高い専門性と個々の患者への対応力を
1917年に国内初の公立結核療養所として開設。今年4月、前月まで大阪大学大学院医学研究科呼吸器外科学教室の教授を務めていた奥村明之進氏を院長に迎えた。
―院長就任が決まった経緯を聞かせてください。
大阪大学の呼吸器外科は、細分化する前の旧第一外科の時代から刀根山病院にスタッフを派遣してきました。今、阪大呼吸器外科にとって、この病院は重要な関連施設の一つと位置付けられています。
そんな折、前院長から「院長職を引き継いでほしい」との打診をいただきました。もともとつながりが深い病院であったこと、呼吸器を強みとする病院で私自身の経験も生かせると考えたことから、快諾して今に至ります。
―着任から3カ月余り。感じている病院の強みは。
当院は、呼吸器外科と呼吸器内科、神経内科、整形外科の4部門を柱としています。
一つ目の強みは神経内科です。前任、さらにその前の院長も神経内科が専門で、神経内科の診療を拡張してきました。神経難病、筋ジストロフィー、ALS、パーキンソン病といった難病を中心に診ています。
多くの患者さんが人工呼吸器を使いながら入浴などもできている。診療とケアを一括してでき、患者さんの予後も延びています。
整形外科もユニークです。結核性脊椎炎や骨関節感染症の外科的治療にも積極的に取り組み、非常に成績がいいですね。
骨関節結核の手術はこの近辺では当院しかできません。症例数は多くありませんが、薬物治療で効果が見られない方が全国から紹介されてきます。リウマチ治療も一所懸命やっていて、手術以外の薬物治療も含め、高度な医療をしています。
呼吸器外科は鏡視下手術の技術が高いのが特徴です。年間約150例の肺がん手術のうち8割ほどは胸腔鏡手術で実施しています。
呼吸器内科は2部門。肺がんグループは免疫治療薬を取り入れて治療成績を上げつつあるというところです。非がんグループは結核患者減少の一方で増加が課題となっているCOPDや間質性肺炎の治療に取り組んでいます。
横断的な診療科では、リハビリテーション部門が優れていて、呼吸リハビリに加えて四肢の筋力が衰えている方の筋力を回復させることなどに注力しています。
リハビリ用ロボットも1台導入して、保険適用の拡大を目指した臨床研究にも取り組んでいます。
―目指す方向性、あるべき姿は。
まずは専門性の高い医療で刀根山病院の地位を確立すること。呼吸器の分野で言えば、外科内科含めて、よりきめ細かい診療をしていくことだと思います。
地域医療も重要だと思っています。当院の筋ジストロフィーの患者さんはほぼ在宅で、時々、当院に短期入院しています。今後はさらに在宅移行が進みます。豊中市の民間病院とも密接に連携して、個々の患者さんに適切な治療を供給する「対応力」が必要になってくると思います。
当院と豊中市の調剤薬局とはオンラインのネットワークが構築できています。当院が発行した処方箋の内容を調剤薬局側が確認した際、患者さんの残薬状況などに応じて処方日数などをスムーズに変更できる仕組みです。
実際に次回の受診までの間の日数を考えたら薬が多過ぎたり、患者さんが処方されているものと同じ種類の薬をまだ持っていたりと、さまざまな状況があります。調剤薬局で調整がしやすくなったことでかなりの薬剤費の節約につながったというデータも出ています。
このような取り組みが全国に広がれば、医療資源の節約につながるはずです。将来的には、地域の開業医の先生など、さまざまなところと有機的につながっていけたらと考えています。
独立行政法人国立病院機構刀根山病院
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