院内センター化で図る、地域医療の充実
―昨年4月に病院長に就任されました。地域でどのような役割を果たしますか。
当院は大阪市の東側にあたる城東区、鶴見区、旭区を医療圏とし、約40万人の住民の方々に質の高い医療を提供してきました。
地域の中核病院として開業医の先生やほかの病院からの期待も大きく、今後も圏内の医療水準を上げるために、中心的な役割をはたしていきたいと思います。
地域医療支援病院として病院内完結型の医療体制から地域完結型医療体制に移行し、かかりつけ医の先生方との互恵関係を築く努力をしています。その取り組みの一つとして「センター化」をさらに進めていきます。
既存の心臓・血管センター、創傷治癒センター、脳卒中センター、無菌治療センターに加えて、消化器センター、呼吸器センターを新設しました。
さらに、センターの役割を改めて定義したうえで、それぞれのミッションを達成してもらうために、アクションプラン(行動計画)を定義して、各センターがどのような疾患について重点的に取り組むのかなどを明確化してもらいました。
こういった、当院の方向性について、私はよく「診療科が縦糸で、センターは横糸である」と説明します。縦と横が緊密に組み合うことで水も漏らさないような丈夫な体制を作ることができるのです。
患者さんのメリットとしては、センター化されたことで検査や治療がスムーズに進むということ、高い水準の医療をむらなく受けられるということが挙げられます。
こういった方針は地域の医師会からも非常に高い評価をいただいています。
―祝日開院だけでなく救急体制についても整備を進めています。
まずはオンコール体制を充実させ、なにかあった場合には当直医が専門医になんでも相談できる仕組みを作りました。
昨年10月1日から、原則として平日の夜間をすべてオンコール体制でカバーしています。オンコール医師は家で待機しており、CTやMRIの画像をそれぞれの自宅で見られるようにしました。
患者さんのプライバシーを保護する目的で、画像へのアクセスをライセンス化したうえで、システム開発を担当した会社に堅固なファイアウォールの作製を依頼し、システム運用に関して細心の注意を払っています。
これを支える救急集中治療科も強力な布陣であり、「ノーといわない医療」を大切にしており、「祝日開院」と共に、地域医療を支えていると自負しています。
―がん診療についても拠点病院の一つです。
さらに、当院は大阪府がん診療拠点病院でもあります。毎年900例程度の登録症例があり、充実した外来化学療法や優秀な放射線医による放射線治療を行っています。外科については乳腺外科を含めてすべてカバーしています。
がん診療において緩和医療を提供できるかどうかも重要と考えています。緩和といっても、ただ終末期の患者さんだけを対象にするのではなく、診断がついてすぐ患者さんとご家族の方をサポートします。
「The New Eng landJournal of Medicine」で報告されていましたが、がんの場合、診断がつくと患者さんの半分以上の方がうつ状態になります。それをサポートする体制を作ると、サポートがない場合に比べて予後が非常に良いことがわかっています。
現在、当院の精神科は非常勤体制ですが、今年4月からは常勤医が着任することになりました。体制をさらに充実させて、病院に入院されているがん患者さんに限らず、たとえば呼吸器の患者さんなど、一般疾患を対象とした緩和ケアも充実させたいと思います。
―地域連携についてはどのような取り組みを。
年に2回、大阪市東部地域医療連携学術講演会を開催して、開業医の方に多数集まっていただいています。当院の診療科が各回交代で発表を行うとともに、開業医の方にも必ず1人は壇上に上がっていただきます。連携にあたってそれぞれの顔を知っていることは非常に大切で、シームレスな連携のカギになると思います。
さらに、当院は訪問看護ステーションや「城東園」という特別養護老人ホームも併設しています。 今後は独居の高齢者が増えるという予測もありますので、在宅医療がより一層求められる時代になるでしょう。
幸い、在宅医療に熱心に取り組んでいる開業医の方々が地域にいらっしゃって、非常に助かっています。当院としては、その先生の負担をできるだけ軽減するために、さまざまなサポートをさせていただくことを考えています。
こういった取り組みに加えて、将来的にはDPCⅡ群病院の指定を受けたいと考えています。指定が取れれば大きな設備投資も可能になりますし、ますます優秀な人材が集まって医療スタッフがさらに活気づいてくれるだろうと期待しています。
「患者さんにやさしく、明るく元気な病院」をキャッチフレーズに、地域の先生方と連携して、地域医療の発展に貢献したいと思います。