長崎大学病院が取り組む医師の働き方改革とは
長崎大学病院では医師の働き方が変わり始めている。診療と勉強会のスケジュールを見直し、女性医師の意見を生かして子育てしながら働き続けやすい制度を整えた。具体的にどのような取り組みをしているのか、最前線でプロジェクトに関わっている皮膚科・アレルギー科の富村沙織講師に話を聞いた。
―皮膚科の道に進んだ理由と、科の「働き方」について聞かせてください。
患者さんが治っていく過程が、目に見えて分かるからです。加えて、CTやMRIなどが登場し、検査技術が進歩する中、皮膚科の診察のメインは視診や触診。自分の感覚や知識を使って治療していく部分にひかれました。
皮膚科は救急の呼び出しや命にかかわるような重症の患者さんの割合が比較的少ない診療科です。急な対応がほとんどなく、子育てをする女性にとって働きやすい科かもしれません。
当科では、これまで、夕方遅くに開いていたカンファレンスを午後5時半までに終わらせると決めました。さらに、月曜午後に回診とカンファ、抄読会をまとめることで、その他の曜日の午後、自由に使える時間が増えています。
育児中の女性医師がカンファに参加しやすいようにと始めましたが、結果的に他の医師にも時間の余裕が生まれました。空いた時間を勉強に充てる人もいれば、研究を進める人もいる。医局員全体のスキルアップにつながっています。
―県内の医師のワークライフバランス向上にも取り組んでいると聞きました。
当院に設置されている「メディカル・ワークライフバランスセンター」に所属。センターは、県内の医師を対象に仕事と生活の両立を支援する「あじさいプロジェクト」の中心組織であり、大学病院内のワークライフバランス推進も担っています。
私の役目は事務局と医師の間の連絡を取り持つこと。例えば皮膚科の医師の中に、妊娠している人がいれば、センターへの登録を促します。センターからは、子育てに役立つ情報がメールマガジンで配信されたり、マタニティー白衣を貸し出したりします。
また毎年、センター主宰の医局長面談があります。センターの職員が医局長や部長と話すことで、上司にあたる人たちの働き方への意識をすり合わせていくことが目的です。
医学生向けにはワークライフバランスについての授業を実施しています。先輩医師の体験談を聞き、男女ともに子育て中の働き方をロールプレイングすることで、自分なりのキャリアパス、ワークライフバランスのイメージを持つことができるのです。
―他にどのような支援があるのでしょう。
夜間に子どもを預かってくれる「イブニングシッターサービス」や短時間勤務で復職しやすくする「復帰医制度」など、長崎大学病院にはたくさんの支援制度があります。
例えば「長崎医師保育サポートシステム」は長崎市や大村市などの6市に居住または勤務している医師が対象です。保育サポーターが子どもを保育園へ送迎してくれたり、掃除や洗濯などを手伝ってくれたりします。料金は子ども1人当たり1時間1000円から。男性も女性も利用できます。
子育てや復職の支援制度が新設されたこともあり、皮膚科医として働きやすい環境は整ってきました。次は科を支えていくリーダーの育成が必要だと考えています。
現状では、誰かを指導する立場の女性医師は多くはありません。子育てを経験することで、時間の使い方が上手になる人が多く、そのような人が効率よく仕事や勉強を進めるためのヒントを与えてくれれば、診療とプライベートの両方をより充実させられるようになります。
長崎大学病院では院内で働く全員の意見を聞きながら、医師として長くいきいきと働くことができる職場を目指しています。
長崎大学病院 皮膚科・アレルギー科
長崎市坂本1-7-1
TEL:095-819-7200(代表)
http://www.med.nagasaki-u.ac.jp/dermtlgy/