80周年を迎える来春、満を持して独法化へ
滋賀県の南端にある甲賀医療圏は、甲賀市と北隣の湖南市で構成される。両市が母体となって共同運営する公立病院は、人口15万弱の圏域随一の総合病院。来春には地方独立行政法人に移行し、さらなる成長を目指す。
―地域性や病院の特徴は。
病院をつくったのは、今の甲賀市と湖南市にあたる旧甲賀郡。名神高速道路や新名神高速道路がない時代は「陸の孤島」で、地域医療を一手に引き受けてきたそうです。
今では両市とも工業団地を擁し、県内の工業生産額は1、2位を争うほど。東海道や名神高速に近い湖南市は比較的若い人が多く、甲賀市はいわゆる農村型で高齢化が進む地域です。医療圏には他に200床の病院が二つありますが、ここが基幹病院。ずっと地域密着型でやってきました。
当院は国診恊(全国国民健康保険診療施設協議会)の会員施設で、地域包括ケアシステムの担い手としての責務もあります。先代院長は国診恊の会長を長らく務めました。その前の会長が地域包括ケアの先駆けである広島の公立みつぎ総合病院院長。そんな関係で、国が言い始めるずっと前から地域包括ケアに取り組んでおり、訪問看護や訪問リハビリなどの在宅医療を進めてきました。
まずは標準的な医療をしっかりやること。新しいものは取り入れつつも住民の需要に的確に応える、そんな病院であり続けることが使命だと思っています。
―新築して5年、機能拡充を進めてきました。
新築で病床は413床に減ったものの、病棟数は増えました。業務の負担増に対応するため看護師を増員したところ、7:1看護体制への移行が可能になりました。
地域医療支援病院も、地域連携に力を入れて紹介・逆紹介を進めた結果としてついてきた。療養病床から回復期リハビリ病棟へくら替え後、地域包括ケア病棟や緩和ケア病棟も開設するなど、多様なニーズに応えてきたつもりです。
課題はやはり、患者さんの確保。目標は、80%に届かない病床稼働率を85%にまで高めたい。収益も昨年までは右肩上がりだったが、今年は微妙。上半期に受け入れが減った救急の強化、意識改革が急務です。
そして、研修医をもう少し確保したい。去年は希望人数が定員を超えたので今年から定員5人に広げたのですが、希望は4人でした。毎年5人程度を確保できれば、救急の重要な補助になるでしょう。
―来春、地方独立行政法人へ移行。求める変化は。
当院は一部事務組合立で、市議会とは別に病院組合議会が組織されていますし、職員もプロパー。市民病院の独法化に比べると、変化cは少ないでしょう。
それでも地方公営企業法のしばりがなくなることで契約方法を見直すなど経営が効率化できる。さらに給与体系や人事評価ですね。公務員体質を引きずっていては、未来はない。当面は現状を維持しますが、将来はインセンティブなどで仕事を評価し、やる気をより引き出す体制にできればと思います。
ほしいと思う人材も確保しやすくなるのではないか。今、足りないのは、熱意を持って若い人を引っ張る指導者。頑張ってくれる人にそれなりの報酬が払えれば、可能性が広がります。
院長になって6年目。実感するのは、医療安全や品質、システムなどが少しずつ洗練されてきたこと。病院とはこういうものだと、メディカルスタッフの理解も深まっています。まだまだ成長の過程ですね。
私自身は、みんなをぐいぐいリードするタイプではありません。実行に移すのは、しっかり話し合ってから。スピーディーではありませんがその分、走り出すと速い。これからもチームワークを第一に、地に足のついた病院運営を続けていきたいと思っています。
公立甲賀病院組合 公立甲賀病院
滋賀県甲賀市水口町松尾1256
TEL:0748-62-0234(代表)
http://www.kohka-hp.or.jp/