新病院に向けて前進 早期に実現したい
神奈川県の湘南西部医療圏に位置する神奈川病院では、急性期、回復期、慢性期と幅広い医療を提供している。地域に求められる役割が多岐にわたる中、呼吸器疾患への対応など得意分野も着々と伸ばしてきた。現在、新病院の計画が動き出しつつある。4月に就任した橋詰壽律院長の思いに迫った。
―1939年に創立。
傷痍軍人神奈川療養所として創立後、地域に密着した病院として、さまざまな機能を広げながら歴史を重ねてきました。現在、急性期から回復期、慢性期まで幅広く診療しています。
例えば、急性期病棟の入院患者の85%は、ここ秦野市在住の方です。当院は2009年に、秦野伊勢原地区で唯一の地域医療支援病院として指定。開業医の先生方との密接な連携によって患者さんを支えることに努めています。
築40年を経た建物は、使い勝手の面なども含め、やはりさまざまな部分で時代に合うものとは言えなくなってきました。また、患者さんへのアンケートの回答でも、病室の古さや狭さなどに対する指摘が最も多いのです。
医療機能と患者満足度の向上を目指した建て替えが決まり、今秋までには建設会社を選定したいと思っています。順調に進めば、2020年3月の竣工、同年5月の開院予定です。
新病院は4階建ての構造です。建設計画を作り込む段階で何度も職員を交えた検討会を開きました。
部署ごとの要望などを取りまとめ、病棟や手術室、リハビリ室などの配置や運用のシミュレーションを繰り返しました。話し合っていく中で、徐々に職員の新病院への期待値、またモチベーションの高まりを実感していきました。
地域の患者さんにとって頼りになる病院、また職員が働きやすい病院として生まれ変わるためにも、早期に建設に着手することができればと思っています。
―どのような医療に取り組んでいきますか。
引き続き、政策医療である結核と重症心身障害の分野は当院の地域での役割です。
結核患者は昔と比べれば減少傾向にあります。しかし、いまだ毎年、一定数の発症者がいることも事実です。しかも、近年は多剤耐性結核や非結核性抗酸菌症といった感染症への対応が課題となっています。
結核を専門とする医師が少なくなり、また受け入れ可能な医療機関が限られている現在、県西部の結核医療を担う病院として、適切な診断と治療により責務を果たしていきたいと考えています。
また、呼吸器外科を有している医療機関は、この地区では当院のみです。呼吸器外科、呼吸器内科それぞれに医師が4人在籍しており、充実した体制で呼吸器疾患への集学的治療に取り組んでいます。
結核では呼吸器外科医による外科療法が必要となるケースもありますので、その際にも迅速な治療方針の決定が可能です。
長年注力してきた小児医療では、特に小児アレルギーの診療を得意としています。アトピー性皮膚炎のスキンケアの指導、食物アレルギーの負荷試験、スギ花粉症に対する減感作療法などを実施しています。
2次救急の輪番体制を維持する医療機関の一つとして、年間2000人の救急患者さんを受け入れています。そのうち、およそ4割が入院加療を必要とする患者さんです。
こうした現状もあり、新病院では快適な医療を届けることが不可欠。しっかりと建設計画を進めていきたいと考えています。
―今後は。
地域医療研修の一貫として、学生や看護師たちが当院にやって来ることがあります。結核や重症心身障害の医療を身近に感じてもらういい機会です。
当院の地域での役割や強みなどを積極的に発信し、医師や看護師から選ばれる病院づくりに取り組んでいきたいと思います。
独立行政法人国立病院機構 神奈川病院
神奈川県秦野市落合666-1
TEL:0463-81-1771(代表)
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