医療の専門家集団として声を発していきたい
6月、日本医師会では横倉義武会長のもと「第4次横倉執行部」がスタートした。新体制の常任理事の半数が新人。組織の発展を見据えた人材育成を重視したものだ。その1人である平川俊夫氏は「積極的に意見を発信していきたい」と語る。今の「思い」に迫った。
全国の医師の思いを受け止める
―自身の役割について。
日本医師会は、国民の幸せの原点とも言える健康を守るための「専門家集団」であるべきです。高い志を持ち、全国の医師たちの思いを受け止めて行動しなければなりません。
中でも政策提言は、日本医師会の重要な役割。例えば、私の担当分野の一つである「先端医療」においては、厚生労働省が設置している「厚生科学審議会科学技術部会」や「同再生医療等評価部会」「同疾病対策部会造血幹細胞移植委員会」をはじめ、内閣府が設置している「総合科学技術・イノベーション会議生命倫理専門調査会」などに医療者の代表として臨んでいます。
医学研究の成果が新たな医療技術として次々に反映されています。経済界では産業として発展させていこうという機運の高まりもありつつ、その根本には倫理や安全性への深慮が求められます。
新たな技術や仕組みをどう届けるかを検討する上で、患者さんの気持ちを最も近くで感じ取っている私たち医療者の視点は不可欠。発言に責任を持ち、積極的に現場の声を発信していきたいと思っています。
画期的な技術を正しい方向へ
―どのような議論を。
これまでに定められてきたさまざまな指針には、歴史的にしかるべき経緯があるわけです。それらとの整合性を図りつつ、時代に即した新たな考え方や技術をいかに組み込んでいくかが非常に重要です。
最近で言えば、ヒトの胚に由来する「ヒトES細胞」を応用した治療法の研究が大きくクローズアップされています。革新的な治療法の開発につながる可能性が期待されている一方で、ヒトの受精卵を用いるわけですから、倫理面では特別な配慮が必要です。
国が目指すのは日本の医学研究が世界をリードしていくこと。そうした研究が正しく進むようガイドラインを定め、将来的に「安心して受けられる医療」に結びつけていきます。
時代ごとに、必ず画期的な技術が生まれます。ゲノム編集なども、以前なら特殊な機器をそろえた研究所レベルでなければできませんでした。その環境も今や、比較的、容易に整えることができます。
適切なルールが整備されるよう、慎重に議論を重ねていく中においてもスピード感をもって取り組みたいと思います。
子どもの健康を守れる日本に
―「成育医療」の動きは。
長年の課題だった「成育医療」については、「成育医療等基本法(仮)」の成立を目指した超党派の議員連盟が設立されるなど、さまざまな動きが活発になっています。いよいよ成果が得られるのではないかと期待しています。
日本医師会では「周産期・乳幼児の健康をどう考えるか」を議論してきました。子どもたちの健康を守ることは、すなわち国づくりの基本です。ところが、世界の指標と照らし合わせてみると、日本は決して子どもが健やかに育ちやすい環境とは言い切れないのです。乳幼児期、学童期、思春期、成人、そして親になるまで。それぞれの医療のアプローチが、バラバラなままだからです。
出生から大人になるまでを一つのライフサイクルとして切れ目なくサポートする成育医療の整備は、日本医師会の取り組みとしても柱の1本だと捉えています。
世界で最も早く進む少子高齢化に歯止めをかける施策ともなり得るでしょう。また、これからの医師の教育も、新たな考え方に基づいてなされていくことになるに違いありません。
横倉会長のもとに、全国から多様な人材が集まりました。新体制の担い手の1人として、2年の任期をまっとうし、国民の期待に応えたいと思います。
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