人に寄り添う看護を70 周年を迎えた附属看護学校、新校長に就任
独立行政法人 国立病院機構都城医療センター附属看護学校
敗戦から2年後の1947年。5月に新憲法が施行され、その4カ月後に国立都城病院附属の看護学校が開設された。年を重ねること70回。歴史を継ぐ新校長は、多才、雄弁で知られている。
●陸軍病院から移管
附属看護学校の今年の新入生が70回生になります。白埴(しらはに)会という同窓会が2年ごとに開かれますが、すごい先輩方がたくさんいらっしゃいます。私などは若造扱いされるので、伝統の重みを感じますね。
昔のデータはわかりませんが、現在、卒業生で地元に残るのは約3分の1です。入学する学生は宮崎と鹿児島出身者がほとんどですが、九州を中心に全国に散らばります。国立系の学校ですので国立病院に入る方が多いですね。そこである程度看護師としての修練を積んで地元に帰る方もいます。県内医療機関にも関係者が多くて、基幹病院の師長クラスにも白埴会の方がいらっしゃる。
現在、学校の定員は1学年約40人。3年制で国家試験合格率は4年連続で100%を達成しました。九州管内だと嬉野医療センター附属看護学校が5年連続だったと思いますが、双璧ともいえるすばらしい結果ですね。
国立病院機構内、ナショナルセンターまで含めると就職率は92%です。内訳は宮崎県内が32%、当センターへの就職は18%で、7人しか入職していません。要するに自院のための養成所ではなく優秀な看護師を育てて全国に送り出すという使命を背負っているわけです。
今の学生は4年制指向が強まっており、都会の看護学校では大学と提携して4年制にする動きもありますが、地方の経済事情もあるため、できれば3年で卒業して一線で働いて自立したいと希望する学生も昔と変わらず多いようです。
●看護教育の高度化
県内の病院関係者も専門看護師や認定看護師資格の重要性は当然わかっているのでしょうが、現実的に余裕のある病院が少ないんですね。認定看護師で半年研修、専門看護師だと2年間出すことになりますから。
例えば、これまで都城地域に感染管理認定看護師(ICN)は1人しかいなかったんです。3年前に宮﨑市の県立看護大学に認定看護師教育機関ができたので医師会病院や当センターから出してようやく4人のICNが生まれた。これは実は大問題で、さまざまな連携病院があって在宅に帰ったりもするわけですから単独の急性期病院だけ感染管理を徹底しても意味がないんですよ。
また、看護師養成期間を4年制に延ばすことで優秀な看護師養成を担保できるとは、現時点では思っていません。大事なのは現場教育(OJT)で、本人の意欲と努力こそが一人前の看護師の条件になる。たしかに3年は短いです。医師も薬学も6年ですから、看護師教育の3年間はかなりの詰め込み教育になります。少しゆとりがないような気もしますが、それよりも懸念しているのが、はたして入学前の18年間で十分な人格形成ができているのだろうかという点です。
学生と接して感じるのは、打たれ弱くて自分本位で、人に寄り添う気持ちが欠けているのではないかということ。ちょっと心配していますが、これは医師にもいえることで、出世欲がなかったり、留学も希望しない医師も多い。あげくのはてに、医局のカンファレンス中でも5時を過ぎたら「帰る」と言い出す研修医までいる始末です。
NHKの連続テレビ小説『とと姉ちゃん』を観ていると、かつての子どもたちがなんらかの役割を与えられていたことがわかります。子守だったり掃除だったり、上下関係や隣近所関係でも学ぶことが多かったはずです。
看護師には思いやりと弱者に寄り添う気持ちこそ必要です。知識や技術を詰め込むだけでなく人格形成教育ができるのなら、4年制もいいのかもしれません。看護師はプリセプター制度があるので、誰かがOJTで看護のなんたるかを気付かせてあげるような環境のほうが良いのかな。カリキュラムしだいですね。
都城医療センター附属看護学校
宮崎県都城市
祝吉町5033番地1号
☎0986・22・3690( 代表)
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