ―今後の病院のあり方は。 稲瀨 直彦 院長  「患者さんの視点に立った医療を提供する」ことがやはり原点にあります。  そのためにわれわれができることは、たくさんあると考えています。一つは研修生の受け入れ態勢を強化し、教育体制を整備すること。「ここで働きたい」と志望する医師が一人でも増えたら、医師不足解消に向けた大きな前進になると思います。  そしてもう一つ、新病棟建設を進めていくことが使命になると感じています。増築を繰り返して拡大してきましたが、建物的にも古さが目立ってきました。高度な医療を実施していく上でも、また超高齢社会において病院と地域が一丸となって患者さんを迎え入れていくためにも、病院の設備や建物自体が万全でなくてはなりません。  日々、目の前の患者さんと向き合いながら、今後も地域に開かれた健全な病院運営をしていきます。 国家公務員共済組合連合会 平塚共済病院神奈川県平塚市追分9―11☎0463―32―1950(代表)https://www.kkr.hiratsuka.kanagawa.jp/

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