幅広い領域を学べます
■小児科とは成育医療
当教室では小児医療に関するあらゆる領域の臨床と研究を担当しています。
小児科の病気は大人の内科と同じ数があります。加えて新生児や先天性疾患などもあって、幅広い領域を診なければなりません。それぞれの領域に専門の先生がいます。教授である私が臨床、研究のサポートをすることで、子どもたちの健康を守っていきたいと考えています。
小児科医療とは成育医療です。生まれてから成人になり、そして親になる。健やかな子どもが生まれ、育ち、次世代へと生命をつなげていく、そのサイクルをサポートするのが私たちの役割です。
■日本の未来のために
病気の子どもが回復する、そして自分が治療した子どもが成人する。その姿をみるのが小児科医のやりがいですね。
日本の未来を支えていくのは子どもたちです。子どもたちを守ることは、日本の未来を守ることにもつながります。子どもたち一人ひとりが日本の未来を支えてくれるので、仕事に対する社会的な意義を感じます。
この社会的使命を柱にして、若い人たちには一緒にがんばろうと言っています。
■子どもたちの代弁者であれ
もたちの代弁者として社会に発信する役割を担っています。高齢者には選挙権があるので、投票ができますが、子どもには選挙権がありません。子どものためになる政策について、社会に発信していくことが小児科医には求められています。
■小児科医に必要なこと
相手のことを思いやったうえでのコミュニケーションに長けていること。それこそが小児科医に求められる資質でしょうね。
■かたよりのない勉強が可能
病気に対応できるように、それぞれ専門グループがあり、かたよりのない勉強が可能です。大都市の大学病院だと1つの専門に特化した病院が多いと思います。しかし、地方ではあらゆることを診ないと地域の医療ニーズにこたえられません。
■自身の研究テーマについて
私の専門は腎疾患で、主に腎臓におけるレニン・アンジオテンシン系を研究しています。
レニン・アンジオテンシン系は血圧などの調節にかかわるホルモンの総称です。腎臓疾患になるとレニン・アンジオテンシン系が、より腎臓に悪影響を及ぼすので、それを阻害する治療の研究をしています。
レニン・アンジオテンシン系は、胎児のときに腎臓をつくる働きがあります。そこがうまく働かないと、将来、慢性腎臓病になるリスクが高くなります。
また子どもや乳児の尿中のアンジオテンシンを測定することによる腎疾患の早期発見に関する研究も行っています。
■地域だからこそ学べること
徳島大学は、県内の病院のほかに、香川、高知にも関連病院があるので、それらの病院と連携してプログラムを組み、優秀な小児科医の育成につとめています。
大病院では、高度医療を体験し、難治性疾患を診ることができて勉強になるのは確かですが、外来で1人の患者さんを診られるのは週に1回ほどです。熱があるときに診ても、次に診たときには治っていて病気の経過を診られません。
風邪や上気道炎、発育不良など一般的な疾患は、まめに診なければなりません。医師が少ない病院では病気の経過をつぶさに診ることができるのです。
教室員には、地域の病院で患者さんとそのご家族の背景がわかるような勉強をすることが大事だと言っています。
小児科の特徴は患者さんとの接し方が、ほかの科とは異なることです。大人だと、自分で医師に症状を訴えることができますが、子どもは、意思を大人のようには正確に伝えられません。
病気の背後には、家族の問題などが内包していることもあります。また心の問題、虐待なども関係してくるので、子どもさんだけでなく、保護者や家庭環境までを含めた診療をしなければなりません。
地域の病院で地域の子どもたちを含めて密度濃く診ることは、小児科医にとって非常に大事なことなのです。
■メディカルゾーン構想
徳島県には総合メディカルゾーン構想があります。
「県民医療の拠点としての総合メディカルゾーンを整備する」とした知事と学長の合意に基づいて徳島大学病院と隣接する県立中央病院が取り組みを進めています。
現在、徳島大学病院と県立中央病院の間は塀で区切られていますが、いずれは、塀が取り払われます。
小児科では県立中央病院が小児救急に特化して、私たちは高度医療や三次救急に特化して徳島県の小児医療を支えていくつもりです。
経営母体が異なる病院同士の協働は珍しく、先進的な取り組みだと思っています。