和敬清寂の心得で消化器内科学を発展させる
消化器・腎臓疾患を担当する鳥取大学の機能病態内科学分野(第二内科)。年以上続く教室を受け継ぎ、さらに発展させる磯本一主任教授に、教室の特徴や今後の展望、6月に会長を務める日本消化器病学会中国支部例会の概要を聞いた。
―医局の特徴とこの分野の魅力は。
機能病態内科学分野では消化管疾患、胆道疾患、膵疾患、肝臓疾患、腎臓疾患の臨床および基礎研究を行っています。同門の先生が多く、医局旅行などのレクリエーションを通してアットホームな雰囲気やチームワークの良さが培われているように思います。
臨床経験をたくさん積めることもあって、入局を志望する若い人も多く、山陰・中国地方の地域医療を担う医療人を育成してきた伝統があります。プライマリ・ケアと救急疾患に関しては主に関連病院で症例を積み重ね、大学では先進医療を実践するというように、関連医療機関と協調して教室を運営したいと考えています。
消化器内科医は上部消化管内視鏡検査や内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査などを実施するため、高度な技術が求められ、手技を磨くこともできます。内科でありながらダイナミズムが感じられる部分です。
同時に、薬物療法において全身管理の視点で治療の戦略を緻密に立てていく必要もあります。最新の技術と知識を学び続けなければならないのは言うまでもありません。メディカルスタッフの方たちとの緊密な連携が必須ですので、コミュニケーション能力も求められます。
―これから目指していくことは。
大学改革新専門医制制度、働き方改革...流動的な時代だからこそ、翻弄されないことが大事なのではないでしょうか。
私は、「和敬清寂(わけいせいじゃく)」という茶道の心得を示す言葉が、医療にも当てはまると考えています。チームワークを高め、先輩や患者さんを敬い、純粋な気持ちで研究し、救急でも落ち着いて対応する。この「和敬清寂」という心構えで仕事をしていきたいと思います。
今後、力を入れたいのは産学連携、医工連携です。これまで、レーザー光による食道がん治療の研究を積極的に進めてきました。化学放射線療法後、残ったがん細胞に光感受性物質レザフィリンを投与し、さらにレーザー照射することでがん細胞を壊死させる治療法です。この効果をさらに高めたいと考えています。
また、レーザー光によってがん細胞を光らせ、胃がんを診断する光線力学診断(PDD)の臨床研究にも取り組んでいます。がんは早期発見できるかどうかにかかっています。早期の発見をより確実かつ客観的に可能にする方法を確立すべく、尽力していきたいと思います。
―6月の学会については。
6月15日(土)、16日(日)、米子コンベンションセンターで、第111回日本消化器病学会中国支部例会と教育講演会を開催します。国内のエキスパートの先生方を招き、消化器がんの克服に向けたワークショップや講演を行います。
「コンパニオン診断」や「ゲノム医療」が、ここ数年、大きな話題になっています。急速に進歩している分野のため、現在の情報をきちんと共有し、知識のアップデートを図る場にしたいと思っています。
専門医部会では高齢者のがんのマネジメント事例を共有したいと考えています。これは高齢化が進行する山陰らしいテーマと言えるかもしれません。教育講演会では、食道がんのトータルマネジメントや大腸がんの内視鏡治療、肝胆膵がんなどのお話をしていただきます。
漢方診療、消化管アレルギー疾患、女性医師の会主催のセミナーも開く予定です。6月に向けてしっかり準備をしていきたいと考えています。
鳥取大学 医学部統合内科医学講座 機能病態内科学分野
鳥取県米子市西町36-1
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