生活する人、働く人の味方であり続けたい
◎地域住民、労働者、そして職員のために
当院は34年前、大阪市港区にあった診療所が母体となって当地に開設した病院です。ここを選んだ理由は、周辺に市民病院くらいしかなく、医療過疎地だったこと。そしてもう一つは、山林労働者のためです。
大阪の診療所では港湾で働く労働者の塵肺や頸腕腰痛などの職業病を中心に診ていました。一方和歌山でも当時、林業労働者の振動障害が多発していました。それを救いたい、ここなら両方診られるだろうとこの地を選んだのです。
以来、時代の変遷に応じつつも、①地域住民のため、②労働者のため、③病院で働く人々のためをモットーに運営しています。
労働者の安全衛生という視点は、三つ目の病院職員のためにもつながっています。20〜30年前はどこの現場でも、医者や看護師は自らを犠牲にして患者さんに尽くすというのが当たり前の世界でした。しかし当院はワークライフバランス推進に早くから取り組んできた経緯があるのです。
今も、働きやすい職場づくりには力を入れています。院内保育園を利用して出産子育てする職員は多い。子だくさんで、職員間では「子宝病院」とも呼ばれています。
◎幅広いニーズに応える
地域において、どういう病院を目指していくか。専門分野に特化して生き残る方法もありますが、当院は地域にどれだけ根差し、ニーズに応えられるかを一番に考えています。
2年前には、療養病床を持ちながらも機能していなかった別の病院を統合し、280床に増床。急性期一般病床56床、HCU4床、地域包括ケア42床、回復期リハ50床、障害者施設等一般55床、緩和ケア15床、医療療養型58床で、超急性期以外は一通りそろえています。この規模の民間病院が目指すモデルケースの一例になりたいとやってきました。
訪問看護を始めたのも30年以上前。まだ診療報酬もつかない時代でしたが、とにかく患者さんのもとへ、そんな思いでした。
現場で、特に高齢者を診るときは、特殊な病気というより、生活習慣病、作業関連疾患の悪化や感染症などのどちらかというとコモンディジーズへの対処が中心になります。今は総合診療科ができ一般的な病気、患者さんの全身を診る重要性が言われています。われわれはこれにも早期から取り組んできたつもりです。
◎伊都橋本医療圏を支える
ここ橋本市は、大阪府と奈良県に接する和歌山県北東端にあります。住民は大阪の衛星都市だと思っていますが、和歌山市民にとっては北のへき地といった印象でしょう。逆に隣接する奈良県五條市とは関係が深く、当院も1〜2割は五條からの患者さんです。
橋本市と伊都郡3町を合わせた伊都橋本医療圏の人口は約9万人。橋本市民病院と当院が中核病院となって地域医療を支えています。 地元医師会である伊都医師会は、会員同士が密に連携していて活動も積極的。2000年には仮想病院「ゆめ病院」を立ち上げ、電子カルテの共有化など病診連携を進めた結果、総務大臣賞なども受賞しました。
そんな地域特性がありますが、やはり土地柄、若い医療者へのアピールには欠け、当院も医師不足が大きな課題になっています。今後はアグレッシブに動かなければいけない。医局との関係も少なかったのですが、2018年度には臨床研修病院の資格を得て若い医師たちの研鑽をサポートしていければと思っています。
われわれの理想は、命の輝きを大切にする医療・介護です。つまり、一人ひとりの生きざまを尊重すること。ケガや病気から一日も早く回復できるようリハビリにも力を入れていますし、たとえ完全に回復しなくてもグループ内の施設などでサポートしていける体制を整えています。
これからも最善の医療、看護、介護を通して、一人ひとりの命と向き合っていきたいと願っています。
医療法人南労会 紀和病院
和歌山県橋本市岸上18-1
TEL:0736-33-5000
http://www.nanroukai.or.jp/